セミナー、研究会

Mendeleyが来た日。

  Mendeley。いわゆる文献管理ツール。去年の今頃はそう思っていた。ところが。それはとんでもなく違う認識だったとしたら。

  話は今年、2011年2月に遡る。Bloomington, IN で開催されたCode4lib ConferenceでのIan Mulvanyさんの発表、"Mendeley's API and University Libraries: Three Examples to Create Value"で語られたのは、「MendeleyからOAuthで認証してリポジトリにアクセス」「MendeleyのMy Libraryから自分の文献をSWORDでリポジトリに投入」というAPIをバリバリ使った実装例の紹介と、APIコンテスト - "Binary Battle"。賞金は $10001
「なにこれすごい」と気づき、実はひっそりと動向をチェイス。情報源はMyOpenArchiveでおなじみ、@keitabandoさんのブログなわけですが。いつもありがとうございます。@keitabandoさんはMendeleyのAdvisor(日本には7名)でもあります。すてき。

  そして来る Dr. Victor Henning, Co-Founder & CEO, Mendeley Ltd. 来日の報。折しもWIRED日本版にMendeleyの記事「知のシェア – 学術論文における理論と実践」の掲載。なんというタイミングの良さ。第2回 SPARC Japan セミナー2011「今時の文献管理ツール」ワークショップでの講演のほか、別途に懇談の機会をいただきました。この場をお借りして、機会をいただきました関係各位、特に@keitabandoさんに心からお礼申し上げます。 

ワークショップの模様はtogetterにまとめておきましたので、こちらをご覧ください

 (超イケメンの)Dr. Victor Henning との2日間に渡る会談で明らかになった事項はこんな感じ。

これまでと現状:

  • 2008年に3人の学生のアイディアとSkypeアカウントからMendeleyは始まった。今では195カ国3万の大学・研究機関で、140万人(うち有償アカウント数千)が1億4千万近い文献をアップロードするまでになった。論文の重複はできるだけ除去している(たまに同定に失敗して重複している場合もあるそうです)。
  • Fundingと有償ユーザからの収益はあるが、まだ黒字にはなっていない。
  • 競合他社との最大のアドバンテージは「無償」であること。
  • 実は専任のサポート担当は1名。ただし、staff全員が定期的にサポート業務を行っている。CEOも例外ではない。ユーザの気持ちを掴むことが重要。我々はcrowdサービス。サポートもまたcrowd。advisorと一体になってサポートを行っている。
  • 大事なのでは機能ではなく、使っていて楽しいかどうか。Mendeleyは若いResearcherにとって使って楽しいツールとなっている。情報共有を簡単にするのが目的。
  • TogoDocのように、学際的論文を見つける必要性は高くなっている。どのような分野の研究者が使っているかがポイントになる。自分ならまず心理学を検索し、文献を登録する。時間とともに、生物学の人もその論文を見ることもあるだろう。その時は、学際的領域として心理学が求められている、ということになる。容易に探し出せるよう、厳密なカテゴリ分けはあえてしない。

近日リリースの機能など:

  • QuickSend。Mendeley Desktopから文献をDrag and Dropでメール送信。
  • Mendeley Suggest。ユーザが文献につけたタグ、Annotationなどを利用して、ドキュメント同士のsemanticなリンク生成とレコメンドを行う。amazonライクな手法に加え、MeSHも使用。
  • 図書館向けプログラム。Swetsと提携し、2012年1月に発表する。図書館向けの機能として、自機関のユーザの文献の利用動向などを把握できるツールなどを用意する。

今後の展開:

  • これまで蓄積した情報をもとに、iTunesのように論文をMendeley経由で購入するビジネスモデルを検討している。出版社からのメタデータや本文提供のオファーもあり、交渉を進めている。PubMedからは全文アーカイブの許諾は出ている。
  • 論文提供では PaperC DeepDyve と(Google Trendで)比較しても Mendeley の伸びは明らか。レコメンド用に、オープンソースのOCRを導入した。これでPDFの全文解析も行う予定。
  • 名寄せの問題。Mendeleyでも解決はしていないが、ResearcherIDORCIDとの連携により対応したい。

ということで、図書館向けプログラムの存在、また「論文をMendeley経由で購入」という新たな学術情報入手のアプローチが明らかになりました。確かに、文献の書誌情報をSNS上で共有したとしても、「入手ができない」というのはストレスになるはず。そこに出版社も目を向け、協同を働きかけているという事実。同じように、Springerが買収したCiteULikeはDeepDyveと連携しています。

90の座席がほぼ満席のワークショップでは、MendeleyのほかEndNote、RefWorksといった既存の製品のほか、生命科学者のための文献管理トータルソリューションツールのフリーソフトウェア、TogoDocの紹介もありました。こちらはPubMedと連携し生命科学分野に特化しており、登録済みの論文の「全文から」PubMedを検索し文献をレコメンドする機能付き。協調フィルタリングではなく、論文の中身から推薦する文献を検索とのこと。用語の違いはMeSHを使って吸収、正規化。これには Dr. Victor Henning も大いに興味を示したようで、ワークショップの席上でMendeleyのAPIを使ってのレコメンドの強化など、製作者の岩崎さん(東京大学)とのコラボレーションの提案がありました。「開発担当とコンタクトできるよう準備する」など、動きの早さがさすがです。

対するEndNoteとRefWorks。EndNote(文献管理)はWeb of Science(検索と関連文献表示)とResearcherID(成果公開と研究者間での共有)の役割分担と必要に応じたカスタムメイドな文献リストの作成サービス、きめ細かいユーザサポートをアピール。
RefWorksはAPIによるCMS(Moodleの対応実績あり)をインターフェースとした時間サービスとの統合やDspaceなど機関リポジトリとの連携、また大学などではアカウントを失わないよう卒業生プログラムを提供する、などのサービスがあるとのこと。
それぞれが求めるサービスから来る機能や性格の違いが把握できるワークショップとなりました。

そして今日の懇談というか会談。Researchmapでの名寄せ問題のほか、CiNiiとの連携はどうすれば。
以下、自分のデータベースとMendeleyとの連携方法。

  • RIS、BibTex、EndNote XML、Zotero SQLファイルからのインポート。
  • COinS(ContextObjects in Spans, OpenURL(Z39.88-2004)をspanタグを使ってHTML中に記述する手法)で書誌情報を書くとBookmarkletを利用したWeb Importerでインポートできる(CiNii対応済み)。
  • 上によらないボタンクリックでのデータ転送はAPIを使うか応相談。

