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2006年9 月

やっと「時かけ」

 東京から60km離れたこの地にも、「時をかける少女」がやってきた。さらに遠い地のほうが上映が早いのには納得いかないが、見られるのでありがたく思おう。

 …と余裕なスタンスでいたら、上映は9/9から9/29までではないか。短いぞ。ということで慌てて先週見に行くことに。しかも最終週は上映時間が変更になっていた。事前に確認していなかったらひどい目にあうところだった。危ない。その他の地域での上映予定は、公式サイトの「上映館情報」をどうぞ。

 で、観てきた。あちこちのblogで多くの論評があり、いまさら感想を書いてもと思うところではあるので、とりあえず箇条書きで。

  • 7月の空は青かった。どこまでも青い。そして雲は綺麗。もう戻らない、でもまたやってくる夏。
  • プリンは大事。勝手に食べると遺恨を残す。
  • 資料修復専門の学芸員には正直憧れる。美術品を修復、保存する技術は資料保存にも通ずるところがあり、図書館員としては無視できない。
  • よく考えてみるとわずか2~3日の間の話。でもあの年代ならたとえ1日でも本当に長くて貴重で、帰らない1日だったはずと思うのは自分が年を取ったから。
  • 公式サイトの押井守のコメントは、「葱ぬきのカケ」と言いたかっただけなのではないか。

 こんなところだろうか。

 図書館退屈男の中では、「The Natural (1984)」「王立宇宙軍~オネアミスの翼~ (1987)」と並び、「何度でも見たい映画」の一つに挙げておきたい。
 ただ、惹かれるのはなぜだろう。「Natural」のように渋く、かつカタルシスを感じるわけでもなく、「王立宇宙軍」のようにむやみに熱い情熱やいちいち意味深なセリフ(大体覚えちゃったよ。さすがに王立宇宙軍軍歌は全部歌えませんが。)が心に刻まれたわけでもない。

 「葱ぬきのカケ」。シンプル。そして自分の過去に、あるいは今、隣の町で起こった出来事を見ているような、リアルな既視感の中の非日常。そんなものを垣間見たような気がする。だからもう一度観たい。もう一度観て、「あの世界」を垣間からではなく主人公と同じ目線で、繰り返して体験したい。そう思わせるところに惹かれた気がする。

 もっと早く、夏のうちに見ておけばよかったよ。


政見放送を見る。

 政見放送をYouTubeで放映している政党があるという。これは画期的かつ野心的な試みではないか。しかも複数のメッセージがあるようだ。図書館退屈男としても、退屈しのぎに早速見に行くことする。

 [視聴中]

 …党首、幹事長の熱いメッセージを受け取った。フムン、確かに美しい日本の実現、輝ける未来のためには、今こそこういった政策提言が必要なのであろう。さらにこれらの主張を、今話題のCGM(Consumer Generated Media)の一つであるYouTubeに流す。この試みは、党内部でも公開にあたり相当の議論があったのではと推測できるが、多くの人々、特に政治に無関心と言われる層にアピールするには最適とも言えるアプローチであろう。弊社も参考としたい。

 これらの政見放送は、http://www.youtube.com/watch?v=AHT7umKvzuM から視聴できる。ぜひ多くの方にご覧頂きたい。


キンモクセイの香りとa9.com、そしてGoogleツールバー

 職場の庭に植えてあるキンモクセイが香り始めました。館内でも何気なく香ってきます。秋の気配を感じますね。
 そんな今日は9/11付けエントリの続き。


(前回のあらすじ)

 京都駅でのHack in マクドの成果であるGoogleツールバー4用OPAC検索プラグイン。さりげなく公開はしているものの、課会で「『Google ボタン ギャラリー』に追加してよいか」と諮ったが、とてもマズそうな空気が机上を支配する。

 とりあえず、「またご相談させていただきます」としてお茶を濁す図書館退屈男。

 どうする図書館退屈男。明日の「サラリーマンNEO」は敵か味方か。


 で、今シーズンラストの「サラリーマンNEO」を見たわけですが。「Re:」のオチはどうなのかと。あれで彼の過去は消え去るのか。ELLEGARDENの「Space Sonic」買っちゃったよ。「コントを読む」もイイ。毎回でも見たい。でもセルフパロディは禁じ手のような。
 …いや、検索エンジンから「サラリーマンNEO 動画」で検索してやってくる人々のためにも、ネタバレは避けておこう。動画ならYouTubeが熱いと極個人的に思う。ネコ動画もあるし。Welcome。

