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2008年8 月

図書館退屈男だってミュージカルを見る。名古屋でだけど。

気がついたら家内で共有しているgoogle calenderに名古屋行きの予定が入れられていた。

そういえば、半眠り状態で「名古屋公演に行くから新幹線と宿とるよ~」という連れ合いの声を聞きながら、「時間はそれでOK」「帰り…普通席いっぱい…OK…G車でいいよ…zzzz」とか無責任に答えた記憶が。

土曜日。午後発の新幹線に乗り込み、駅弁を食しながら2日間の行動についてのブリーフィング。要点は、

  • 今夜は「ひつまぶし」を食べる
  • 明日は昼公演なのでよろしく
  • 味噌煮込み食べたい

食べてばかりだ。個人的には台湾ラーメンも食べたい。

のぞみは西へ。続いて、日曜日に観劇するミュージカルの演目についてのレクを受ける。まとめると、「皇后を殺めたテロリストの狂言回しにより進行」「黄泉の国の王が名家の娘に魅入られる」「黄泉の王の幾多の誘惑(=死)に耐え我が道を行く皇后」「やがて皇后の死により結ばれる」というお話だそうだ。冥界の王。黄泉の国。魔王? テロリスト? 既視感。この感覚は。(D…) そうこうしているうちに名古屋に到着。

かの名曲「名古屋はええよ!やっとかめ」にも歌われるユニモール→地下鉄→サカエチカを抜けてホテルにチェックイン。
松坂屋に移動。目指すはひつまぶし。17:30。夕食にはちと早い。しかし食欲をそそるタレの香りと最後尾札。誘導に従い最後尾に就くと、他の客が店員に尋ねる声が耳に入った。「どのくらい待ちます?」「えーと、この位置だと1時間半ぐらいですかねえ。」ひつまぶしに90分待ち。名古屋は食のテーマパーク。この程度の待ち時間など当たり前なのか。
予想より早く、60分ぐらいで店内へ。当然ひつまぶしをオーダー。程なく出てくるうなぎが美味。

日曜日。劇場へ。ポスターを写真に収める連れ合い。そういえば、前提知識ゼロの状態で、彼の扮装を「何この解散直後のビジュアル系ロックバンドの人」と言って連れ合いの失笑(いや、怒りに近い)を買ったことを思い出す。黄泉の王が…ボーカル…?…??。(DM…) 自分の妄想とは無関係に開演時間は近づく。連れ合いに手を引かれて場内へ。2階席最前列。舞台全体がよく見渡せる。

幕が上がる。ミュージカルを観劇するのは3回目。だんだんこの雰囲気に慣れてきたように思う。連れ合いはオペラグラスで彼に釘付けだ。

思いもよらず欧州の王家に嫁ぐことになった奔放な性格のヒロイン。皇太后…義母との確執。窮屈な宮廷生活。個人よりもなによりも「義務」が優先される王家。ようやく恵まれた子も義母に奪われる。皇太子となる男子も教育と称して容赦なく義母は奪う。母に会うことも許されない幼い皇太子に忍び寄る黄泉の王。「僕は友達だよ。」甘言を弄して近づくが、背中に向けるは刃。所詮は皇后を手に入れるための道具なのか。

「義務」を遂行するために謀略を図る皇太后。その罠に落ち不貞を働く皇帝。それを黄泉の王より知らされる皇后の心はもはや宮廷にあらず。行く着く宛ない流浪の旅へ。皇帝と皇太后の間に生まれる亀裂。一度の不貞が生んだ悲劇。もはや自らには帰らぬ皇后の心。息子に背かれた皇太后は失意のうちに他界。

成長した皇太子は皇帝である父と対立、反体制運動に加わるも摘発され投獄。宮廷を離れ放浪の旅を続けていた皇后からも見放される。そこへ再び現れる黄泉の王。皇太子にそっとピストルを渡す。その銃口は自らのこめかみに。
悲嘆に暮れる皇后。疲れ果て、黄泉の王の元へ下ることを決意する。

湖畔でボートを待つ皇后。近づくテロリスト。哀れ皇后は無政府主義者の手に係り、暗殺。彼女の魂は黄泉へ。そこに待つのは幸せなのか。王の手で棺桶に導かれ眠りにつく王妃。

幕。喝采。繰り返されるカーテンコール。

ふと、ある歌詞が浮かぶ。

俺には友達恋人いねぇ
それは俺が殺したから

SATSUGAI!」(DM…C!) ばらばらのパズルがかみ合った。この男、黄泉の王こそが魔界の王、クラウザーさんだったのか! そう考えればストーリーのすべてに納得が行く! 欧州を牛耳る王家でさえ自在に操り手玉に取っていたとは…恐るべしクラウザーさん…。 歴史を陰で操っていたのはクラウザーさんだったんだ!

