山が動いた(2) - 日本図書館協会はZ旗を掲げた
長尾館長、ありがとうございました

Mendeleyが来た日。

  Mendeley。いわゆる文献管理ツール。去年の今頃はそう思っていた。ところが。それはとんでもなく違う認識だったとしたら。

  話は今年、2011年2月に遡る。Bloomington, IN で開催されたCode4lib ConferenceでのIan Mulvanyさんの発表、"Mendeley's API and University Libraries: Three Examples to Create Value"で語られたのは、「MendeleyからOAuthで認証してリポジトリにアクセス」「MendeleyのMy Libraryから自分の文献をSWORDでリポジトリに投入」というAPIをバリバリ使った実装例の紹介と、APIコンテスト - "Binary Battle"。賞金は $10001
「なにこれすごい」と気づき、実はひっそりと動向をチェイス。情報源はMyOpenArchiveでおなじみ、@keitabandoさんのブログなわけですが。いつもありがとうございます。@keitabandoさんはMendeleyのAdvisor(日本には7名)でもあります。すてき。

  そして来る Dr. Victor Henning, Co-Founder & CEO, Mendeley Ltd. 来日の報。折しもWIRED日本版にMendeleyの記事「知のシェア – 学術論文における理論と実践」の掲載。なんというタイミングの良さ。第2回 SPARC Japan セミナー2011「今時の文献管理ツール」ワークショップでの講演のほか、別途に懇談の機会をいただきました。この場をお借りして、機会をいただきました関係各位、特に@keitabandoさんに心からお礼申し上げます。 

ワークショップの模様はtogetterにまとめておきましたので、こちらをご覧ください

 (超イケメンの)Dr. Victor Henning との2日間に渡る会談で明らかになった事項はこんな感じ。

これまでと現状:

  • 2008年に3人の学生のアイディアとSkypeアカウントからMendeleyは始まった。今では195カ国3万の大学・研究機関で、140万人(うち有償アカウント数千)が1億4千万近い文献をアップロードするまでになった。論文の重複はできるだけ除去している(たまに同定に失敗して重複している場合もあるそうです)。
  • Fundingと有償ユーザからの収益はあるが、まだ黒字にはなっていない。
  • 競合他社との最大のアドバンテージは「無償」であること。
  • 実は専任のサポート担当は1名。ただし、staff全員が定期的にサポート業務を行っている。CEOも例外ではない。ユーザの気持ちを掴むことが重要。我々はcrowdサービス。サポートもまたcrowd。advisorと一体になってサポートを行っている。
  • 大事なのでは機能ではなく、使っていて楽しいかどうか。Mendeleyは若いResearcherにとって使って楽しいツールとなっている。情報共有を簡単にするのが目的。
  • TogoDocのように、学際的論文を見つける必要性は高くなっている。どのような分野の研究者が使っているかがポイントになる。自分ならまず心理学を検索し、文献を登録する。時間とともに、生物学の人もその論文を見ることもあるだろう。その時は、学際的領域として心理学が求められている、ということになる。容易に探し出せるよう、厳密なカテゴリ分けはあえてしない。

近日リリースの機能など:

  • QuickSend。Mendeley Desktopから文献をDrag and Dropでメール送信。
  • Mendeley Suggest。ユーザが文献につけたタグ、Annotationなどを利用して、ドキュメント同士のsemanticなリンク生成とレコメンドを行う。amazonライクな手法に加え、MeSHも使用。
  • 図書館向けプログラム。Swetsと提携し、2012年1月に発表する。図書館向けの機能として、自機関のユーザの文献の利用動向などを把握できるツールなどを用意する。

今後の展開:

  • これまで蓄積した情報をもとに、iTunesのように論文をMendeley経由で購入するビジネスモデルを検討している。出版社からのメタデータや本文提供のオファーもあり、交渉を進めている。PubMedからは全文アーカイブの許諾は出ている。
  • 論文提供では PaperC DeepDyve と(Google Trendで)比較しても Mendeley の伸びは明らか。レコメンド用に、オープンソースのOCRを導入した。これでPDFの全文解析も行う予定。
  • 名寄せの問題。Mendeleyでも解決はしていないが、ResearcherIDORCIDとの連携により対応したい。

