図書館退屈男が「図書館戦争」状況〇二を見る
国立情報学研究所の「本気度」を推し量る - 「CiNiiのいま、これから」

図書館退屈男が「図書館戦争」状況〇三を見る

「乙女が!乙女がここにいます軍曹-!」

ということで、「愛を胸に本を守る」乙女の物語、「図書館戦争」状況〇三を見てその乙女とは無関係に図書館の描写だけを綴ります。応援のトラックバック、ありがとうございます。

といっても、今回は図書館ネタが薄かったので、小さなネタをむやみに水増ししてお送りします。

今回は小田原の個人図書館「情報歴史資料館」収蔵資料の関東図書隊への引き上げとこれを検閲で阻止せんとする良化特務機関の戦いがメイン。

その所蔵資料、「メディア良化法に関するありとあらゆる報道記録」をヘリで2度に分けて空輸します。大宅壮一文庫(所蔵:雑誌約1万タイトル69万冊、書籍7万冊)のような私設図書館みたいですね。「メディア良化法雑誌記事索引」とかを作ってもらえるとレファレンサー大喜びです。(大宅壮一文庫にはあります。独自の分類法を含め、おすすめ。)

アニメでは「コンテナ2つ」としか描写されていませんが、原作ではその量、「累計七トンの搭載量なら残りの非圧縮資料を運ぶには十分」とされています(図書隊の保有する多用途輸送ヘリUH-60の吊り下げ能力、3,500kg×2という計算。)。同館の資料は「半分以上がマイクロフィルムに圧縮されてるから、その分はデータ転送できる」のだそうです。せっかくマイクロフィルムに焼いたのに、データ転送で済ませるとはなんと勿体無い。媒体も運んでおくれよ。マイクロフィルムなら閲覧は不便だけど解像度もいいし保存も利くし、電子化なんていつでもできるから。

ちなみに、映画「ブラックホーク・ダウン」(1993,米)で民兵のRPG-7(歩兵携行用対戦車ロケット弾)で撃墜されるのはこのUH-60の強襲型、MH-60です。なぜ良化特務機関がRPGとかで迎撃することを考慮しないのか、とかは考えないほうがよさそうです。(設定上、双方とも軽火器の携行しか許されていないようです。)

では7,000kgの資料とはいかほどのものか。原作、アニメ含め具体的な資料点数が示されていないので、退屈しのぎに計算してみましょう。

とりあえず手元にある「図書館戦争」原作ハードカバーを計ったところ、1冊約0.5kg。
単純計算で「図書館戦争」シリーズ4冊にスピンアウト含め5冊が2800セット分で7000kgです。(7000kg / (0.5kg×5) = 7000 / 2.5 = 2800)

図書館における書架一棚(一般的には90cm)あたりの収納力は、

第1線図書館での一般書で35冊、大学図書館などの学術書では30冊というのが妥当なところであろう。
(植松貞夫、"基本計画". 図書館建築. 樹村房, 1990, p.119.)

とされています。書架が7段だとすると一連で7×35=245冊収納でき、重量は「図書館戦争」換算で122.5kg。両面で245kg、490冊(あくまで計算上です。実際に「図書館戦争」を並べたわけではありません。)。7000kgに達するためには、約29連の書架が必要な計算になります。これで概ね14,000冊収納できます。

次に、29連の書架を置くために必要な面積を算出します(計算式は前掲書p.126を例にした。)。
書架の中心間の間隔(芯々距離)を1.2m(閉架式書庫での実用最小値(前掲書p.107))とすると、1.2m(書架間隔) x 0.9m(書架幅) x 29(書架数) = 31.32平方メートルとなります。
なお、開架式で車椅子の通行を考慮した場合の芯々距離は1.8mとあり、かつ実運用では書架に今後受け入れる資料のための空きスペースも必要になるので、もうすこし広いスペースを確保する必要があります。

また、以前ご紹介したキハラさん製スチールブックトラック両面傾斜3段(品番46687-D/Y/G/I、78,750円)のスペックは

W.800 D. 475 H. 1,212
積載量:150kg
片側1段あたり約25冊収納

ということなので、このブックトラックの総収納冊数と積載量から計算するとおおむね1kg/冊ということになります。もっとも、製本雑誌と週刊誌とでは厚みも重量も当然違いますので、この数字は最大積載量とし、とりあえず参考としてください。(このため、大学や専門図書館では人文社会系(図書中心)と自然科学系(雑誌中心)とで書架の数と収蔵能力、床面積あたり耐加重などの見積もりは異なってきます。)

話を戻すと、「情報歴史資料館」収蔵資料は「メディア良化法に関するありとあらゆる報道記録」で、「各種雑誌や新聞、テレビ番組の録画記録など」と原作にあるので、製本雑誌のような重量のある資料は少ないと判断し、「図書館戦争」換算の1冊=0.5kgかそれ以下で見積もるのが適正な数値になりましょうか。

で、1冊0.5kgで計算すると7,000kg=1万4千冊。仮にもっと軽いであろう新聞(4/29付朝日新聞朝刊が0.15kg)・雑誌が蔵書の中心として、倍にしても2万8千点。マイクロ化済みの資料(現物)がその倍あり、さらに玄田隊長の言う「落とし所」である搬送しなかった重複資料のコンテナ1つ分を加えても、総蔵書点数はおそらく約8万冊強。書架面積は先の計算から100平方メートルぐらい。でも新聞原紙を保管するならもうちょっとスペースが必要かな。

まあ、私設図書館であることを考えると、それなりに立派な建物もそれなりに合点がゆく、ということにしましょう。創立者の趣味なのか、ちょっと大きいような気もしますが。

8万冊強という数字がどれくらいかというと、町村立図書館の平均蔵書数が約4万冊なのでその倍。作品に絡めて言うと、日野市立図書館の1969年の蔵書数が8万4千冊です。(町村立図書館の平均蔵書数は 日本図書館協会編, 日本の図書館 統計と名簿. の速報値のうち2007年のものを使用。http://www.jla.or.jp/statistics/index.html [last access:2008-04-29])

ということで、次回もお楽しみに~。

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