 そうじゃない。Googleツールバー用プラグイン公開について上の了解を取る話だ。

 一時撤退を余儀なくされたが、他の案件とまとめて図入りの資料で対課長説明を試みる。コンセプトは「うちのデータベースを『どこからでも』使えるようにする。そして知ってもらう。」これで行こう。

 提出案件は3つ。

  1. Google ボタン ギャラリーへの弊社OPACの登録
  2. a9.com への弊社OPACの登録
  3. Google Scholarと弊社内リンクリゾルバとのリンク

 常日頃、内外から「広報不足」「もっと宣伝しろ」と言われる日々。だが、専門の研究者はともかく、多くの利用者の現状はGoogleなどから「たまたま」弊社サイトのサービスを知って利用に結びつく例が多いように思う。
 知名度を上げ、これを解決するために、他のサービスとリンクし「a9でも検索できる」「Google ボタンギャラリーにも登録されている」ことで新規利用者の開拓とサイトへの誘導を図る。これが1と2。3はリンクリゾルバのライセンス上、社内向けサービスとなるが「使い慣れた検索システムから原報入手/複写依頼をワンストップで行う」ためには必須。

 ただリンクされるのを待っているだけではだめだ。ここは打って出ないといけない。そして同業他社のサービスとの差別化を図る。

 課長、課長補佐を交えての30分の攻防。「それはメリットがある」として無事クリア。次は、当課事業担当の上役に諮ることに。ややもすれば当課の事業は「上に諮りもせずよくわからん技術を使って勝手に動いている」と言われがち。うちは公安9課でも特車2課第2小隊でもないので筋は通すことには同意。意思決定はプロセスも大事。

 翌日(つまり今日)、課長補佐と上役の個室で資料説明。「それはどんどんやるべき」と高評価。ただし、「いわば『裏口』から来るお客さんになるわけだ。いつでも出せるよう記録はちゃんと取ってね。」との指摘。アクセスログはちゃんと確保し集計、分析しておけということか。こんなこともあろうかと、RSS系のアクセスは別に集計できるよう仕掛けがしてある。

 GOサインは出た。設定開始だ。

 1はGoogleへの申請が必要。動作確認は済んでいるのですみやかに必要事項を記入、送信。「数日で終わるよ」と英語の自動応答メールが返ってきたが、日本語で記入しても大丈夫だったのだろうか。

 続いて2。a9.comの登録フォームにOpenSearch DescriptionファイルのURLを入力すると、動作確認と文法が自動的にチェックされる。これも事前に確認済み。問題なし。そしてSubmit。本番環境への反映はすぐに行われたようだ。
 検索フォームの[More Choices..]の[Over 300 more...]から"library"をキーワードにして絞り込むと、2ページ目の最後に弊社OPACが表示される。ぜひ"+ add this column"してご利用いただきたい。ただし、ユーザ登録(無料)していないとデフォルトのデータベースのほかは1つしかデータベースを登録できない。
 勢いで簡単なマニュアルも作成(PDF)。図書館総合展でも配れるかな。使ってもらえればよいのだが。

 3の件については、Google Scholarの「図書館向けサポート」に「詳細については、リンク リゾルバのベンダーにお問い合わせください。」とあるので、素直に設定用XMLファイルの作成をベンダに依頼。しばらくかかりそうだ。

 OPACだけでなく、弊社の主力商品である文献データベース群を同様に様々なインターフェースから検索できるようにするのが最終目的であるが、この試みでサンプルデータと経験は蓄積できるだろう。

 物理的に一箇所に固定されたインターフェースのみではなく、あらゆるところにその影があり、様々な、使い慣れたインターフェースから検索できるデータベース。我々の進撃は着々と進む。


 図書館総合展、今年も出展が決定しました。今年は、会場中央の通路、一ブロック目の奥側の角地でお待ちしております。出展者プレゼンテーションも11/21にありますが、夕方17時ごろのセッションなので人が集まるかどうか不安です。詳細は追ってお知らせします。


納納戦隊納本ジャー

日々記―へっぽこライブラリアンの日常―のエントリ「納納戦隊納本ジャー」にインスパイアされて勢いだけで書きました。図書館退屈男ご乱心とでも思ってご笑読ください。


20XX年。化石燃料に代わるバイオマス資源の活用が森林資源の燃料化を進めた結果、「紙」はその生産はおろか利用も政府の厳重な統制下にあった。
これは、その貴重な書物を確保する図書館の戦いの一ページである。