…という自らの非の打ち所のない完璧な妄想を連れ合いに話したが、あきれられ無視されるのみだった。

夕刻の上り新幹線。満席。隣合せの席は取れなかった。連れ合いとは離れた席で身を休める。その空気はただ重かった。


偽装係長と上級司書

もう数年前ですが、某市立中央図書館勤務の同期(Oさん(仮名))とこんな話をしていました。

O「…俺、今度主任に昇格するんだ…。」(死亡フラグ?)「部下も付くし、ちょっと出世だね。」
図「フムン…自分、係長になってもう数年ですけど何か。」
O「マジ?!」「係長!」「すげえ出世!」
図「マジ。でも部下はいないよ。係には自分ひとり。あとは非常勤職員1名。」
O「マジ?!」「一人の係?」「ありえない。」「普通、部下いるでしょ。」
図「それがね、いないの。」
図「部下のいる主任といない係長、どっちがいい?」
O「そりゃ部下がいる方でしょう。」
図「だよねー。」

ということで、図書館退屈男、係員いません。今風に言うと偽装係長?。お給料は係長だけど、仕事は係員+係長。雑務もあれば起案、折衝もあり。でも裁量権は課長補佐。俗に言う「係長行政」から「課長補佐行政」に移行しつつあるといってもいいでしょう。本店あたりも同様で、係長も係員も一兵卒扱いで事業を動かすのは班長=課長補佐です。社によって違うかもしれませんが。
小池田マヤ先生が描くところの「ときめきまっくん!」他各種4コマOLマンガのように、一緒に残業してくれてEXCELやPowerpointで資料を作ってくれて料理が上手な(←関係ない)アシスタント的な部下って、どこにいるんでしょう。誰か教えてください。「すぎなレボシューション」系の係長のお姉さまは多いのですが。自分はどちらかというとまっくん派です。

係員は欠員ではなくて、定員的にいません。ていうか課で係員は2人しかいません。絶滅危惧種です。スキルの継承とかそんなのもうできません。構成比で言うと、おおむね

課長/課長補佐級:係長:係員≒3:3:1

です。ちなみに、図書館退屈男採用時(15年前)はだいたい

課長/課長補佐級:係長:係員≒1:2:1

でした。当時の係員は4人。今では頭が大きい組織になってしまった、ということ。

そんな中でid:humotty-21さんの「図書館学の門をたたく**えるえす。」のエントリ、「10年の「経験」が保障する司書の能力」を読みます。

まとめると、

で、タイトルから大体想像がつくかもしれないが、このエントリで言いたいことは、「10年の「経験」が保障する司書の能力は、資格認定に本当に必要なのか」ということ。そんな条件はなくなればいいのにと私は思っているのです。10年とかふざけるなよと。

ということです。

10年働けばそれなりにスキルが身に付き、順調に行けば主任/係長級に昇格する頃合でしょうか。問題点はブクマコメントにもあるように、

「じゃあ、これから図書館に就職して10年働ける人間はいるのか?」

に尽きます。弊社とて退職者の後は定員削減で係員ポストは純減、しかも「定員削減=仕事を削減する」ことなので、場合によってはその穴を派遣職員や非常勤職員で埋めることすらままなりません。最後は図書館サービスの質と量を落とすしかないでしょう。

大量の遡及入力などを行う場合は、役務として図書館のアウトソーシングを受託する会社にお願いします。当然、競争入札なので契約金額は詰めて詰めて各社入札に臨みます。そして、落札金額から実際に働く人の時給は予想が付きます。もっとも、「われわれの館」などに求人が出るのですぐわかりますが。こんな時給で、といつも思います。

働き振りを見ます。優秀な、それこそ採用したいくらいの人はいます。でも採用枠を我々は持っていません。その権限もありません。労働組合は「不正規雇用対策」を声高に訴えます。でも、その「不正規雇用」を生み出しているのは自分たち正規職員。なんという矛盾。通り過ぎるシュプレヒコールの波。中島みゆきの「世情」を日々口ずさみます。

それでも夏の司書/司書補講習、大学の司書課程受講者などで司書有資格者は増え続けます。(冒頭のOさんは大学で司書課程を受講していなかったので、夏の講習で取得しました。)「司書になりたい」人は増えるばかりです。でも受け皿はないのです。

