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第10回図書館総合展(2日目)

特別じゃない、どこにでもいる普通の図書館員。それが図書館退屈男。

さて、図書館総合展2日目は午前のフォーラム、知的資源イニシアティブ主催の「もうOPACなんていらない!? -Google時代の文献検索と目録サービス」で発表のほか、午後はブース。

午前のフォーラムでは、主に「OPACはどうなるのか?どうすべきか?」についてそれぞれの立場から自由に論じる、ということで、大雑把に発表内容をまとめてみた。

○高野先生(国立情報学研究所)「『連想する場』としての図書館 -情報を発想力に変える空間-」

  • ネット上の大きな情報とどう対峙するかというテーマは、膨大な資料を有する図書館においても同じ。そのためのツールがOPACである。
  • 「専門知識を要求しない情報サービス」のために、連想検索という手法を用いている。検索結果の中の正解や結果を要約した関連語から再検索するなど、利用者からのフィードバックを得つつ精度を上げてゆく。
  • 「連想の場」としての図書館レファレンスを実現したい。例えば「想(IMAGINE)」では、本の情報と本以外の情報とを関連付けるほか、本以外で得た情報を本の情報に関連付けている。分散管理されている多数の情報源を動的に融合し、主体的な情報収集と発見を支援する。
  • OPACはディレクトリサービスのひとつであるが、時代に合わせて変化してゆくべき。新書マップなどの試みはその変化を指向している。

○[図書館退屈男] 「OPACの使われ方を変革する2つの方法」

  • 目録にない情報は検索できない。現在のOPACは「在庫管理システム」。
  • OPACを変革する2つの方法
    • インターネット上のデータ群と連携、これを利用する。
      • 例えば、国立国会図書館のPORTAはシステム間の連携用インターフェース(API)を提供している。NIIもCiNiiで実装しようとしている。amazonはこの機能があるのでオンライン書店でありながら「書誌データプロバイダ」ともなっている。
    • 他のシステム、インターフェースから利用しやすくする
      • 「利用者は必ず図書館のホームページから来る」という発想は捨てよう。
      • igoogleやFirefox、IE7のプラグインからでもOPACは検索できる。
  • 書誌データにはPermalink(固定リンク)を割り当てよう。URLが固定されるので、リンクが容易になるほかGoogleなどの収集ロボットに拾われ、検索される可能性が高まる。
  • 異なるインターフェースから検索しても、最終的には自館のOPACの情報に行き着く。これが目指すところ。

○千野信浩さん(週刊ダイヤモンド編集部記者) 「棚の力」

  • 棚の「か」じゃありませんよ、「ちから」です。(笑)
  • 図書館で調べることは「何を調べるべきか」「調べるべき何かはどこだ」の2つ。
  • 出口、テーマが「まったくわからない」場合は図書館に行って棚、背表紙をみてさまざまな資料を発見しそこから発想をする。
  • OPACでの検索では書誌情報が得られるだけではない。タイトルから関連するキーワードを発見し、そこから連想的に違う検索後が見えてくることもある。
  • ある程度テーマが見えていればWebCatPlusの連想検索でで深く掘り下げる検索をする。
  • 一定程度の規模の図書館の方が情報が絞られている分かえって探しやすい。
  • amazonと宅急便の発展でオンラインからOutreachサービスが可能になった。図書館も変革を迫られている。ここにに重心を置くべき。
  • 棚作りは重要。たとえば闘病記を一箇所に集めるなど、内容で資料を集約できる。OPACはそこを支援するものだと考える。

図書館的なキーワードを使えば、高野先生や千野さんのアプローチは「ブラウジング」と言い換えることもできる。例えば背表紙が表示できる新書マップからは多くのヒントが得られるだろう。フロアからも同様に「背表紙から得られる情報は大きいが、現在のOPACではそれができない。」という指摘もなされた。
この点については、leva, "ウェブ上でよく出くわすあの光景って本当に「あるべき姿」なの?", Liner Notes. 2008-11-20. にて、「本の大きさ、厚さ、書誌形態などの情報は本を選ぶ上で結構重要な情報で、そういう情報を半ば無意識的に本棚から得ている」としてこれら形態に関する情報をビジュアルに表示することで仮想的に書籍の実体を表現する方法が提案されている。