薄暗い路地。22時を回ったこの町では、人影も少ない。だが、カートを引いた若者が一人、また一人階段を降り地下へ。
そんな若者をひっそりと見つめる4つの目。
「若いのがカート引いてますね。いかにも重そうだ。」
「例の集会だな。本部へ連絡。」
Pi! 通信機が鳴く。「国資30より収企総括へ。集会と思しき状況現認、マル対集結中。指名中の者は未確認。指示願う。」
一瞬の間の後、返信。「収企総括より国資30へ。状況を監視しつつそのまま現場で待機。続いて、収企総括より現場周辺の国資各隊へ。周辺の主要道路、駅入口で待機、検問用意。マル対、特に指名中の3、8、12についてはその場で確保。また逃走に備えて警戒。終わり。」

国立国会図書館収集部。納本制度の根幹を守る第一線部隊。その収集企画課総括班から国内資料課に作戦開始が告げられる。
「収企総括より国資各隊へ。調立からの情報では、状況は90年代の同人誌交換を主とした武装集団「メガネの会」の定例集会と思料。幹部の8の参加が想定、国資各隊は第2種装備で待機。受傷事故に注意されたい。」「続いて収企総括より国資30へ。現在資保01が出動準備中。現着は2220時予定。国資30においては部隊展開の支援と周辺情報収集、報告に当られたし。終わり。」

「資料保存課が出張るとは珍しいですね。大物ですか?」
「そのようだな。千葉繁ファンは過激と長いアジ演説が売り物だ。油断するなよ。」
「おっと、到着のようだ。周辺道路封鎖、急げよ。」

識別名資保01。別名「納納戦隊納本ジャー」。納本制度の維持を影で支える特殊部隊。館外で知る者はなく、彼らが去った後にはカツオブシ虫はおろか酸性紙の紙片さえも残らず納本される。それが「納納戦隊納本ジャー」。

「国資30より収企総括へ。周辺道路封鎖及び付近住民の強制退去完了。続いて、資保010、011、012現着。資保013、資保014の白いワゴンは30秒の遅れ。」

Pi!Pi! ひときわ大きく通信機が鳴く。「周辺の国資各隊へ。こちら資保01。これより現場に突入する。支援頼む。」

オレンジの強化エプロンとヘルメットに身を包み、まず2人が突入。残り3人は武装ブックトラックをワゴンから降ろし、後に続く。

「何が『支援頼む』だ。いいとこ取りの特殊部隊め。俺の若い頃なんざどぶ川をさらって資料を確保したもんだぞ。」
「先輩、やつら地下に入っていきますよ。俺たちも…。」
「いいよ。面倒だ。あとは資料保存課に任せとけ。」ワゴンから完全装備の2個小隊が下車、武装ブックトラックにまたがり続々と突入する。
「国資30より収企総括へ。資保01、02、03現場に突入。」

硬い鍵で閉ざされた地下倉庫。武装ブックトラックの一撃でたやすく開く。

「全員動くな! 我々は国立国会図書館収集部資料保存課特殊資料保存班である。国立国会図書館法第23条の定めに基きその資料を収集する!抵抗する者は第25条の3により処罰する!」
「納本ジャーか!」「ええい、個人の趣味を邪魔するな!」火炎瓶が投げられる。刹那、直撃を避け強化エプロンで消火。
「抵抗は無駄だ。おとなしく納本に応じろ。」メガネをかけた学生服の青年たちが、屈強な漢たちに次々と拘束される。
「国家の犬どもが! 我々は権力に屈しないぞ! そもそも…ごふっ!」
腹部に班長の受入印一撃。
「メガネ譲りのアジ演説か? 聞き飽きたぞ。」「あぁ? 『うる星やつら メガネ至高の語録』だぁ? よく出来た同人誌だな。絵師は誰だ? 紙質もいい。おい、こいつの納本状況は!」
「未納本です、班長。」
業務用NDL-OPACと直結されたタブレットPCを操る部下が即答する。
「班長! 『北斗の拳』です! コミックス初版全巻揃い! 当館所蔵は劣化、相互貸借不可!」
「こいつぁまたずいぶんと貴重な品だな。どこで手に入れた? あぁ?」
「そいつは言えねえなぁ…ぐは!」もう一撃。青年の腹に今日付けの受入印が刻まれる。
「まあ、その辺は永田町でゆっくり聞こうか。うちの飯はサツよりは旨えぞ。連行しろ!」
続々と連行される「メガネの会」一味。平行して、資料保存課のスタッフが蔵書印押印など仮受入れ作業をし同人誌をワゴンに積み込む。