そうか、COinSに対応しているなら、弊社のシステムはこんなこともあろうかとあちこちで実装済みだから…おお、インポートできた!すごいぞ図書館退屈男。でもWebページ扱いでインポートしている…だめだこれ、不具合報告を送らないと…ああ、仕事が増えた…。

Mendeley。文献管理ツールからこれまでにない論文入手とコラボレーションツールへの進化の到来と、Web2.0でうたわれた「リッチなユーザ体験」を本当の意味で体現して築いた新たな世界。彼らは本当に学術情報の世界に革命を起こせるのか。「図書館向けパッケージ」の実力如何。やはりエッジの利いたサービスは「※但しイケメンに限る」しか作り得ないのか(それ関係ない)。

会談しながら検索して気づきました。Code4Lib Conferenceで発表したIanさん、もとはNatureでConnnoteaを開発していたのですね(スライドあり)。WIRED日本版によればヘッドハントされたそうです。過去に図書館退屈男もインストールに取り組みその秘密も明らかになりましたが、最近OSS版の開発が止まっていたのはそういうことだったのかと今更気づく始末で。


うわ、半年ぶりにblogを書きました。図書館総合展でも催促をいただいたのに。Twitterにかまけてないでもうちょっと記事を書くようにしないといけません。

とはいえ、今回の一連の懇談でかなりの刺激を受けました。こんなことができるなんて、という驚きと、自分の今後の仕事について。


ちょっとCode4Lib行ってくる。

ずいぶんご無沙汰をしていました。

さて、2月7日(月)から10日(木)までアメリカはIndiana州Bloomingtonで開催されるCode4Lib Confereneceに参加すべく、成田空港第1ターミナル南ウイングまで来ました。こちらは後発組で、到着は現地時間6日(日)22:00ごろになりそうです。

発表の予定は特にないのですが、Lightning Talkに当日エントリーするかもしれません。

どんな会議か、というあたりは"How to Hack Code4Lib"に書かれています。Hackしないといけないようです。とりあえず、スーツで参加すると浮きまくる会議な事だけは確かなようです。

現地は大変にさむいようで、今月初めはシカゴ、ニューヨークなど近隣の空港は軒並み閉鎖になっており、「い、行けるのか?」と大変に不安でしたが、しばらく天気は持ちそうです。(Bloomingtonの天気予報

飛行機はシカゴ経由です。では、次は現地からレポートできる見込みです。Twitterでもお知らせできると思います。


[最終回] 図書館は視えなくなるか?  ―データベースからアーキテクチャへ ―

このイベントもついに最終回となりました。お申し込みはお早めに

イベント情報掲載ページ
http://www.d-labo-midtown.com/d-log.php

からお願いします。

今回のゲストは濱野智史さんです。(個人ウェブサイトへ)

図書館は視えなくなるか? ―データベースからアーキテクチャへ
国立国会図書館長=情報工学者・長尾真のシリーズ対談

長尾 真 氏 ・ 濱野智史 氏
これからの知―情報環境は人と知の関わりを変えるか」

今回は対談ゲストに情報環境論/メディア論研究者、批評家の濱野智史氏を迎え、「これからの知―情報環境は人と知の関わりを変えるか」と題して長尾館長とお話しいただきます。

「わかる」とは何か? 知の構造化、集合知とオープンアクセス、etc...。

情報環境の大きな動きの中、知そのもののありようが大きく揺らいでいるようにみえます。われわれは知との関わり方をどのように設計することができるのでしょうか。そして、知の集積として機能してきた図書館のアーキテクチャはどう変わっていくのでしょうか。

知のあり方を長く探究し続けて来た情報工学者・長尾真氏と、情報社会論から新しい批評を切り開く批評家・濱野智史氏による、シリーズ最後をかざる未来に向けてのトークセッション!

日時: 2009年12月10日(木)19:00-21:00 (受付開始 18:45)
会場・主催: d-labo/dream laboratory by SURUGA bank
東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー7F
TEL: 03-5411-2363
ホームページ: http://www.d-labo-midtown.com/
イベント情報掲載ページ: http://www.d-labo-midtown.com/d-log.php

[第3回]図書館は視えなくなるか?  ―データベースからアーキテクチャへ ―

いよいよ第3回を迎えましたイベントのお知らせです。毎回あっという間に満席になる、ということですのでお申し込みはお早めに

イベント情報掲載ページ
http://www.d-labo-midtown.com/d-log-detail.php?id=172
 

からお願いします。(今回は電子メールでのお申し込みとなります)

今回のゲストは作家の円城塔さん。「言語」をめぐる熱いディスカッションが期待できるのでしょうか。

図書館は視えなくなるか? ―データベースからアーキテクチャへ
国立国会図書館長=情報工学者・長尾真のシリーズ対談

長尾 真 氏 ・ 円城 塔 氏
言語とはなにか― 書く、伝える、遺す

「もう、『本』や『図書館』はいらない!?」

これまで本という形を与えられていた情報は、インターネットをはじめとする様々な媒体の間を相互に行き来するようになりました。データベースとして機能してきた図書館も勿論、この変化の中に在ります。これからの図書館はどんな形で、どんな新しい「できること」を提供できるのでしょうか。言語や文字から生み出される行為や現象から、言語の可能性と不可能性を考えてみる。「書く」「伝える」「遺す」などの行為や言語の存在により生じるさまざまな現象と、本や図書館はどう関わるのだろうか?視えない本や図書館はありうるのだろうか?