出版社の方からは「自然科学系の参考図書では参考文献リストが重要。これらがリンクされればより価値の高いサービスになるのでは。」との意見もあり、高野先生からも「参考文献は資料のレコメンデーションにおいても重要な情報。」とのコメントがあった。個人的には、参考図書とあわせて10%割り増しでもよいので目次や引用文献リストのテキストデータを売ってもらえればOPACに放り込めるので大変便利なのですが。今度提案してみよう。

お二人の発言が「OPAC内の情報をどうやって利用者のほしい情報に近づけるか」についてのヒントになっているのに比較し、図書館退屈男からは「OPAC内の情報をどうやってよりリッチにし、かつ多くの利用者に提供できるのか」という提案になっているなど、微妙にベクトルが違う発表になってしまった感が。「空気読め」とまではいかないものの、もうちょっと利用者側のイメージが見えるような内容にすればよかったのかなと反省してみたり。(資料の公開については事務局と調整中です。)それでも、何かのお役に立っていればうれしいです。ぜひご感想などをお寄せください。

午後の自社ブース。雨のせいかそれほど来場者は多くないものの、さすがにフォーラムの間には接客に追われる。
その中でも、自分の母校の学生さんに出会えたことがちょっと衝撃。というか感動。司書課程を取っているとはいえ、この雨の中図書館総合展に来て情報収集しようという姿勢、応援したくなりました。

その他、午前のフォーラムの発表のせいか、ご指名をいただくことも何件があり、訪ねていただけることをいつもありがたく思っております。

早いもので図書館総合展も残りはもうあと1日。Next-LとARGカフェに参加することがメインになりそうですが、午前中は展示ブースも見て回りたいなあ。


第10回図書館総合展(1日目)

出展参加4年目の図書館総合展。
いつものように9時過ぎにブースに入り、ブレーカを上げる。瞬くスポットライトの熱、次々と起動するノートPCのファンの音が心地よい。資料を用意し開場に備える。

オープニングセレモニーの後、開場。心なしか展示会場への来場者は少ない模様。
お昼も昨年ほどの人出はないような。展示会場が倍になって参加者がばらけているのか、それとも隣のフォーラム会場にいった人々はそのままお昼→フォーラム会場に戻りのコースなのかも。
それでも、午前にもブースを訪ねていただいた方もおり、ありがたい限りです。

午後からはNII主催フォーラム「学術コンテンツサービスの成長点 -新たなニーズへの挑戦-」の第2部、「ひろがる、つながる、CiNiiの輪 -新CiNiiプレ公開&トークセッション-」。主に次期CiNiiの紹介とそのコンセプトについて。
(フォーラム全般については、min2-fly, "学術コンテンツサービスンの成長点:新たなニーズへの挑戦(図書館総合展1/10未満レビュー?)", かたつむりは電子図書館の夢をみるか. 2008-11-26. が詳しいのでこちらをどうぞ。)

コーディネータを務めるNIIの大向さんのスライドの表紙には"CiNii goes Open"の文字。次期CiNiiのコンセプトはこのフレーズに集約されていた。

OpenURL、OpenSearch、SOAP対応。そして検索結果のRDFでの提供。
現在のCiNiiの検索結果はPermalinkで

http://ci.nii.ac.jp/naid/110006656310/

と表記できるが、URLの末尾に

http://*.*.*.*/naid/110006656310/RDF

とすれば、PRISM(日本語解説)やDublinCoreで記述された書誌情報がXMLが返戻されるデモが行われた。

「図書館はデータプロバイダからサービスプロバイダへの変革期に来ている」として、CiNii他NIIの各種サービスの今後の方向性についての質疑があったが、回答をまとめると

  • NIIの他のサービスとデータも順次オープン化。この後に統合化があるだろう。
  • NIIのミッションはバックエンドサービスの形成。NIIしかできない役目だと考える。フロントエンドはユーザが自由に構成できるようにしたい。

といったところ。

岡本 真. "「Web2.0」時代に対応する学術情報発信へ : 真のユーザー参加拡大のためのデータ開放の提案". 情報管理. 49(11), (2007), 632-643.
林 賢紀, 宮坂 和孝. "RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開 : OPAC2.0へ向けて". 情報管理. 49(1), (2006), 11-23.