さて、「上級司書」と同様の資格として、日本医学図書館協会の「ヘルスサイエンス情報専門員」があります。初級、中級、上級とありますが、上級の認定要件の一つは「ヘルスサイエンス分野の図書館あるいはそれに準ずる施設で、10年以上の勤務経験」です。
その他、協会主催の講習会及び協会指定の研究会等の参加、学協会への委員としての参画、論文発表の回数などをポイントとして計算し、上級の初回申請には「過去5年間で100ポイント以上(更新は70ポイント)」が必要です。そうそう確保できるポイントではありません。詳細な要件は「申請の手引き」をご参照ください。

以下、上級の認定者数の推移を抜き出してみました。(「認定資格「ヘルスサイエンス情報専門員」申請及び認定数」より。日付は受付日、カッコ内は認定者数のうち初級/中級/上級/合計を表す。)

  • 第1回(2004/02):32  (16/12/32/計60)
  • 第2回(2004/07):9   (5/4/9/計18)
  • 第3回(2005/01):6   (7/4/6/計17)
  • 第4回(2005/07):4   (4/2/4/計8)
  • 第5回(2006/01):2   (15/5/2/計22)
  • 第6回(2006/07):11  (7/10/11/計27)
  • 第7回(2007/01):0   (10/0/0/計10)
  • 第8回(2007/07):0   (2/0/0/計2)
  • 第9回(2008/01):0   (12/0/0/計12)

本来は初級から順に取得する認定資格ですが、経過措置として第6回までは相当のポイント数があれば中級、上級の申請を行うことができました。このため、この措置が終わる第6回の認定者も多かったものと思われます。合計すると、現時点では64名の上級資格所持者が存在することになります。初級は78名、中級は37名です。

勤務地が「ヘルスサイエンス分野の図書館あるいはそれに準ずる施設」に限られていること、上級に限って言えば費用(非会員初回認定審査料:22,000円)、比較的高いハードル(原著論文執筆(日本語単著で20-30p)、全国レベルの会議の演者として登壇(10p)、あるいは研究会等参加(5p/半日,最大20pまで)など、5年で100ポイント必要)などから考えると妥当なところかもしれませんが、それでも64名。これから初級から順に取得するとしても、8,9回あたりでせめて中級に取得者がいてもよいように思います。それとも、そのくらいのスキルの人は、このあたりで「打ち止め」なのでしょうか。今後の推移を見てゆく必要があるでしょう。

こうして、資格により現職者と数少ない新規採用者は差別化されます。また、非正規雇用では、このような資格を取得することすらままなりません。
しかし、「上級司書」が設定されたとして、現職者でもどのくらいの人が取得できるのか、上の例からも疑問はあります。ただ10年普通に働いても取得できるのか、ヘルスサイエンス情報専門員のようにそれなりの自己研鑽を積まないといけないのか。無論望ましいのは後者で、単なる既得権の保護にしてほしくはありません。

上級司書になっても、業界内の評価で終わり職場内、特に人事権のある管理者や業務の査定に当たる行政部局の評価が得られるようなものでないと無意味でしょう。仲間内で褒めあっていても、対外的な評価にはつながりません。「持っていれば図書館に優先的に配属、しかも資格手当て付き」なら大歓迎ですが。

話は資格に限りません。様々な協会の表彰制度も、「永年勤続ご苦労様でした」的なものが多い印象があります。学会などにあるような若手を奨励するような表彰制度を作ってほしいものです。その「若手」がいないのがそもそも問題なのかもしれませんが。

どうすれば若い人たちを応援することができるのでしょう。何が応援になるのでしょう。どうすれば彼らのスキルを上げ、願った職に就けるようになるのでしょう。幸いにも、今はblogなどで発言する方が増えてきました。ネット上に留まらず、もっと公の場で発言できる機会を作れば何か変わるのでしょうか。誰もが疲れて、何もできないのでしょうか。

「本に囲まれて働きたい」という漠然とした希望を、「xxx図書館の上級司書のような仕事がしたい」のような具体的な目標に変えるにはどうすればいいのでしょうか。現職にある者は、何をすればいいのでしょうか。上級司書とやらは、その現状を打破するものになるのでしょうか。

長々と書いたわりにはまとまりません。

図書館退屈男は、あちこちで(たまに)よしなしことを書き綴ることと、システムをちょこちょこといじって新しいことを始めてみるくらいしかできません。