MyOpenArchiveに目を見張った
2008/01/27
オープン•アーカイブ•コンソーシアムは非営利組織の学術論文オープン化推進機構で、事務局を日本に置き、2007年夏に形成されました。
http://www.myopenarchive.org/blog/2007/09/open-archive-consortium.html
というサイトを発見。
- 論文のアップロード
- タグ付与
- スターでの評価
- トラックバック受付
- 同著者の他の論文へのリンク
- ブックマーク数の表示
などが主要な機能のようです。なるほど、登録された論文の「評価」もできますね。
興味津々でsignupしようとしたら「not invitation」と言われて。招待してもらわないとアカウントを作成できないようです。残念。
オープン•アーカイブ•コンソーシアムの中の方いわく、
通常、論文への「つっこみ」は、その研究者を取り巻く人のみで構成されていて、不特定多数によるコメントや評価付けってあまりない(最近は電子ジャーナル等が対応しつつあるが、やはり非常に限定的)。
ブログ慣れした人々なんかは特にこうした不特定多数により意見が反映される仕組みは皆必要性を感じてるだろう。そう、単なるオープンだけを追求するのではなく、共有し、そこからまた発展性を持たせる意味でのオープンさこそがこれから支持されていくと思う。
"[コラム] 論文サイトに対する皆の意見を聞いて". 坂東慶太のブログ
ということで、ニーズとしても、
自分は学生でも学者でもないのですが論文を読んでいて、その論文に軽い気持ちで突っ込みたいって時はどうされているんでしょう?
「ここの図が間違っているよ」とか「この部分はユニークで好きだ」「ここは理解が難しい」とか。その論文を読んできた全ての人で共有されるようなものがあるのだろうか。
"論文に対するコメント" ひげぽん OSとか作っちゃうかMona-
や、
研究者として欲しい
- 論文情報を簡単に手に入れられる(参考文献リストの作成を簡単にできる)
- その論文がどこで手に入れられるかすぐにわかる
- その論文の概要が読める
- 参考文献、被参考文献間で自動的にリンクが張られている
- 個人ビュー用として、勉強記録がつけられる(論文に対するメモは他人に知られたくないので)
などの声が上がっています。
確かに、ゼミのレポートやちょっとしたデータを公開するのに適した場所、というのはないものです。いくらXooNIpsのように比較的敷居の低いアプリケーションがあっても、きちんと論文の蓄積と提供を、しかもそれを半永続的に運用するのはそれなりにコストがかかり、個人ベースでは難しい。かつ外部からのコメント付与などに対応したリポジトリシステムは聞いたこともなし。強いてあげれば、国立国会図書館デジタルアーカイブポータルが目録や雑誌記事索引の検索結果の一件一件にタグとコメントがつけられるぐらいでしょうか。近代デジタルライブラリーや青空文庫など、現物をアーカイブしているデータベースにも対応しているのでちょっと近いかも。
そこでオープンなアーカイブを用意する、というのはナイスな発想です。また、外から見ただけですがシステム自体もよくできていると思います。もうちょっと手を入れれば大規模なリポジトリにも対応できそうです。
個人的な希望を言えば、
- 論題や著者名、URLなどのメタデータ部分をDublinCoreなど標準的なフォーマットで吐き出してOAI-PMHで収集できると、他のリポジトリとデータをマージしてOAIsterのような検索サービスで検索ができるのではないか
(何がうれしいのかについては、尾城孝一. "OAI-PMHと図書館サービス -千葉大学附属図書館での事例を交えて-" ライブラリーシステム研究会 2003.6.17(慶應義塾大学三田メディアセンター)の講演録などが分かりやすいです。) - OpenSearchで外部から横断検索したい
- 認証つきでよいのでAPI等をつかって自分のデータを落としたい
などができるとよりgoodではないかと思います。
で、以下は参考になります。
図書館屋からみて「いまはこんな機能があるけど、今のシステムに加えてはどうだろうか。」という情報提供的な内容になってしまいました。
もうご存知の内容でしたら、失礼をお許しください。
「研究論文系ソーシャルブックマーク」としては、Nature Publishing Group が運営している Connotea などがありますが、こちらは論文自体のブックマークはできてもアーカイブまではサポートしていないので、ちょっと違うかもしれません。
