図書館退屈男だってミュージカルを見る。名古屋でだけど。
2008/08/24
気がついたら家内で共有しているgoogle calenderに名古屋行きの予定が入れられていた。
そういえば、半眠り状態で「名古屋公演に行くから新幹線と宿とるよ~」という連れ合いの声を聞きながら、「時間はそれでOK」「帰り…普通席いっぱい…OK…G車でいいよ…zzzz」とか無責任に答えた記憶が。
土曜日。午後発の新幹線に乗り込み、駅弁を食しながら2日間の行動についてのブリーフィング。要点は、
- 今夜は「ひつまぶし」を食べる
- 明日は昼公演なのでよろしく
- 味噌煮込み食べたい
食べてばかりだ。個人的には台湾ラーメンも食べたい。
のぞみは西へ。続いて、日曜日に観劇するミュージカルの演目についてのレクを受ける。まとめると、「皇后を殺めたテロリストの狂言回しにより進行」「黄泉の国の王が名家の娘に魅入られる」「黄泉の王の幾多の誘惑(=死)に耐え我が道を行く皇后」「やがて皇后の死により結ばれる」というお話だそうだ。冥界の王。黄泉の国。魔王? テロリスト? 既視感。この感覚は。(D…) そうこうしているうちに名古屋に到着。
かの名曲「名古屋はええよ!やっとかめ」にも歌われるユニモール→地下鉄→サカエチカを抜けてホテルにチェックイン。
松坂屋に移動。目指すはひつまぶし。17:30。夕食にはちと早い。しかし食欲をそそるタレの香りと最後尾札。誘導に従い最後尾に就くと、他の客が店員に尋ねる声が耳に入った。「どのくらい待ちます?」「えーと、この位置だと1時間半ぐらいですかねえ。」ひつまぶしに90分待ち。名古屋は食のテーマパーク。この程度の待ち時間など当たり前なのか。
予想より早く、60分ぐらいで店内へ。当然ひつまぶしをオーダー。程なく出てくるうなぎが美味。
日曜日。劇場へ。ポスターを写真に収める連れ合い。そういえば、前提知識ゼロの状態で、彼の扮装を「何この解散直後のビジュアル系ロックバンドの人」と言って連れ合いの失笑(いや、怒りに近い)を買ったことを思い出す。黄泉の王が…ボーカル…?…??。(DM…) 自分の妄想とは無関係に開演時間は近づく。連れ合いに手を引かれて場内へ。2階席最前列。舞台全体がよく見渡せる。
幕が上がる。ミュージカルを観劇するのは3回目。だんだんこの雰囲気に慣れてきたように思う。連れ合いはオペラグラスで彼に釘付けだ。
思いもよらず欧州の王家に嫁ぐことになった奔放な性格のヒロイン。皇太后…義母との確執。窮屈な宮廷生活。個人よりもなによりも「義務」が優先される王家。ようやく恵まれた子も義母に奪われる。皇太子となる男子も教育と称して容赦なく義母は奪う。母に会うことも許されない幼い皇太子に忍び寄る黄泉の王。「僕は友達だよ。」甘言を弄して近づくが、背中に向けるは刃。所詮は皇后を手に入れるための道具なのか。
「義務」を遂行するために謀略を図る皇太后。その罠に落ち不貞を働く皇帝。それを黄泉の王より知らされる皇后の心はもはや宮廷にあらず。行く着く宛ない流浪の旅へ。皇帝と皇太后の間に生まれる亀裂。一度の不貞が生んだ悲劇。もはや自らには帰らぬ皇后の心。息子に背かれた皇太后は失意のうちに他界。
成長した皇太子は皇帝である父と対立、反体制運動に加わるも摘発され投獄。宮廷を離れ放浪の旅を続けていた皇后からも見放される。そこへ再び現れる黄泉の王。皇太子にそっとピストルを渡す。その銃口は自らのこめかみに。
悲嘆に暮れる皇后。疲れ果て、黄泉の王の元へ下ることを決意する。
湖畔でボートを待つ皇后。近づくテロリスト。哀れ皇后は無政府主義者の手に係り、暗殺。彼女の魂は黄泉へ。そこに待つのは幸せなのか。王の手で棺桶に導かれ眠りにつく王妃。
幕。喝采。繰り返されるカーテンコール。
ふと、ある歌詞が浮かぶ。
俺には友達恋人いねぇ
それは俺が殺したから
「SATSUGAI!」(DM…C!) ばらばらのパズルがかみ合った。この男、黄泉の王こそが魔界の王、クラウザーさんだったのか! そう考えればストーリーのすべてに納得が行く! 欧州を牛耳る王家でさえ自在に操り手玉に取っていたとは…恐るべしクラウザーさん…。 歴史を陰で操っていたのはクラウザーさんだったんだ!
…という自らの非の打ち所のない完璧な妄想を連れ合いに話したが、あきれられ無視されるのみだった。
夕刻の上り新幹線。満席。隣合せの席は取れなかった。連れ合いとは離れた席で身を休める。その空気はただ重かった。