自然言語処理の世界の尖端で言語と向き合ってきた情報工学者・長尾真氏と、「SF」「純文学」などのカテゴリーに閉じることなく自由に「言語とは何か」をテーマに書き続ける作家・円城塔氏による、言語を巡るトークセッション。

日時: 2009年10月1日(木)19:00-21:00 (受付開始 18:45)
会場・主催: d-labo/dream laboratory by SURUGA bank
東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー7F
TEL: 03-5411-2363
ホームページ: http://www.d-labo-midtown.com/
  • セミナーはどなたでもご参加いただけます。
    • 一部イベントにつきましては年齢制限があり、保護者の同伴もしくは同意が必要となる場合があります。
  • 席数に限りがございます。
    • 場合によっては立ち見となる可能性がありますが、ご了承ください
  • セミナー参加の申し込みはE-MAILにて承ります。E-MAILには以下の内容を記入してください。
    • 参加希望のセミナー名・お客さまのお名前・人数・電話番号・E-MAILアドレス
  • 申し込みメール送信(先着順)をもって受付完了とさせていただきます。定員オーバーの場合にはその旨をご返信いたしますので、予めご了承ください。
  • 万が一日程変更・中止の場合にはご連絡させていただきます。予めご了承ください。
セミナー参加の申し込みの宛先: [email protected]
イベント情報掲載ページ: http://www.d-labo-midtown.com/d-log-detail.php?id=172 

長尾 真 氏 プロフィール:
情報工学研究者・国立国会図書館長。1936年生まれ。工学博士。1959年京都大学工学部電子工学科卒業。京都大学総長、国立大学協会会長、独立行政法人情報通信研究機構理事長などを経て、2007年より国立国会図書館長。情報工学、特に画像及び言語という情報メディアを用いた知的な情報処理に関する研究において世界をリードする顕著な業績を挙げ、パターン認識、画像処理、自然言語処理、機械翻訳、電子図書館等の分野の発展及び学術振興に多大な貢献をしたことにより2008年度文化功労者に選出される。研究者として初の国立国会図書館長であり、就任時より「知識はわれらを豊かにする」という理念を掲げ、公務にあたっている。

円城 塔 氏 プロフィール:
1972 年生まれ。博士(学術)。1995年東北大学物理学科卒業。2000年東京大学総合文化研究科修了。北海道大学、京都大学、東京大学でPD[Post- Doctoral Fellow]を経て、2007年より小説家。第104回文學界新人賞、第1回文学賞メッタ斬り!新人賞を受賞。著書に『オブ・ザ・ベースボール』『Self-Reference ENGINE』『Boy’s Surface』。在学・在職中の専門は広義の物理学。主テーマは、言語とは何か。文芸誌、SF専門誌、Web雑誌などジャンルを問わず活動中。小説家へ転身してからの主な興味は、文字を使って何が可能か、或いは文字を使わずに何が可能か。動く文字や動く小説を文字を使って書くことはできるのか。例えば小説を読むことは読み手の中で何かが動くことであり、それを小説本体へ折り返すことはできるのか、等。スローガンは「飛び出す小説」「書けない小説」「消える小説」「勝手に書かれていく小説」等。

【先着100名】全国図書館大会U40プレミアセッション

図書館退屈男。U40脱出は目前。

ということで、今日はイベントの告知です。Under40のみなさん、チャンスですよ!

図書館大会はじめ各種イベントの懇親会。
「費用対効果に合わないような気がする」
「若い人が少なくて話が合わない」
「出席したけど知っている人同士が固まっていてさみしかった」
など、寂しい気持ちになりがちですが、今回は

  • 一言物申したい人はライトニングトークで思いのたけを熱く語れる(5分ですが)
  • 若い人が中心なので話しやすい(そのためにはあなたが出席する必要があります)
  • 飲めない人でもお得な参加費設定(飲んだ分だけ払ってください)
  • 業界で有名っぽい人と話ができる(かもしれない)

など、ライトな前夜祭を企画しています。
全国図書館大会に参加予定で、前泊の日の夜が空いている方はぜひご参加を。

前置きが長くなりましたが、以下詳細です。

10月29日(木)、全国図書館大会U40プレミアセッション開催

【開催日時】 2009年10月29日(木)午後7時~午後9時
【開催場所】 HUB(ハブ)日比谷店
                〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-6-8 松井ビルB1 電話03-3592-0309
【参加費用】 1500円 (スタンディング席。フードのみ)
                ※ドリンクは別途、カウンターで自費購入。
【参加対象】 図書館に関わるすべての人
【参加申込】 http://futurelibrarian.g.hatena.ne.jp/ から
【お問い合わせ】 u40_office あっと yahoogroups.jp (あっと はアットマークに置き換えてください)

全国の図書館関係者が東京に集う全国図書館大会。
その前日、10月29日(木)にイベントやります!

この機会に日頃なかなか知り合えない、他県の人、他館種の人とつながりをひろげたい……。

そんな人たちのための、そんな人たちによる前夜祭です。
特にU40な若い人々!あなたが主役です!
委託・指定管理など、いまの図書館の目の前の話は禁止。中堅からもっと若い人への説教も厳禁。明るい笑顔で図書館の夢を語るために集まってください。

第1部: ライトニングトーク

参加者のうち10人位が自分の現在の仕事について、短い時間で次々にプレゼンテーションしていきます。誰が登壇するかは当日をお楽しみに!
プレゼンテーションの立候補、受け付けます。

第2部: 自由おしゃべりタイム

たくさんの方とお話してつながりを広げましょう!席替えタイムもありますよ。

41歳以上の方にもオブザーバーの立場でのご参加をぜひお待ちしております。
ただし、ベテランのあなたが話題に入ってしまうと、若手はあなたの意見が聞きたくなって、自分の思いを語らなくなってしまいます。あくまで若手をそっと見守る存在としてご参加ください。ボランティアスタッフとして、ベテランならではのご活躍もあてにしています!

さあ、参加希望の方! 申し込みフォームから登録してください!
10月29日(木)の夜に、みなさんとお目にかかるのを心から楽しみにしています。

開催事務局(順不同):
・嶋田綾子(横芝光町立図書館)
・熊谷慎一郎(宮城県図書館)
・大貫朋恵(国立国会図書館関西館)
・葉山敦美(座間市立図書館)
・萬谷ひとみ(新宿区立図書館)
・丸山高弘(山中湖情報創造館)
・伊藤美恵子(新宿区立図書館)
・宮川陽子(福井県立図書館)
・西村彩枝子(江東区立図書館)
・稲場雅子(日本図書館協会)
・高野一枝(NECネクサソリューションズ)
・林賢紀(農林水産研究情報総合センター)
・田辺浩介(慶應義塾大学)
・岡本真(ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG))
+その他、大勢
※基本的に所属先とは関係なく、個人としての活動です。