「あとは警察の仕事だな。おい、そこの国内資料課の若いの、連絡頼むぞ。」
「ああ?」班長の言に、若い方がいきり立つ。
「落ち着け。課長補佐殿の言うとおりにしておけ。出世したけりゃな。」
狭いセダンのシートに落ち着き、通信機を握る。
「国資30より収企総括へ。状況終了。資保01は撤収完了。警察の出場を要請します。終わり。」
「収企総括より国資30へ。ご苦労様でした。6時間以内に報告書を提出願います。続いて、収企総括より国資各隊へ。状況終了。警戒解除。通常任務に戻られたし。」

こうして、納本ジャーの活躍で今日も貴重な本がマニヤの手から守られた!
戦え!納本ジャー! 進め!納本ジャー! 未来の日本の文化を守れ!


「それPla」と言われて [2]

 実現したい機能は多々ありますが、まず基本から。

 今日は勇気を出してソースも載せて見ました。先達の方々には笑止千万かもしれませんが、ご助言などいただければ幸いです。  

 まず、今回RSS化を試みた図書館の新着図書案内ページでの新着図書の記載は、HTMLでは以下のように記述されている。

<img alt="New" src="/opac-image/new.gif" align="right" />
<td></td><a href="(詳細情報、排架場所表示のURL)">書名 / 著者

 これを以下のCustomFeed-Config用YAML設定ファイルで

  • 詳細情報、排架場所表示のURL : link要素へ
  • 書名 / 著者 : title要素へ
  • - 出版地 : 出版社, 発行年 -(シリーズ名) : decsription要素へ

  と3つに切り分ける。

# /usr/local/share/Plagger/assets/plugins/CustomFeed-Config/lib.yaml
# 
author: toshokan taikutsu otoko
match: http://opac\.lib\.prikuma\.ac\.jp/opac-new/book/new.html
extract: <img alt="New" src="/opac-image/new.gif" align="right" /><td>
     </td><a href="(.*?)">(.*?)</a>.*?<br /> extract_capture: link title body extract_after_hook: $data->{link} = "http://opac\.lib\.prikuma\.ac\.jp" . $data->{link}

 match:で記述されている http://opac.lib.prikuma.ac.jp/opac-new/book/new.html が実際に新着情報が掲載されているURLで、extract: でこの内容を正規表現で切り出している。(.*?)が順に、extract_capture: で指定したlink, title, bodyの順に格納される。
 さらに、ここでのURLの記述にはサーバ名が含まれていないため、extract_after_hook: で $data->{link} に補記している。extract_after_hook: ではperl互換の文字列操作が可能であるため、文字列の追加・削除・置換等も可能である。
 このファイルは CustomFeed-Config から参照できるよう、assetsディレクトリの下、plugins/CustomFeed-Config あたりで保存する。

 次は実際にサーバにアクセスしデータを取得、RSSに変換する命令を記述した config.yaml である。
 plagger -c config.yaml として実行すると、

  1. module: Subscription::Config : 指定したURLのファイルを取得
  2. module: CustomFeed::Config : 先のlib.yamlに従い、必要なデータを取得
  3. module: SmartFeed : feedのタイトル設定
  4. module: Publish::Feed : RSS出力

 の順に処理が行われ、/var/www/html/kuma.xml として保存される。
 もちろん、Publish::Gmailなどを利用すればメールでの送信も可能である。

#
# config.yaml
#
global:
  assets_path: /usr/local/share/Plagger/assets
  timezone: Asia/Tokyo
  log:
    level: debug

plugins:
  - module: Subscription::Config
    config:
      feed:
        - http://opac.lib.prikuma.ac.jp/opac-new/book/new.html

  - module: CustomFeed::Config

  - module: Filter::Rule
    rule:
      module: Deduped

  - module: SmartFeed
    rule:
      module: Fresh
      mtime:
        path: /tmp/foo.tmp
        autoupdate: 1
    config:
      title: Pri-Kuma Library New Books

#  - module: Filter::EntryFullText

  - module: Publish::Feed
    config:
      dir: /var/www/html/
      format: RSS
      filename: kuma.xml

 Filter::EntryFullText ではデータ中のリンク先のファイルを取得してくれるのだが、これが通常のテキストに変換されとdescription要素に収められる。できれば <content:encoded> を使ってHTMLのままCDATAとして入れ込み詳細な情報を配信したいところではあるが、「新着を知らせる」用途であれば  Filter::EntryFullText でファイルを取得しなくてもこのページのURLを併せて配信しているので十分であろう。詳細な書誌情報をも配信、となるとこのデータが必要となる。別途プラグインとして切り出す手段を考えるべきだろうか。

