[最終回] 図書館は視えなくなるか?  ―データベースからアーキテクチャへ ―
あのとき僕らは端末の前にいた(4)

図書館総合展(第11回3日目)

図書館総合展3日目。この日はサンメディアさん主催のフォーラム「図書館資料を100パーセント有効活用!「OPACを超える瞬間~図書館の現場から」」から。その他、詳しいレポートは以下のblogを併せてどうぞ。

発表は九州大学の片岡さんと慶應義塾大学の田邊さんから。冒頭に「『九大だからできる』『慶應だから』ということではなく、互いに知恵を出し合って、危機を乗り越えることが大事」「いい話を聞いた、だけで終わらず。後につなげていく、続けていくことが大事。」と発表のスタンスが語られた。

まずは片岡さんから。自館のWebに用意されている「とにかく検索」で様々なリソースは検索できるようにしてきたが、googleのように統合化と「見つけやすくする」ことが必要である。その手法として、Aquabrowser、Encore、Blacklight、Vufindなど、海外の次世代OPACの事例紹介の後、共通するコンセプトとして「人の思考のように探す」こと、またパーソナル化やSNSにより「参加と共有ができないか」と提案がなされた。

続いて田邊さん。システムに必要な3つ要素として以下が示された。

  • クラウドに直接アクセスできるパスを通す
  • システム構造を考慮したプロダクト選択
  • リソースの位置づけ、扱うシステムの棲み分け

現在のOPACはやはり紙ベースから電子化したもの。自館のOPACにしても、サービスフロントとして適切なのは図書館システム+OPACか統合検索システムなのか。現在もなお検討中とのことであった。

また、片岡さんからオープンソースアプリケーションXC(eXtensible Catalog)によるサービスを2010年にリリース、との構想が明かされた(XCのImplementation Partnersとして"Kyushu University working with NTT-Data Kyushu"と記載されている)。XCは図書館向けwebアプリケーションフレームワークとも言え、MARCXMLで正規化されたデータを取り込み、CMSの一つであるDrupalをインターフェースにできる。今後は、目次情報(日外アソシエーツさんのbookデータ)やCiNiiからのデータインポートも計画にあるようだ。これらによって、今までのOPACにはなかった論文情報などの検索をも取り込み、 多面的な情報検索ツールとしての運用を考えられている。

お二人からはこれらの導入に至る経緯や予算確保についても語られた。特に開発ベンダとの協同という点では、いずれも前向きな、新たな試みに積極的なベンダを選定できた、という。

残り時間が少なく、質疑はお二人からフロアに振る、という形で行われた。なぜか関係者が多いセッションだからできる技。

予算確保や合意形成、という点では筑波大の宇陀先生からコメントがあった。筑波大学は今年リプレースの予定であるが、前回のリプレース直後から次期システムの検討を開始。このことが予算削減に対抗できた、とのこと。「準備がないと攻撃も防御もできない」が印象に残る。

他機関、ベンダとの連携については、次世代OPAC情報交換用メーリングリストnxOPACの運営をされている阪大の久保山さんから。
元々は同じベンダの導入館用の情報交換を考えていたが、もうベンダにこだわらずに議論と問題意識を共有し、協調をはかりたいという趣旨が語られた。

従来の業務の変革の必要性についても取り上げられた。システムに合わせると運用とは噛み合わないことがままある。
これについては僭越ながら当方からコメントさせていただいた。

当方の図書館管理システムは1993年から検討開始、1997年から運用が始まった。最大の課題はこれまで個別に運用されてきた20以上の研究所の業務とどうすりあわせてゆくか。入力規則や分類規則、排架などすべてが異なる環境に統一したシステムを持ち込む。「こんなものは使わない/使えない」と言われても、徐々に改良を重ね業務を電子化し2004年にはほとんどの業務がシステム上へ移行された。当時検討に当たったスタッフはもう管理職になるなどしているが、「あのころ夢のように語っていたことがやっと実現した」との声もある。現在では当所と6つの独立行政法人等の60以上の研究拠点で同じシステムを使って業務が行われている。多くの先達の努力あってこそ夢が叶った。運用では担当者間の合意を取り付け、開発ではベンダと意思疎通を図る。言うほど簡単なことではないか、形は違っていてもだれもが同じ夢を持っていたからこと今日まで来れた。そう思っている。

そして今日のテーマ「OPACを超える」とは何だったのか。最後に語られたのはそれが「図書館員が図書館を超える瞬間」であること。OPACである限り図書館で終わってしまう。図書館を超えてCenter of Excellenceを目指す。図書館リーダーシップ論へのつながり。

2つのジェット機が澄み切った青空を飛行機雲で切り裂いて飛び去ってゆくのを埃にまみれた地上で呆然と眺めている。そんな気持ちにさせるフォーラム。勝ち負けとかあそこだからできるとかもうそういう次元ではない。弊社は閉塞気味にある図書館システム界隈で何ができるだろう。実践を示すことはこの流れを変えてゆけるのか。どこまで追随できるだろうか。自分ではなく、組織として。

特に、九大でのXC関連の取り組みは、単なるソフトウェアの導入ではなくその開発に積極的に関与してゆく意気込みが感じられ、刺激を受けた。一方的に海外ベンダの製品を利用するのではなく、開発にも関与する。オープンソースの世界では当たり前だが、ようやく日本の図書館員もその最前線に加わった。ソフトウェアに国境なんてない。よいものであればそれを使うだけだ。コミュニティに加わり、開発にも関われればなおよしではないか。

多くの示唆と全力で追い越された感。ポスターセッション口頭発表会場に。連れ合いと合流しe-mobileのデータカードを受領。これで回線の心配はなくなった。

午後はポスターセッション会場に集中。8セルバッテリー装備のThinkPad X41Tabletは左腕に重い。電池が尽きるのが先か、閉場が先か。

先に資料が尽きた。都合300枚。うちご説明を差し上げることができたのはおそらく100名以下。多いか少ないかはわからないが、関心を持っていただけでもよしとしよう。時間も閉場の18時が迫っていたので、ポスターをはがすなど撤収作業に移行。周囲の発表者に挨拶を済ませ、荷物を弊社ブースへ。その後は急ぎARGフェスト。一次会しか参加できなかったものの、多くの方にご挨拶できたことは収穫。


今年も図書館総合展は無事終わった。来年は出展者として来ることができるのか。(組織定員要求が通れば)弊社は来年10月に組織改編が決まっている。今の名称での出展はこれでおそらく最後。広報予算には常に見直しがかかっている。ポスターセッションで異なるアプローチの参加実績を作ったが、来年のことなど誰もわからない。

その後、このフォーラムの発表者を中心に「海外ベンダ依存はどうよ」という話題でnxOPAC上で議論があった。少なくとも連携のきっかけにはなっている。

また、図書館総合展事務局より、入場者数やポスターセッションの得票数などをメールで頂戴した。
1~3位はすでに報告されているが、当方のポスターは10位とのことであった。有効投票者数の約3%(一位は約10%)。当日の資料をResearchmapにおいたので、よろしければご覧ください。

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