なお、「俺も一丁乗るぜ」という事務局メンバーも大募集中です。こちらはU40でもO40でも問いません。


U40プレミアセッション。映画の公開前日にセレブな方が赤絨毯の上を歩いて見に行くプレミア試写会をイメージしています。そう、U40なあなたが赤絨毯でやってくる、そんな光景を思い描いて企画しました。

俺たちがteenagerのころ、こんな言葉が流行ってた。「Don't trust over 30」 30以上の奴を信用するな、っていうことなんだけど、ところが俺も、とうとう30になってしまった。だけど、ステージの上に上がってRock'n Rollを演るときは今も変わらずteenagerだ!
(浜田省吾、"On the Road'83". 渋谷公会堂, )


新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会&第4回ARGカフェ&ARGフェスト

図書館退屈男。仙台までの移動は常磐線(上野から新幹線を使うよりリーズナブルなのです)。道中、メヒコの「いわきカニ・ウニ欲張りピラフ弁当」(1,200円)を食しつつ、やってきました仙台。

会場は仙台メディアテーク。ギャラリー+ライブラリー+スタジオの複合施設。ガラス張り。きれいな建物。にぎわう人々。街中にある、という立地もありますが、ちょうど講演会が開かれていたりと活気のある建物でした。

詳しい紹介は「新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会」で伺ってきました。
ギャラリーなど表現の場、またスタジオ・ワークショップでの活動の場、そして図書館のような情報収集と蓄積・編集・発信の場として機能しており、常に市民の「こんなことがしたい」というニーズに応える。インフラを用意して後は自由に活用してもらう、という姿勢は世田谷の羽根木公園のプレーパーク(知らないうちにNPO法人に)のモットー、「自分の責任で自由に遊ぶ」を彷彿とさせました。(ボランティアが常駐しているけど基本は子供が自由に遊べる。ルール・規則はなし。ボランティアは子供のお手伝いをするだけ。)

同じ会場で第4回ARGカフェ。実況は今流行のtwitterでお送りいたしました。「tsudaる」というあれですね。なので詳細はそちらをご覧ください。

パワーがあるからライトニングトークに参戦するのか、東北勢には何かパワーがあるのか判断できませんが、東北大&山形大が半数を占める参加者の中で60分のライトニングトークはスケブトーク(スケッチブックを活用したプレゼン。今命名。zipでほしい。)に始まり怒涛のように終わりました。パワーポイントを活用する人も多かったです。
自分ですか?何も持たないトークでしたが何か。でも配布資料は何かしらあったほうがよさそうですね。あと、いつもの付箋紙を忘れて「あれ期待してたのに…」とのリクエストをいただきました。図書館総合展では配りますのでいましばらくのご辛抱を。

さて、長峰さんの「図書館には嫉妬している。誰でも知っている。科学館を知っている人は少ない。」「所詮図書館。学会などアウェイの場所に出て来い!特に、実験科学者の土俵で発信することがサイエンスコミュニケーションの始まりだ。」に代表されるように、「アウェイ」が今回のキーワードでしたでしょうか。
学外での発表もアウェイ。図書館界以外での活動もアウェイ。ましてARGカフェのような誰が来るか判らない、詩人や近くのコーヒー店のマスターが来るような場もまたアウェイ。情報系学会なんてもっとアウェイ。そういう場所でも理解されるように話すことこそが外部へのコミュニケーションの第一歩だと再認識しました。


当館はどこへいっても基本アウェイです。専門図書館というカテゴリでもgo.jpは少数派。某国立図書館の分館ですがそんなことは誰も知らない。「あったんですね…図書館」と言われること多し。研究所付設ならともかく、そうでもない。そしてむやみに長い組織名。一度で覚えてはもらえない。

自分のトーク「日本国内図書館OPACリストの15年」でも触れましたが、振り返れば最初の10年ぐらいはOPACリストと共に当館がそこそこメジャーになる過程であったのかなと。おかげさまで、どこへ行っても「OPACリストの人」ということでアウェイ感の低減に繋がりました。さすがにそれで10年は持ちませんでしたが。

OPACリストの成功要因を3つにまとめる(この手法は先日岡本さんの勉強会でご教示いただきました)とこんな感じでしょうか。

  1. 継続して更新していた
    メンテのないコンテンツは誰も使ってくれません。「更新されている」ことを評価していただいたこともあります。URLもほぼ15年変わっていません。今でも内部ルール的とはずれていますが移行措置的にサーバ名もURLもあえて変えていません。ちなみに、現在のメンテ担当は4代目です。
  2. どこへ行ってもアウェイな図書館だからこそできた
    大学図書館なら大学の、公共図書館なら公共図書館のリンクリストになりそうですし、自然そうなりがちですが、当館は他に繋がりもしがらみも権威性も上下関係もありません。そのおかげで、OPACリストは館種を超えたリストになることができました。「意外性」もあったのかもしれません。図書館という狭い世界ですが、中立性が高いからこそ何に縛られることもなく今に至るまでさまざまな試みができたのかもしれません。
  3. 真っ先に手をつけた
    これも大きかったと思います。1993年にデータ収集開始、翌年公開、今では盗んだバイクで走り出す15のOPACリスト。「なぜうちの館で出来なかったのだ!」とか「JLAがらみですか?」とか外部ではいわれたこともあったようです。新しいネタは速やかに公開する、ブルーオーシャンで先駆者になってデファクトスタンダードを作ってしまう、というと大げさですが、「先見の明」も大事なファクターなのでしょう。その代わり、「ずっと面倒を見る」という責任も引き受けることになりますが。

一方で反省もあります。

  1. コミュニティにはならなかった
    当時は「かりん」というメーリングリストであの界隈は盛り上がっていたのでコミュニティ云々は特段考えていませんでしたが、振り返ってみれば200館以上の図書館が館種を越えて集まることができる機会を逃したのでは、と今になって思います。特にWebインターフェースでのOPACの黎明期、あそこでもっと議論が出来ていれば今のような次世代OPAC云々の話ももうちょっとなんとかできていたのでは…とは今だから思う話。
  2. 図書館退屈男だけのもの?
    そんなことはありません。情報をご提供いただいた皆様のおかげでOPACリストは15歳になることが出来ました。本当に感謝しています。
    とはいえ、1.でも述べたように、公開館同士でフィードバックできるような何かがあればよかったのかな、とも感じます。当館も15年前よりはメジャーになりました。OPACリストに掲載されればその館のアクセスが急増した、とも聞いています。隣の研究所図書室でも「OPACリストを作った人の近くですか?」と聞かれる等、社全体の可視性の向上にもなりました。
  3. 個人の作品か組織の業務か
    2001年3月版までは図書館退屈男の実名入りの配布でしたので、それは名前も売れるわけだよなあ。その4月からは著作者は職場名に変えました。もう、公式のWebサイトで個人名をコンテンツに出しての情報発信が許される時代ではなくなっていました。
    最初はどうしても「個人」が背負っていた業務ですが、いつかは「組織」が担う業務にしないといけない。個人の情熱だけは継続も難しいのでは。移動に伴い、その業務の重要性を職場に理解してもらい、組織の業務できたことは幸いでしたが、異動がなかったらと考えると…ちょっと怖いですね。

