旅立ちの朝
土曜の夜と日曜の朝

演奏旅行

 別に楽器を持って出張しているわけではないが、こう出張と発表、報告などが続くとそんな気分にもなってくる。Midnight Bluetrainでの移動でないだけマシか。それはそれで旅情があるが、熟睡できず翌朝に響くという罠。

 そして札幌は北大での意見交換会に出席。メンバーは北大附属図書館のほか、慶應大、名古屋大、京都大、広島大、千葉大、NII、早稲田大ほかと多彩。北大からは他に科学技術コミュニケーター育成ユニットからも参加が。
 話題提供として、弊社ポータルとリポジトリへの展開のほか、慶應大や北大でのリポジトリ構築事例など。

 特に北大スタッフは噂どおりの活躍ぶりで、「先生方にとって飛び切りの著作を間違いなくすくいとること」を唯一の方針とし、Web of Scienceで著者が北大所属の論文を検索し、発見するとスタッフが当該研究室までリポジトリ収載の依頼に飛ぶという。リポジトリ構築に向ける熱意を感じる。また、リポジトリに登録された自分の論文のアクセス件数も個別に通知しており、概ね半数の研究者から好評を得ているという。やはり「自分の論文が見られている」ことが数値化され把握できるのがよい、ということなのか。励みにはなるだろう。
 北大の機関リポジトリHUSCAPの研究者からの評価としては、

  • 図書館が動き始めたという印象がある。
  • 大学の活動に誰でも自由にアクセスできるショウケースとして、共感し協力。

 などの声があるという。立派な活動の成果。個人的には、「図書館が動き始めた」という言葉は、単なる待ち受け型の研究支援部門の一つから、アクティブな機関に変貌しつつある図書館を表しているものだと感じた。弊社もそう言われるような活動ができる組織でありたい。

 慶應大からは、90年代の電子図書館の反省として

  • 図書館へスキルと組織を残せなかった
  • 電子データの保存に真剣に取り組めなかった
  • マネージメントしかしてこなかった
  • データ作成単価を下げることによる問題

が上げられた。その上で、リポジトリに対しては紙とは異なった保存の手法の必要性や、研究者は研究者の責任で発表するようになってきている中での図書館の立場、などについて報告がなされた。

 続いてのディスカッションでは

  • リポジトリを構築するのは誰? 図書館? 研究コミュニティである学会?
  • リポジトリに何を入れるのか? 紀要のみ?
    サブジェクトを明確にするなど、方向性がないと「ゴミ箱」に。
  • 成果の提出先として「図書館」という位置づけがない。
    学会、紀要などに出すというビジネスモデルが定着している現状では、研究者の理解は少ない。
  • デジタル化資料の同一性の保障と長期保存に誰が責を取るのか。

などについて議論があった。結論は出なかったものの、実際に運用して行く中で顕在化するであろう問題点でもあり、これからリポジトリ構築に係る弊社でも検討すべき課題といえる。

 夕方からは懇親会。科学技術コミュニケーター育成ユニットの方に詳しいお話を伺う。科学技術をわかりやすく解説し、市民に伝えてゆく人材育成のための講習と実習を一年かけて行うという。こちらも、日々のレファレンスの中では研究成果についての問い合わせもあり、質問者の立場によっても異なるが可能な限り平易な資料で回答を行ったり、当該研究所の研究者の力を借りることがある。このことに触れると、「それこそまさに科学技術コミュニケーターの仕事」とのこと。不意を突かれた感じだが、確かにその通り。講習会を受けてみようかな。

 また、以前大学から弊社に図書館実習に来ていた学生が今年から大学図書館に職を得、リポジトリ担当となってこの場に居合わせていた。無事就職できたことを祝う一方、初年からこのような場に出張し情報収集や人的コミュニケーションができることがちょっと羨ましい。

 2次会でこの日の顔ぶれについて聞くと、ほとんどがNIIが機関リポジトリ構築の試験段階で行った合宿指導の参加者という。つまりは先駆者の集まり。そんな場に加われた幸運に感謝。
 
 翌日はホテルで休養の後、大通公園などを散歩しつつ帰路へ。札幌は暑かった。

 そしてツアーは続く。次は日曜日のさいたま講演(大図研大会)に望む。

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