 国内の図書館システムベンダは星の数ほどあるわけではなく、それなりの数にまとまっている。当然、システムが同一であれば(特別にカスタマイズをしていない限り)検索その他のインターフェースも同一であるため、この例であれば lib.xml を新着情報を出力可能な図書館システムの数だけ作成すれば、とりあえず新着情報をRSSで提供するサービスが可能となるだろう。今回の例も、実はいくつかの図書館で共通のフォーマットが使われている。

 ここで Plagger を利用したのは、出力についてRSSだけでなく電子メール等での送信などをサポートできること、また今回は一つのみであったが複数のFeed(学部図書館や分野毎に新着情報を出力している館もある)をまとめるなど、利用者のニーズに合わせて柔軟に対応可能な入出力機能を有している点にある。また、各図書館システムに特有の出力形態にあわせて個別に設定ファイルを作成すれば、RSSフィード作成など残りの作業はPlagger本体とそのモジュール群に任せることができ、開発にかかる労力も低減されると思われる。
 
 あとは「図書館の新着情報を(時にパーソナライズして)RSS等で配信」というサービススタイルがどこまで支持を集めるか、というところだろう。

 これがNature, Science, Cell等といった学術雑誌であれば、すでに各出版社から配信されているRSSフィードを一本にして取得、(是非はともかく)Plaggerを使い著者名等でフィルタしたり自館で利用しているSFXなどのリンクリゾルバへのリンクを加え、論文の全文アクセスや所在情報検索、複写依頼等へのリンクへとサービスを連携させてゆくこともできるだろう。

 なんとか実装したいなあ。


「それPla」と言われて [1]

 8月の大図研大会のあたりから話題に出ていた

今ある図書館の新着案内からRSSを生成するスクリプトを考えている。これらをゲリラ的に提供した後で、「便利だ」ということを広め、そして必要性を訴えるのでよいのでは。

 について、ゲリラ的な戦術が適切かどうかはともかく、ツールの汎用化に向けた自分なりのアプローチとして、Plaggerを使えないかと考えるだけでとどまっていたが、ようやく手を付けてみた。
 Plaggerは、Perlモジュール群からなるツールで、

HTMLやRSSを何かしら切ったり張ったり加工して、gmailへの送信やRSSその他様々な形式で出力するツール

 と言える。「人力検索はてな」の最近の質問、「Plaggerって何ですか?」 に事例や上手な回答が出ているのでご参照ください。

 これで普通の図書館Webサイトで提供されている新着情報をRSSに変えてしまおうと言う目論見。既存のツールはありがたく使おう。
 さらにid:toshi123さんのはてなダイアリー「Muibrog」のエントリ「いまさら聞けない? 初心者向けPlagger設定覚え書き その1」が後押ししてくれた。感謝です。とても参考になりました。

 処理の流れは以下の通り。

  1. 新着情報ページ上の書名、リンクなどを抽出
  2. リンク先の詳細情報を取得、HTMLタグ削除
  3. これらの情報を一件1itemのRSSとして出力

 まずは某図書館の新着図書案内ページのソースを解析。テーブルタグを使い、書名等はセルで区切られて入力されている。そこで、「いまさら聞けない? 初心者向けPlagger設定覚え書き その2」で紹介されていた CustomFeed::Config を使い、正規表現を駆使して書名、リンク先などを抽出するyamlを記述。
 
 次に本体となる config.yaml で以下の処理を行うよう設定。

  1. 指定したURLのファイルを取得、先の設定の通りフィルタして書名等を抽出
  2. 重複データを削除
  3. リンク先のファイルを取得(この場合資料の詳細表示)
  4. 取得したファイルからHTMLタグを除去
  5. RSS2.0でファイルに出力

 そして実行。 plagger -c ./config.yaml

 …おお、ちゃんとRSS2.0で出力してくれた。すごいぞPlagger。
 当座の問題点は、

  • RSSフィード自体のtitle、linkを設定できない
  • 取得した資料の詳細表示が、単にHTMLタグを削っただけで見難いので、整形して出力したい

 というところ。とりあえずPlaggerでいけそうなことが分かったので、この線で進みたい。
実際のyamlファイルは…もうちょっと心が落ち着いたら公開します。今しばらくお待ちを。願わくば、腕に覚えのあるシステムライブラリアン各位の協力を仰ぎたいところ。


 後半に入った自称「On the road 2006 "Road to the OPAC2.0"」。好評だったのかどうなのか、図書館総合展での公演のほか、追加公演が決定しました。11月末に名古屋です。詳細は追って広報されると思います。