今はいろいろ機会もありますし、どんどん前に出てアウェイを攻めていけば自身の勉強にもなるし、よいのではないかと思います。

そんなこんなで仙台メディアテーク→ちゃんこ屋(魚類うまし)→大通り沿い10F(確か)の雰囲気のよいバー(カクテルうまし)→こじゃれたバー(「紅茶は別メニュー」とあるので期待したけどロイヤルミルクティーは作れないという謎)→ホテル(この時点で03:00近く)という長丁場を乗り切ってきましたが、いろいろな方とお話できる機会というのは楽しいですし、勉強になります。皆様ありがとうございました。

以下、見聞きしたお話を箇条書きにしてレポートに代えます。酒の席の話題なので真実は知りません。

  • スケブ右上に[アナログ]と書かれていたのに発表の後に教えてもらって気づく有様。スペースNo.がわかれば妻を買出しに派遣します。ブログも拝見しました!面白いです!速攻でRSSリーダに入れて毎日見ています。
  • 「幼少のころ、冬はハタハタばかり食わされた」という某課長の箸捌き。特に魚を前にしては芸術の域。
  • そんな某課長にクラシック談義では苦杯するものの、「親が相撲中継ばかり見ていて」相撲に造詣の深い某氏。
  • 「このスカートは色違いもあって両方手製なんですよ~」カエル折り紙とかだけでなく衣類まで。なんて器用なのでしょう。すみません、お手製の素敵なスカートを粗相で汚してしまって…。
  • 図書館系センセイ方向け接待旅行なんてはじめて知りました。でも鉄オタなら新津は聖地。うらやましい。
  • 山口→山形へ異動。「次は山梨を狙う」と公言するも「山東省では?」と切り返される笑劇。7月にお待ちしております。
  • 東北大工学部と官舎は山の上。積雪時のタクシーは乗車拒否。
  • ドイツでネオネチに囲まれても日本人と名乗ってドラゴンボールを見せれば切り抜けられるらしい。マンガは命を救うアイテム。
  • そういえば仙台にはガンダムバーがあったことを午前2時ごろ指摘され激しく後悔。
  • 「ドリフトしたかったら最初からしやすい車を買って練習するべき」「やりにくい車を買って苦労して練習するよりはずっと早く上達する」名言を拝聴。用途に合わせたシステムを用意しろ、という話題だったはず。
  • ライブラリーホテル。蔵書は某氏に「持ち寄り文庫のよう」と言われて実際に見てみたらそうだった。箔付け用の古い資料ならいくらでもありまっせ。
  • 宮城県図書館。書架に「地震が起きたら棚から離れてください」のラベル。書庫に用意されたヘルメット。閉まらなくなった金属製マイクロフィルムケース。かなり真剣。

はい、当面の予定などです。

  • 書庫はいつでも雨漏りです」のエントリ、「『図書館雑誌』6月号 その1」にて、「図書館雑誌」6月号(103(6), 2009.6)掲載の「OPACの使われ方を変革する」のレビューを頂戴しました。ありがとうございました。
  • 情報管理」7月号(52(4), 2009.7)の「この本!おすすめします」。もうすぐ出ます。
  • 某雑誌の座談会に行ってきます。発売は秋らしいですので、詳報は追って。

リンクリゾルバにbXの風が吹く

ユサコ主催のEx Libris bXセミナーに行ってきました。この手のセミナーに参加する、いや出張自体が久しぶりなので開放感にあふれています。うひゃっほう!

今日の目玉はPrimoとbXの紹介。先にbXのサマリを。

  • 目指すものはレコメンドサービス
  • 万単位のユーザから得られた1000万件以上のさまざまなリソースへの情報要求の分析が基盤
  • 論文単位の要求に応えられる。
  • さまざまな環境に適応させることで、学術検索と密に統合し容易に利用可能
  • 各種標準への準拠と相互運用性の確保。

セミナーはまずEx Librisの紹介から。以下まとめ。

  • 図書館システム(Aleph)からリンクリゾリバ(SFX)、メタサーチ(MetaLib)、統合インターフェース(Primo)などトータルラインナップを用意している。
  • Hi-endな顧客をターゲットとし、顧客とのコラボレーション、緊密な連携を保っている。
    • 導入実績:
    • 米国のトップ10の大学全て
    • 米国のトップ50のうち45の大学
    • 欧州のトップ50のうち36の大学
    • 37の国立図書館 など
  • 76%のスタッフを研究開発に振り向けるなど、常に次世代への投資を怠らない。
    • 図書館以外への検索要求の増加というパラダイムシフトが背景にある。
  • OpenURLなど標準策定への参画
  • ユーザグループとの連携
  • OpenPlatformとユーザコミュニティによる拡張

OpenPlatformあたりの話題は、カレントアウェアネス-R(2008.7.11)でも報じられていたところです
これら公開された情報を元に、ユーザが開発したライブラリはEL Commonsと呼ばれるコミュニティサイト(ユーザのみ公開)で公開されています。「うちはOpenPlatformだから」という説明はこの後何度か出てきましたので、ポイントの一つかもしれません。

次はPrimoの紹介。こちらは日本語で。

  • 機関でアクセスできるリソースを一元的に提供する窓口(ポータル)
  • 自機関のみ・紙媒体のみが対象である従来のOPACよりも対象・機能共に大(次世代OPAC)
  • PrimoツールバーやOpenSearchによりブラウザからいつでも検索