などで数年前から次世代の図書館サービスのあり方として指向され、また論考されてきた「蓄積されたデータの開放とサービス連携」がNII、NDLといった国内最大級のデータプロバイダにおいて実現されようとしている。もはや「次世代」ではない。ようやっと、我々は「次世代」に手が届いた。

このblogでも昨年3月に、

もちろん、「NIIや国会にそんな担当者がいないわけ」ではなく、彼らが本気になればもっと気合の入った、隙のないシステムを見せてくれるでしょう。

と言及したが、ようやく主役級のプレイヤーが出揃った。後は、この次に来る「サービスプロバイダ」を誰が、どう実装して見せるのか。
そして、弊社を含め、まだ「データプロバイダ」の域にも到達していないサービスは多い。OPACが、図書館サービスが次のステップに上がるためには、データの提供と再利用の両方に目配りしたサービス構築が必要になるだろう。(明日の発表はこのあたりに言及の予定)

展示会場に戻る。今年からの企画であるポスターセッションをいくつか拝聴したが、興味深いポスターも多かった。費用や要員などを考えると、ブースでの出展が難しいテーマであっても発表の機会となるこのような企画はぜひ来年も実現してほしいと願ってみる。そういえば、今年は展示ブースも木工装飾を施したものより基本設定+αに留まっているブースが多かったように思う。また、図書館関係企業のほか、大学、公的機関の図書館の出展が増えたことは、個人的に仲間が増えたようでうれしい。

自社ブースでのご案内に戻る。説明をこなしつつ、お客様と会いに来ていただいた皆様に失礼にならないよう。先日コメントさせていただいた「朝焼けの図書館員」の笹沼さんとお会いできたことが最大の収穫か。

閉場後は岡本さん他有志で関内方面へ。どうして岡本さんはよい店をあんなにご存知なのだろう。地元の地の利だけではない何かがあるに違いない。


INFOPRO2008で発表してきました

11/13-14に日本科学未来館で開催された第5回情報プロフェッショナルシンポジウム(INFOPRO2008)で発表してきました。今回のお題は「リンクリゾルバの多面的活用」です。

INFOPROへでの発表は2005年以来。今思えば、あの時の発表と「情報管理」への記事掲載その後の数年を方向付けたといっても過言ではありません。

予稿とスライドは追ってJ-STAGEで公開される予定ですが、発表内容は主に「Webブラウザからのリンクリゾルバの利用」ということで、FirefoxプラグインLibXからの利用、またRSSリーダにDOIなど書誌情報入りのfeedを解釈させてOpenURLを生成、リンクリゾルバにリンクさせる取り組みについて取り上げたほか、自機関DBからの他機関のリンクリゾルバへのリンク対応などについてご紹介しました。

とはいえ、リンクリゾルバを利用している機関はまだまだ少ないようで、同じ日のご発表、黒沢俊典, 松田真美, "医中誌WebからOPAC, リンクリゾルバへのリンクの現況"によれば、医中誌Webからの外部リンク設定345件のうちリンクリゾルバは64件(16%)と、OPACからのリンク(217件, 63%)と比較するとまだまだ小数に留まっています。正確な数値は持ち合わせていませんが、おそらく国内全体でも同じくらいの割合なのかもしれません。

となると、発表も絵に描いた餅なのかも、と不安に思っていましたが、当日夜に別のblog(高久雅夫, "文献情報ページにCOinSを埋め込んだ ", まさおのChangeLogメモ. 2008-11-15)で、「発表にインスパイアされて」として、COinS(<p><p>OpenURL ContextObject in SPAN (COinS)</p></p>ContextObjects in Spans: SPANタグにOpenURLを記述してHTMLに埋め込む手法)のメタデータ情報を付与したサンプルを発見しました。COinSについては見過ごしていたのですが、こういう利用法もあるのかと勉強させていただきました。LibXはCOinSにも対応しているので、さらに応用範囲が広がりそうです。

ともあれ、自分の発表が誰かの発想の種になったことは嬉しいものです。


今年も図書館総合展にGo

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溢れる想いは流線型、図書館退屈男です。

今年も図書館総合展の季節がやってまいりました。そして例年通り前日準備を含め4日間通して横浜にいます。弊社の出展も4年目になりました。会場出口付近、NIIさんのおとなりで営業しますのでぜひお立ち寄りください。

今年は自社ブースでのご案内もさることながら、フォーラムも盛りだくさんなので会議センターと行ったり来たりになりそうです。

とりあえず予定です。

…書き出してみたら例年にも増してヘビーなスケジューリングであることに気づきました。

なお、「もそもそと苦言を呈したい」など図書館退屈男の中の人目当てで弊社ブースへ来場ご希望の方はコメント欄等にてお知らせください。できるだけそのお時間を空けてお待ちしております。