Googleツールバー4 でOPACを検索

 Googleツールバー4(Internet Explorer6以降用)の新機能として、好きな検索フォームを追加できるようになった話は前回のエントリの通り。
http://www.google.com/tools/toolbar/buttons/intl/ja/apis/started.html
に、http://slashdot.org/ を登録する手順が紹介されています。

(Googleツールバーは http://toolbar.google.com/T4/intl/ja/index.html からインストールできます。導入は自己責任でお願いします。)

 自動登録を試してみた。Googleツールバー4がインストールされている状態で、追加した検索フォームの上で 右クリック→[カスタム検索を実行] を押すと[カスタム ボタン生成ツール]ダイアログが立ち上がり、タイトルと説明の編集画面が開く。favicon.ico も取り込まれているところが心憎い。
 これだけの作業でカスタム検索用のボタンが追加された。わあ簡単。ツールバーの入力フォームに検索語を入力、[G▼]ボタンをクリックしてさっき追加した検索フォームを指定。そして[実行]ボタンを押す。

 そこで返されるのは無常にも「ヒット件数0件でした。」の文字。関連語を表示しろよとかNACSIS WebCATへのリンクぐらい張れ、というのは最近の流行だが、出てくるはずの語を入れてもヒットしないのはおかしい。

 再び入力フォームの[▼]をクリックして、[管理...]を選択、さっき追加したカスタムボタンを選択して[編集]を押す。さらに[詳細エディタを使用する]を選択する。
 Webブラウザ上で編集画面が立ち上がる。
 内容はこんな感じ。

<?xml version="1.0"?>
<custombuttons xmlns="http://toolbar.google.com/custombuttons/">
  <button>
    <search>http://opac1.cc.affrc.go.jp/alis/summary.csp?TL={query}&amp;TLopt=AND&amp;AU=&amp;TLKopt=&amp;TLopt=AND&amp;AUKopt=&amp;AUopt=AND&amp;PUBDT=&amp;ISBN=&amp;ISSN=&amp;DB=all&amp;kikan=1&amp;Srt=TL&amp;SELECTgroup=0&amp;RANGE=50&amp;SELECTkikan=0&amp;reqcharset=SJIS&amp;LANG=JPN&amp;CHAR=SJIS</search>
    <site>http://library.affrc.go.jp/</site>
    <title>library.affrc.go.jp</title>
    <description>農林水産関係試験研究機関 総合目録</description>
    <icon>
(ここはfavicon.icoがエンコードされているので略)
    </icon>
  </button>
</custombuttons>

 検索語は{query}で、&は&amp;に置き換え、その他の内容は[カスタム検索を実行]で取り込んだページの<form>タグの内容であることが分かる。
 とりあえず使用する文字コード(ここではreqcharset,CHAR)をUTF-8に変更して保存。今度は正常に検索結果が返ってきた。
 さらに、範囲指定してから右クリック→[他の検索タイプ]→[(作成した検索フォーム)]で、指定の検索システムに範囲指定した単語を送信して検索することも可能に。Good。

 説明等も含めてもうちょっと変更。

    <site>http://library.affrc.go.jp/</site>
    <title>農林水産関係試験研究機関総合目録</title>
    <description>農林水産関係試験研究機関総合目録を書名から検索します</description>

 こんな感じに。これで、ボタンの上にMouseOverするとdescriptionの内容が表示される。

 次に、「API ドキュメント」 を読んで、「サイトからボタンにリンクを貼る」を試す。要は先のXMLファイルをリモートに置き、googleサイトから引っ張ってもらうようだ。
 リンクとしては以下のような構文。
http://toolbar.google.com/buttons/add?url=http://library.affrc.go.jp/api/alis4googletoolbar.xml
↑このリンクをクリックすると、ツールバーに「農林水産関係試験研究機関総合目録」が登録されます。

 「API ドキュメント」を読むと、GETだけでなくクエリを POST として送信する場合でも使用できそうなので、たいていのOPACには適用可能ではないかと。もうちょっとhackし甲斐がありそうです。


 こうして作ったリンク。さりげなく利用はできますが、課会で「『Google ボタン ギャラリー』に追加してよいか」と図ったところ幹部の沈黙が。マズイ。何かとてもマズそうな空気だ。
 とりあえず、「またご相談させていただきます」として逃げたが、余計な議論を呼びそうだ。