「次世代OPAC」と自称するだけあり、検索結果のファセットクラスタリング(エンジンはMetaLibと同じvivisimo)、検索結果へのtagging、タグクラウド、自館だけでなく他の目録、google books、amazonなど他のアクセスポイントなどへのリンク、など一般的な機能は一通り抑えています。
「使ってみてえ」という方は、the British Library とか オックスフォード大学図書館 あたりでお試しください。(ソースはやっぱりカレントアウェアネス-R(2009.3.3)。いつもありがとうございます。)

Primoのシステム構成ですが、バックエンド(Publishing Platform)とフロントエンド(User Experience)の2階層構造で、先に紹介した機能がフロントエンドにあたります。

バックエンド(Publishing Platform)側では、ローカル情報源(図書館システム、機関リポジトリ、SFX・MetaLibのKnowledgeBase(電子ジャーナルやデータベースのURL、利用条件など))、その他ハーベスト可能なものは事前にハーベストし、Primo Normalized XML(PNX)レコードを作製します(FRBR対応!)。このPNXを元に重複除去や元データの拡張(amazonから表紙画像をもらってくるとか)を行い、Primoのインデックスとなります。ハーベスト対象にはDigiTool、Dspace、Fedoraといった機関リポジトリにも対応とのこと。

従来のMetaLibのようなメタサーチでも検索結果の重複除去などの機能はありましたが、Primoではデータをハーベストしてレコードの正規化までしてしまうのですね。

ハーベストできないリソースについては最適化もできないので従来のメタサーチをするしかないのか、と考えてしまいましたが、

  • レスポンスが早くない
  • ランキングやファセットの精度が上がらない

ことを解消するため、メタサーチの際に「Primo仕様の検索式を投げ、PNXでデータを返戻」するための仕様を公開しているそうです。(内容を詳しく質問したら「EL Commonsにサンプルコードがあるから見て」とのことでした。)

Primoは現在3500万レコードまでをサポート、160以上の顧客があり、現在は対応言語の拡大を図っているそうです。(日本語は対応準備中、でも日本語カタログは配られていました。)

AquaBrowserなど競合他社製品との相違点を質問しましたが、「詳細は承知していない」ながらも「APIやSDK公開など、OpenPlatformである点は大きく異なる」としていました。
確かに、EL Commonsではユーザが作った拡張アプリ、ユーティリティなどがあり、「ユーザ参加」型の開発姿勢が伺えます。(でも、それはHi-endな大学図書館等に優秀なSystem Librarianがいて、それで始めてできる技だよなあ。)

コーヒーブレイクの後はいよいよbXについて。こちらは逐次通訳。

  • ユーザがどのようなコンテンツを作成したか、またユーザが何をしたかがフォローされ、重要視されつつある。
  • 結果、図書館の利用データに価値が生じた。正に金の鉱脈ともいえる。
  • インパクトファクターでの評価には分野の限定やタイムラグなどの問題がある。
  • 学術論文の電子化は、単にPDFやHTMLに媒体が変わっただけでなく、メディアの多様化ももたらした。
  • しかし、論文の評価手法は引用分析など、紙ペースの手法のまま。
  • そこでレコメンド。
  • 図書館の中で必要性が生まれたが、EBCSO、LibraryThingsなど今までのシステムではタイトルを表示する程度の機能しか持たない。
  • 学術分野に求められているのは「論文」レベルのレコメンド。
    • 「人気」に基づくものではなく、利用状況の分析に立脚したもの。

このあたりを背景に、Ex LibrisではLos Alamos研と独占的契約を結び、2007年からbXの研究開発に着手。

  • ネットワーク化された研究コミュニティの力を利用して、論文の利用に応じたレコメンデーションを行う。
  • 複数の図書館での利用状況を統合、これを分析する。
  • この研究はLos Alamos研の Johan Bollen と Herbert Van de Somple (発表者注: OAI-PMHの作成などに貢献)によって行われた。
  • この研究の詳細は2人による次の論文を参照されたい。 Johan Bollen, Herbert Van de Somple. "An architecture for aggregation and analysis of scholarly usage data."  http://public.lanl.gov/herbertv/papers/jcdl06_accepted_version.pdf (last access: 2009-04-20)
  • 1億件以上(!)のSFXのログデータを収集、これを元に分析を行った。
  • リンクリゾルバはOpenURLを介して接続された各種のリソース間のハブと言える。
  • これを「OpenURL Linking Layer」と「Resource Layer」の2階層と捉える。
  • OpenURLは2001年にSFXが実装、2009年現在では3000以上(うち1800以上はSFX)のリンクリゾルバのみならず多くの学術情報同士のリンキングに利用されている。
  • リンクリゾルバがリソース間のハブとなっている。
  • bXはこのアーキテクチャの上に構築されている。
  • 複数の「OpenURL Linking Layer」(=大量のSFXのデータ)をOAI-PMHで吸い上げる「Recommender Service Layer」を構築。ここにbXが位置する。
  • データ取得は、欧米の各大学より協力を得た。最大の開発パートナーはLos Alamos研。

bXのデモ。SFX上に、通常の電子ジャーナルなどのリンク解決だけでなく、レコメンドする論文を表示。例では、EBSCOからSFXへリンク、そこから別のアグリゲータの論文がレコメンドされ参照する様子が紹介されました。

また、bXが単にSFXと共に利用できるだけでなく、Open Interfaceを持ち

  • OpenURL/XML
  • OpenURL/RSS
  • OpenURL/ATOM

など各種のシステムから呼び出せる、という事例も。XML Responsの例は資料にあったのですが、字が細かくてかろうじて判別…困難。
例えば、MetaLibのXML APIである x-server の実装、xerxes 上にbXのレコメンドを表示させる例なども紹介されていました。(後で聞いたら「It's so easy. Like SFX.」といっていた。うちもやろう。)

実際の計算というか分析方法は、大まかには次のとおり。

  • SFX経由でアクセスした、同じユーザの一定時間の検索行動を取得
  • その行動の中でアクセスした論文を、順や回数などの要素で重み付け(クリック回数などの閾値は設定しているらしい)。
  • 別にユーザに対して、先に利用された論文があれば同じ検索行動内で取得した論文をレコメンド対象として提示。
  • 詳しくは先の論文に手法を載せてあるので参照されたい。

