うぇぶ2.0の器量を伏して
オリコン2位の曲にまつわる悲劇とその後

公務と理想

 NIIのCSIワークショップでのARGの岡本さんの発言、「能力のある方(図書館員)が、公的な形で表にあらわれてこないのは、大学図書館界の損失」問題について、時機を逸した感もあるが実例をひとつ。こちらは専門図書館なので多少事情が異なることもありますが。(ワークショップの資料はNIIのサイトで公開中。)

 当所でも研究所のごとく「年報」を毎年出しており、この時期になると昨年度の統計データや取り組みについて取りまとめて提出している。ちなみに、研究所や試験場の年報類にはたいていの場合名簿と人事異動記録、業績リストが掲載されているので、人の動きや業績を追いかけるには便利なレファレンスツールのひとつである。当所の場合は、個人情報保護の観点から今年から名簿類は削除になりましたが。

 で、発表実績なども業績として提出するので、とりまとめて持っていったところ、「あー、これは公務としての業績だから、出張扱いの分しか載らないよ。」と上司に言われ確認したところ、昨年度の発表実績全8回のうち出張扱いとなった3回分しか載せられないことが判明(ほか5回は年休で出席)。庶務担当係長に聞いても「年休での発表は公務ではないので載りません。」とのこと。発表すること自体は事前に「所外公表届」を提出し、いつ、どこで、どんな発表をすることについて申し出ているのに、記録にはならないとは。まあ、休日に自主トレしましたと思えばこれは仕方がないのかもしれないが、そういう小さいところで実績が公にならないこともある。もっとも、医図協のヘルスサイエンス情報専門員の認定用には全て使わせていただいた。

 自分の開発スタイルとしては、HVUDayの「いわゆる「能力のある方が、公的な形で表にあらわれてこないのは、大学図書館界の損失」問題について考えてみたよ。」で言及されている、

 勤務時間中にうっとうしい環境下にいるからこそ、そこから開放された深夜や土日に密度の濃い集中したもの造りができる、ということだってある。 (略)  予算も支援も職務権限もないからこそ、ゼロから自分の好きなように構築していけるのが楽しくてたまらない、ていうことだってある。

に近い。その成果は課内のメーリングリストで「こんなんできました。」と報告するが、ちょっと他人に触ってもらう程度。出来と反応がよければ自分の「持ちネタ」としておき、すぐ実施できそうなものは課内で諮った上で施行、大規模なものは次のシステム更新や改修の際までにブラッシュアップして仕様書に載せて実装する。無論、入札案件となれば調達委員会等で仕様書の内容などが問われるので、事前事後には新たな技術によるサービスについて周囲に理解してもらい、その意義と導入効果を認められる必要がある。RSS関係のコア部分はそんな感じで開発し、タグクラウドとかアプリ系は自分や同僚とで実装したり。事務方の仕事の基本は、「次の瞬間に担当者が消え去っても後任者により業務が恙無く継続できること。」だと思っているので、サービスとして完成すべきものはできるだけオフィシャルな文書の形で残し継承を図る。人事異動だってある。

 そうした試みを雑誌に掲載していただき、読んだ方から「ゼヒ詳しいお話を」ということであちこちから呼んでいただいた。今年も引き続いてお声がけをいただいている。一方で、庶務係はじめなど出張伺いを処理する事務方は、「講演での出張」の取り扱いについて検討、協議し、結果として「受託出張でOK」「悪いけど年休でGO」などの結論が出、それに粛々と従う。仕事とはいえ、結構苦労をかけていると思う。以前は担当が替わると考え方も変わってしまい困惑したが、今年度からは受託出張関連の社内規定が改正され、たいていの場合は旅費等先方払い謝金なしの受託出張扱いで赴けるようになった。ちなみに、旅費は当社規定に準じて積算した金額を伝え、先方から頂戴する形になる。旅費等は級号俸で変動するので、現在の職務に応じて妥当な金額が支払われるよう処理される。別に図書館退屈男が強く訴えたわけでも組合が何かしたわけでもなく、単に改正になっただけ。もちろん、講演の際の手続きや先方とのやり取りなど、面倒な処理の労を厭わず正しく判断してもらえることが一番ありがたいことである。原稿依頼についてもほぼ同様であるが、勤務時間外での執筆が基本。業務上のもの(所発行のニュースなど)でない限り、原稿執筆を理由に超過勤務を命ぜられることはない。

 実際に予稿を書いたり発表が近づくと課内のチェックが入る。講演であれば予定時間内に終わるか実演したり、また予稿などは内容が先方の依頼内容に合致しているか、などのほか、所としての公式のサービスか個人的な実験の成果による見解かは明確に切り分けを求められる。これらをクリアして予稿の提出、また発表に望む。

 ということで、一見自由に見える当所でも「公的な形で表に出る」ためにはそれなりの手続きが必要になる。また、他の事務方のサポートがないとどうにもならない。誰も邪魔をしようとしているわけではない。規定を柔軟に解釈しなんとかしようと努力しても無理なときもある。

 「講演依頼?そりゃいいことだ行って宣伝して来い。」という反応だけではない。「それほどのものならば内部の利用者にも広報しろ。むしろそっちが優先ではないか。」と言われる事もある。昨年度は目立って出張回数が多かったので、本業を疎かにしているのではないかとの疑念をもたれても仕方がない。そして、主たる顧客である農林水産関係研究者への広報も忘れてはならない。図書館関係の研究会等での発表も、これに間接的には寄与していると思っているが、直接的なアピールも時には必要と考えている。これは自分への課題。また、受託出張の規定上、受託可能な団体として「職務に密接に関係した」などさまざまな条件が課せられている。

 正直な気持ちを言えば、講演でも原稿でも頼まれれば(かつ無理なスケジュールでなければ)何者に阻まれることなく先方の希望に沿った形でまとめたい。ただ、組織の中の人として公務で出張する限り、いやそうでなくても、組織名+本名での発表は内容についてこちらがどう思っていようと組織としての考え方として捉えられることもある。よって発言を自重せざるを得ないこともある。

 近くは8月末に長崎で発表を予定。予稿は提出済み。業務と講演など対外活動の両立。公式のサービスと個人的見解の切り分け。年々状況は厳しくなるような気がする。そんなことを考える梅雨の午後。

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