 どうする図書館退屈男。明日の「サラリーマンNEO」でも見て考えることにしよう。


まだ京都。

 窓の外は土砂降り。ホテルのシングルルーム。こんな夜はI miss you。

 とりあえず隣のショッピングセンターで夕食。そして明日に備えて傘を買う。

 翌朝。晴れていた。ホテルの送迎バスで外人に混ざって京都駅へ。次の予定まで時間があったので土産物の目星を付けつつ駅構内を歩く。そこへ現れるマクドナルドJR京都アスティ店。通路沿いに電源付の座席。無線LANも届いている。そしてコーラ(S)100円を買ってネットに接続している自分がいる。
 IEを起動するとGoogleツールバーが4にバージョンアップされたとダイアログが知らせている。何が違うのか。…フムン、新機能として好きな検索フォームを追加できるようになったようだ。http://www.google.com/tools/toolbar/buttons/intl/ja/apis/started.html に、http://slashdot.org/ の検索フォームを登録する手順が紹介されていた。心ときめく血がうずく。こいつを試せと天が言う。これが図書館退屈男の本領だ。まずは弊社OPACでテスト。…検索文字が化ける。どうも文字コードをUTF-8で処理しているようだ。GETのパラメータを変えてみるか。なぜ朝からマックでXMLで書かれたconfigをhackしているのか。自分でもわからない。(この件は別エントリで詳解します。)

 そこへ現実に引き戻すメールが。隣の研究所で不幸があったらしい。同じ図書館畑の女性。skypeで社と連絡を取るものの、向こうでも情報が届かず混乱している模様。京都からではできることもないので、念のため携帯の番号等を伝えて離席。

 近鉄電車で移動。知人を失う、というのは心に堪える。理由が分からないだけに涙も出る。周囲を置いていくことに何のメリットがあるのか。
 30分ほどで目的の駅へ着。気を取り直してタクシーで現場へ向かう。今日は奈良県にほど近いここ某所で打ち合わせだ。分館職員たるもの、近くまで来たら中央館に挨拶に出向くのは当然の行為といえよう(大嘘。それにここは関西館だ)。

 知人に出迎えていただき、そのまま近くで会食。弊社の近くにはこんなしゃれたレストランはない。うらやましい。今度探そう。

 打ち合わせ。ネタはレファレンス協同データベース。実は弊社は1件しか入力していないが、それでもインパクトがあった様だ。いろいろと意見交換をしているうちに、「レファレンスに回答するのは最後には人。その人同士をつなげるハブとしてこのデータベースを機能させたい。」という発言が出た。これは納得。専門図書館ではワンパーソンな図書館が多いせいか、人のネットワーク作りを重視してセミナー等を開く。ただ、他の館種のライブラリアンと人脈があるか、というとそれなりの努力やなにやらが必要になってくる。レファレンスは実は「人」に頼る部分もある。話を聞くと、現在のユーザは1000人ぐらいだが、コアメンバーはもっと少ないとのこと。今はコミュニティが動くだけの母体がないが、少しずつ育ててゆきたい、とのことだった。話が弾み時間を超過してしまい先方には迷惑をかけたが、よい勉強をさせていただいた。

 次はデジタルアーカイブな話題。例えば弊社のデータをアーカイブさせてほしいといったらどうする? 弊社はデータのバックアップを物理的に遠方には置いていないので、バックアップとしては協力できる。また、そちらの検索用APIを公開していただき、こちらからも利用させてもらえればなおよし。などなど話は広がる。
 昨日COUNTERがらみの話題も。複数個所に学術論文がアーカイブされた場合、アクセス件数ベースでの評価をどのようにするのか、また同一性をどのように保障するのか、だれかがDOIのような識別子を振ってくれるのか、などが議論になった。
 
 何にしても、この手の話は楽しく尽きないが時間が押してくる。再訪を約束して京都を離れる。


 つくばへ帰還。TX車内でいつものようにポケットの鍵を確認…あれ、ない。スーツ、カバン、持ち物は確認したがどこにもない。やむなく連れ合いに迎えを頼み、家にはなんとか帰着。

 翌日。ホテルに電話。最初は「そのようなものは届いておりませんが…」との回答。ますます焦る。念押しをして電話を切り、10分後に発見されたとの報が。着払いで送ってもらい、今は手元に。ありがとうホリデイイン京都。