意外とシンプル。しかし、バックにあるのは一億件のデータ。正確度はどうなのだろう?
質疑応答でこのあたりについても触れられていました。

  • どうレコメンドするか、例えば自組織のデータを教師データとするか、bX全体のデータを利用するかなどの設定はできるようにしてある。
  • 全ての分野をカバーしてはいない。論文のカバー率は20%強。この中からレコメンドすることになるが、参加館が増えればデータも増えるだろう。
  • レコメンドデータの評価についても研究を進めている。
  • bXの利用については、SFX他Ex Librisの製品導入が前提ではない。また、SFX利用データの提供の義務も考えていない。
  • プライバシー保護には特に配慮している。各所のSFXから収集したデータからIPアドレス等は削除、bX内では暗号化されており外部から元データの出所を知るすべはない。
  • 規模の大小、分野に特化しているか否かで適切なレコメンドができるかどうかは変わってくる。(具体的な値については触れていませんでした。)
  • 今後は、論文のトレンド分析やユーザの行動追跡にも利用できるのではないか。実際に、恣意的に行われることがある引用の分析より実態に近いデータを得られている。

bX。Launchは来月とのこと。日本での発売の詳細についてはアナウンスがありませんでしたが、期待して待つことにします。

以下個人的な雑感とかなんとか。

そもそもうちはEx Librisが仰る所の「Hi-end」なユーザなのだろうか。泡沫ユーザな気もしないでもなくはない。ちょっとはユーザコミュニティに貢献しないと。

SFXのログデータを分析すればレコメンドも……と軽く考えていましたが、2年も前に手をつけられていたのですね。それはそうか。複数のSFXのデータの統合までは考えていませんでした。でも計算はどうやって。イスラエルの片隅のデータセンターでクラスタマシンが唸りをあげているのでしょうか。

リンクリゾルバは情報のハブ。確かにそのとおり。OpenURL様様です。そして、そのハブに流れる情報を全て吸い上げようとするbX。レコメンドという利便と引き換えになるものは何か。タダで質の高い情報は得られない。標準化は協調なのか連携なのか独占なのか。泡沫情報プロバイダはオリジナリティとアイデンティティをどう保つか。昨今のPORTAやJ-Globalやその他もろもろの動きを見ているとそう感じます。


と、長々書いていたらARGが配信される時間になりました。今週は[ARG-371]です。どれどれ…。

なお、まだ情報が出ていないが、6月上旬に開催される国立情報学研究所(NII)のオープンハウスにも参加する。

・国立情報学研究所(NII) - オープンハウス
http://www.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&page_id=317

あ、今年もあるんだ。オープンハウス。リンク先を開こう。今年もコンテンツ系のワークショップも…あああああ!これは!!

6月12日(金) [特別会議室] 次世代学術コンテンツ基盤ワークショップ
11:00〜12:30 「電子リソースアーカイブの展望」
14:00〜16:00 「ひらめき、ひろがる、知の可能性(かたち) - CiNiiリニューアルとウェブAPIコンテスト -」

あう、「ウェブAPIコンテスト」ってなにい? どういうこと?

そうか、その手があったのか…API普及のために…コンテスト…うちがやっても商品出せないぞ…いやチャレンジするとかしないとか考えようよ自分。早くOPAC直して。


[第2回] 図書館は視えなくなるか? ―データベースからアーキテクチャへ

今日はイベントのお知らせです。前回は早々に満席になった、と聞いておりますので、お申し込みはお早めに

イベント情報掲載ページ(予約フォームへのリンクあり): http://www.d-labo-midtown.com/d-log.php

までどうぞ。

今度は山形浩生さんがゲストです。毎回ゲストが豪華で、今回も気になります。図書館退屈男も行けるといいのですが。

図書館は視えなくなるか? ―データベースからアーキテクチャへ
国立国会図書館長=情報工学者・長尾真のシリーズ対談

現・国立国会図書館長である情報工学者の長尾真氏がホスト役を務め、毎回異なるゲストを招いてのシリーズ対談を行ないます。隔月・全4回の開催を予定しています。なお、会場であるスルガ銀行ミッドタウン支店内のコミュニケーションスペース「d-labo」の空間デザインとコンテンツディレクションを担当した李明喜氏がファシリテーターを務めます。


これまで本という形を与えられていた情報は、インターネットをはじめとする様々な媒体の間を相互に行き来するようになりました。それによって人々と情報との付き合い方は、社会の中に特定の形の情報を揃えたデータベースがあり、そこへ人々がアクセスするという形から、言わば様々な形の情報が人々を環境―アーキテクチャとして取り囲むように変化してきています。情報との付き合い方の変化は人々が情報を利用してできることの変化でもあります。これまでデータベースとして機能してきた図書館も勿論、この変化の中にいます。これからの図書館はどんな形で、どんな新しい「できること」を提供できるのでしょうか。本シリーズでは、現・国立国会図書館長である情報工学者の長尾真氏が、毎回ゲストと対談する中で、その変化の特徴や可能性を探ります。

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シリーズ第2回: 長尾真 × 山形浩生(評論家/翻訳家)
「もう、『本』や『図書館』はいらない!?」


情報テクノロジー/情報環境の変化は人々の情報との関わり方を劇的に変え続けているようにみえます。
例えば「読む」とか「書く」という行為も情報環境の変化によってさまざまな意味を持つようになっています。
そのような環境の中、「本」は「図書館」はどうなっていくのでしょうか?
もしかすると「本」や「図書館」はその重量を失い視えなくなっていくのでしょうか?
早くから電子図書館の実現に取り組んできた国立国会図書館長で情報工学者の長尾真氏と
プロジェクト杉田玄白の主宰者でオープンソース活動にも精力的に参加してきた
評論家、翻訳家の山形浩生氏との「本」や「図書館」の可能性と不可能性を考えるトークセッション!