ということで、図書館向けプログラムの存在、また「論文をMendeley経由で購入」という新たな学術情報入手のアプローチが明らかになりました。確かに、文献の書誌情報をSNS上で共有したとしても、「入手ができない」というのはストレスになるはず。そこに出版社も目を向け、協同を働きかけているという事実。同じように、Springerが買収したCiteULikeはDeepDyveと連携しています。

90の座席がほぼ満席のワークショップでは、MendeleyのほかEndNote、RefWorksといった既存の製品のほか、生命科学者のための文献管理トータルソリューションツールのフリーソフトウェア、TogoDocの紹介もありました。こちらはPubMedと連携し生命科学分野に特化しており、登録済みの論文の「全文から」PubMedを検索し文献をレコメンドする機能付き。協調フィルタリングではなく、論文の中身から推薦する文献を検索とのこと。用語の違いはMeSHを使って吸収、正規化。これには Dr. Victor Henning も大いに興味を示したようで、ワークショップの席上でMendeleyのAPIを使ってのレコメンドの強化など、製作者の岩崎さん(東京大学)とのコラボレーションの提案がありました。「開発担当とコンタクトできるよう準備する」など、動きの早さがさすがです。

対するEndNoteとRefWorks。EndNote(文献管理)はWeb of Science(検索と関連文献表示)とResearcherID(成果公開と研究者間での共有)の役割分担と必要に応じたカスタムメイドな文献リストの作成サービス、きめ細かいユーザサポートをアピール。
RefWorksはAPIによるCMS(Moodleの対応実績あり)をインターフェースとした時間サービスとの統合やDspaceなど機関リポジトリとの連携、また大学などではアカウントを失わないよう卒業生プログラムを提供する、などのサービスがあるとのこと。
それぞれが求めるサービスから来る機能や性格の違いが把握できるワークショップとなりました。

そして今日の懇談というか会談。Researchmapでの名寄せ問題のほか、CiNiiとの連携はどうすれば。
以下、自分のデータベースとMendeleyとの連携方法。

  • RIS、BibTex、EndNote XML、Zotero SQLファイルからのインポート。
  • COinS(ContextObjects in Spans, OpenURL(Z39.88-2004)をspanタグを使ってHTML中に記述する手法)で書誌情報を書くとBookmarkletを利用したWeb Importerでインポートできる(CiNii対応済み)。
  • 上によらないボタンクリックでのデータ転送はAPIを使うか応相談。

そうか、COinSに対応しているなら、弊社のシステムはこんなこともあろうかとあちこちで実装済みだから…おお、インポートできた!すごいぞ図書館退屈男。でもWebページ扱いでインポートしている…だめだこれ、不具合報告を送らないと…ああ、仕事が増えた…。

Mendeley。文献管理ツールからこれまでにない論文入手とコラボレーションツールへの進化の到来と、Web2.0でうたわれた「リッチなユーザ体験」を本当の意味で体現して築いた新たな世界。彼らは本当に学術情報の世界に革命を起こせるのか。「図書館向けパッケージ」の実力如何。やはりエッジの利いたサービスは「※但しイケメンに限る」しか作り得ないのか(それ関係ない)。

会談しながら検索して気づきました。Code4Lib Conferenceで発表したIanさん、もとはNatureでConnnoteaを開発していたのですね(スライドあり)。WIRED日本版によればヘッドハントされたそうです。過去に図書館退屈男もインストールに取り組みその秘密も明らかになりましたが、最近OSS版の開発が止まっていたのはそういうことだったのかと今更気づく始末で。


うわ、半年ぶりにblogを書きました。図書館総合展でも催促をいただいたのに。Twitterにかまけてないでもうちょっと記事を書くようにしないといけません。

とはいえ、今回の一連の懇談でかなりの刺激を受けました。こんなことができるなんて、という驚きと、自分の今後の仕事について。

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