行ってきたよ京都。

  JTB時刻表できっちり車両種別を確認し、博多行き500系のぞみで京都まで。寝過ごしたらいきなり九州かもという軽い恐怖。

 そして到着した京都大学。事前に地図をプリントアウトし忘れ、迷うこと10分。ようやく目的の数理解析研究所115教室に入ると、ちょうとお昼が終わったような雰囲気。でもスクリーンに映るUNIXなコンソール。そして飛び交う「TeXだとこの項目が云々」「いやこうすればOK」…TeX。TeXだよ。確かに物理学系の後輩が「数式書くならTeX最強」といっていたことを思い出す。そして自分だけ上下スーツ。暑い。場違い感全開で今日の研究集会の代表者の戸瀬さん、行木さんにご挨拶。それでも見知った方から声をかけていただく。ありがたい。図書館の方々も見えていたようだ。プログラムと発表資料はこのページに掲載されているのでどうぞ

 午後一番の発表が自分。つかみで「自分のPerlの知識は赤ラクダ本で止まってます。どうかお手柔らかに。」ちょっと受けた(と思う)。うれしい。
 さすがに回数をこなすと慣れてくるのが自分でもわかる。で、質疑応答。「アクセス回数は把握されていますか?」焦る。細かい数字は持っていない。「詳細なデータを今日は持っていませんが、ユーザ登録数一万人強云々」と苦しい回答。で、アクセス回数の件は後に引きずる。

 続いて、日本動物学会事務局の永井さんから発表。電子ジャーナル時代に対応したオープンアクセスや機関リポジトリの扱いを学会というコミュニティの視点で語る。
 そこで新しい評価基準として、COUNTER1)の話題も出た。従来、雑誌の評価はインパクトファクター(IF)でされていたが、

  • IFは分母(掲載論文数)に依拠している。
  • IFは分野間の比較は出来ない
  • IFを合計してはいけない
  • IFは常に掲載論文数との抱き合わせで著すべきである
  • IFはジャーナルのパフォーマンス。掲載論文のパフォーマンスを即座には示さない。

 ということでジャーナルはともかく個々の論文の評価にはちょっと問題がある。

 そこで電子ジャーナルやデータベースの利用統計の国際標準であるCOUNTERで個々の論文へのアクセス数を把握し、今後はこれが評価の主流になるのでは、というもの。

 ここではっと気づいた。弊社の全文データベースには当社関連だけでなく大学や学協会誌など、他社からいわばお預かりしているデータもある。ところが、個々の論文単位ではアクセス数をカウントしていない。仮にアクセス数での評価となったら、電子ジャーナル本体と機関リポジトリと弊社のような主題別リポジトリがそれぞれCOUNTER準拠のログを出し、その総和でないと正しい数値とはいえないのではないか。また、そのようなログも出せないようなシステムでは、リポジトリする側のインセンティブも低くなるのではないか。北大の機関リポジトリHUSCAPでは、リポジトリしてもらった論文のアクセス回数を執筆者に渡し、データとして喜ばれていると聞く。ちなみに、COUNTER準拠を名乗るには定期的な監査もあるという。なんだかISO9000認証みたいな話で厳しそうだ。戻ったらCOUNTERについて調べてみることにしよう。またまた宿題だ。

 そして講演終了後、行木さんからペーパーが手渡された。「執筆依頼書」。…宿題の回答用紙、ということか。締め切りは12/15。

 午後の京都は雨。傘がない。行かなくちゃ。とりあえずホテル。確か川沿い。リバーサイド。


1) COUNTERについては、以下の情報が詳しい。メモ。


そうだ、京都、行かなきゃ。

 夏も終わりだというのに、背景を変えてみました。シロクマ最高。でも、シロクマさんがビーチボールと戯れているここは、人間用のプールでしょうか。はしごのようなものもあるし。ちょっと怖。

 で、9月になりました。このblogもcybozu.net時代から数えて一年がたちました。エントリ数は週に一度にも届きませんが、読者が確実にいらっしゃることはわかったので続けてゆきたいと思います。

 9月…そうだ、京都、行かなきゃ。京都大学数理解析研究所。RIMS研究集会「紀要の電子化と周辺の話題」。6日にちょっと話します。ホテルは取ったけど新幹線はまだだ。どうせなら500系乗りたいな。お声をかけていただいたときには、場所が「数」「理」「解析」などとうちの専門分野とは程遠い所なので不安だったのですが、他の演題を拝見し近いところと判断。安心して講演に臨むことにします。


 うちの本店サイトではPodcastで研究成果のビデオ配信を開始したのですが、某有名サイトで取り上げられたところ転送量ベースでトラフィックが数十倍に跳ね上がったそうです。動画ゆえとはいえ、インパクトはありますね。

で、

 「好きな人が中にいるんだろうなあ部門」

になっていますが、本店もこちらも、そんなこと大好きなこのblogを書いているような人ばっかりじゃありませんからぁ!(担当者はきっとそうだけど。)