ただ、機能としては、上記に加え
- 登録は自由
- 自分のwikiページを持てる
- 内部に Community Page が作れる
- ブックマークした内容は公開/非公開が選択できる
「公開」の場合はログインなしでも閲覧可能→サンプル - RIS, EndNote, BibTeX, MODS, Word2007, Textで引用文献リストを出力可能
- ユーザごとに公開されたブックマーク、タグの更新をRSS1.0で取得可能
もれなくDublinCoreで出力も付きます。 - (利用できるリンクリゾルバがあれば)設定可能
- APIあり(要認証)(APIについての過去記事)
- コードはGNU GPLで公開(でも本物とはちょっと仕様が違うみたい)
などがあります。関連の記事にConnoteaについての言及がなかったようなので書いてみましたが、参考になるでしょうか。
大学の機関リポジトリでは論文の参照回数を執筆者にお知らせして好評を得ていると聞いています。そういう機能があったりするとうれしいですね。
あとは細かいところで言えば、
となると、すべての媒体(紙の論文、電子的な論文、本、記事、などなど)に一意に名前付けをしなければならないので厳しいかも。著者、署名、出版年月でたいてい一意になると思うけど。
"[メモ][研究] 論文感想共有の仕組み". 発声練習
については、商用ベースに乗っている論文にはDOIが、機関リポジトリ搭載の論文にはCNRI Handleがつけられていることが多いです。
- DOI (ISO SC9N475)
DOIを使った論文等との紐付けはCrossRefがサービスしており、論文本体に 10.1037/0003-066X.59.1.29 のような一意のIDをつけて本体のURLと紐付けしてくれます。アクセスは http://dx.doi.org/10.1037/0003-066X.59.1.29 でOK。でも管理費が高いです。 - Handle System
CNRI(Corporation for National Research Initiatives)が管理しています。こちらは1prefix につき年$50。URLは http://hdl.handle.net/2115/28264 みたいな感じです。(この場合は2115がprefix。)
いずれも、「外国のサービスに依存して、止まったらどうするんだ。国内でも同様のシステムを立ち上げるべきだ。」という意見もあるので、自分たちで作ってしまってもいいのかもしれません。それこそ維持が大変そうですが。
論文にこのような識別子を付与することで、アクセスの保障と一意の識別ができますが、この識別を代行し、論文本体へのリンクを提供してくれる機能がリンクリゾルバになります。OpenArchiveの場合は本文が配置されているURLでアクセスすることになるので不要かもしれませんが、外部からAPI経由で探しに来た場合にうまく対応してもらえるとうれしいです。
動作としては、とても概略すると以下のようになります。もうちょっと詳しい動作などは、増田豊, "OpenURLとSFX". カレントアウェアネス, 2002, No.274(CA1482)が参考になります。
- リンクリゾルバのURLにDOI、PubMed IDなどの一意のID、または論題、著者名、掲載誌など特定できる情報を投げる。(手法はOpenURL(ANSI/NISO Z39.88-2004)として標準化されています。)
- リンクリゾルバがCrossrefにDOIで照会し、論文の書誌事項を取得するほか、電子媒体のURLをユーザに表示。
- これを元に電子媒体にアクセス。
- 電子媒体がない場合は、ドキュメントデリバリサービスや他の図書館の目録検索へ誘導。この場合にも、取得した書誌情報を使用するので再入力は不要。
商用製品のリンクリゾルバとしてはEx LibrisのS.F.XやOvid LinkSolverなどが多数ありますが、ソースが公開されているOpenResolverというリンクリゾルバもあります。(動作サンプルもあります。なお、ソースのあるftpサイトにはこの記事執筆時点ではtimeoutとなりアクセスできませんでした。)
長々と書いてしまいましたが、折角だれでもデータを溜め込める場所ができたのだから、そこも検索の対象としてお客様に提供できる情報を増やすことができれば、という図書館屋の思いが伝われば幸いです。
陰ながら応援しています。