日時: 2009/5/11(月) 19:00-
会場・主催: d-labo/dream laboratory by SURUGA bank
東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー7F
TEL: 03-5411-2363
ホームページ: http://www.d-labo-midtown.com

会場の都合上、予約いただいた方のご参加を優先させていただく場合がございますので、お早めのご予約をお願いいたします。
また、席数に限りがございます。場合によっては立ち見とさせていただく可能性がございますが、ご了承ください。

予約メール: [email protected]
イベント情報掲載ページ(予約フォームへのリンクあり): http://www.d-labo-midtown.com/d-log.php
予約受付開始日: 2009/4/21(火)

山形浩生(やまがた・ひろお)プロフィール:
一九六四年東京生まれ。東京大学都市工学科修士課程およびMIT不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務、途上国援助業務のかたわら、小説、経済、建築、ネット文化など広範な分野での翻訳および各種の雑文書きに手を染める。著書に『たかがバロウズ本』(大村書店)、『新教養としてのコンピュータ』(アスキー)、『新教養主義宣言』(河出文庫)など。主な訳書にバロウズ『ソフトマシーン』(河出文庫)クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』(ちくま学芸文庫)、レッシグ『CODE』(翔泳社)ほか多数。ネット上のフリー翻訳プロジェクトであるプロジェクト杉田玄白主宰。

茗荷谷に図書館員の夜明けを見た

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(写真はとあるビルの案内板です。TRCと言えばやっぱり「TRC データ部ログ」。「あ、あのデータ部だ!」と一人興奮して写真を撮ってしまいました。)

TRC主催の「ライブラリー・アカデミー」第3学期のうち、「インターネット時代のライブラリアン2008」を、Next-Lでおなじみ田辺さんとともに講師の岡本@ARGさんのご厚意により聴講させていただきました。

1月21日(水)のテーマ。「理想のOPAC」についてディスカッション。

ただのディスカッションではありません。前回の講義を受けて、以下をまとめblogで公開する、という事前課題が課されています。

  1. 事例紹介(1)(2)(3)から最低限1つを利用し、その使用感をまとめる。
  2. 新しいOPAC模索に関する文献リストをまとめる。
  3. その上で、理想OPACについて自分の考えをまとめる。

また、講師-受講生間のメーリングリストもあるそうで、課題はこちらに提出。まとめはblogで公開、というのは新しいですね。受講生同士、また読んだ方からのフィードバックや議論の場にもなるというものです。そして提出やblogの更新がないと容赦なく落第。厳しい。ARGでも以下のように触れられています。

残念ながら、第2回の課題を終了できなかった方が数名います。きちんと課題をこなした方が当日インフルエンザのため欠席でしたので、その方を救済する都合上、一回だけ一律に救済措置を講じます。

次の日曜日、つまり2009年1月25日いっぱい、課題の再提出に応じます。なお、課題の提出完了はメーリングリストへの所定の形式での投稿をもって完了とします。また、他の方々の課題を読める環境でレポートを書く以上、当然それらを上回る内容を期待します。
(岡本真. "[編集日誌][執筆・講演][ライブラリー・アカデミー]2009-01-21(Wed): ライブラリー・アカデミー3回目講義「OPAC再考」演習". ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版. 2009-01-21. http://d.hatena.ne.jp/arg/20090123/1232665285, (参照 2009-01-28))

当日の議論を簡単にまとめてみました。

  • インターフェースをパーソナライズできれば誰でも使いやすいのでは。設定情報は利用者カードに保存。
  • 検索エンジン同様のシステム(スペルチェック、検索語候補表示、類義語検索)がほしい。
  • 子供用のOPACがほしい。検索画面は子供向けでも、結果表示は通常と同じOPACも存在する。ゲームなどが組み込まれていれば飽きないのでは。
  • メタサーチにはびっくりした。もっと他のシステムとは連携できないものか。
  • ハングルなど外国語対応も考えたい。
  • そもそも「OPAC」という語がわかりにくいのでは。

この他、利用者履歴の活用についての事例や対応、考え方などについても議論が及び、あっという間の2時間でした。

当日ご紹介した、神戸の図書館大会(全国図書館大会 第94回(平成20年度)兵庫大会 第7分科会 図書館の自由)の感想として利用者履歴を活用したシステムの要件整理については、「「Web2.0時代」における図書館の自由 -平成20年度第94回全国図書館大会兵庫大会・第7分科会「図書館の自由」記録-」からダウンロードできます。PDFファイルです。

図書館退屈男は専門図書館な人なので、公共図書館で求められるOPACがどのようなものか、またどんな問題点を抱えているのかなどの声を普段とは異なる視点で聞くことができ、参考となりました。

また、当日のディスカッションの中で、3月に公開予定の新システムに反映できそうな点などが見つかり、大いに刺激を受けてきました。準備が間に合えば受講生の皆様にも先行してご利用いただけるかもしれません。

類義語検索は、実は当方のOPACでは詳細検索で実装しています。OPACに求められるものが「特定の本をピンポイントに探せる」のか「『こんな本』という漠然とした要求から本が見つかる」なのかによっても、これらの機能の有効性は変わってきます。そのためか「どのような場合に類義語検索を有効にすればメリットがあるのか」を説明しないちょっと中途半端な検索画面になってしまっています。もっと使うメリットや機能の目的を明確にするなど、改良の余地がありますね。

その他、このセミナー全体が「受講生の自発的情報発信」を前提としたものであることと、それに追随している受講生の様子が驚きでした。情報は発信するところに集まります。(このblogもそうだと言えるかもしれません。)その意味で、自らblogを開設し情報発信を約3ヶ月続ける、ということは、課程の修了以外にも得るものがあると思います。ぜひ講義が終わっても、情報発信を続けてほしいです。(月に数回しか更新しないこのblogで言っても説得力ナシですね。すみません。)

「すべての図書館員はblogを書くべきだ」などとは決して思いません。blogはひとつの手段ですし。ですが、「情報発信の主体になる」という意識が多くの図書館員の身につけば、何かサービスも変わるかもしれません。この講義からそれが生まれるのではないか。そんな可能性を感じたディスカッションでした。

以下は受講生各位のblogです。トラックバック対応(リンクがないと成功しない場合があるので)をかねて掲載します。


TRCデータ部の方にお会いできました! 思わず「いつもblog読んでますよ~」と言ってしまいました。だっていつも言われてばっかりなので、自分でも言ってみたかったのです。


Twitterを始めてみました。時々何かつぶやいています。米国のLibrary of Congressでも公式Twitter開始カレントアウェアネス-Rで報じられていますが、チャットとblogの中間のようなこのサービス、ゆるいコミュニケーションや速報的なツールとして広まるのでしょうか。

それにしても、アメリカの図書館はこの手のサービスを図書館のサービスとして取り込むのが上手だと感じます。Library of Congressでは、画像共有サービス Flicker を活用して所蔵する写真を提供していたりします。SEOやらなにならを駆使して何とかして自館のWebサイトに利用者を引っ張ってきてからサービスを提供するのではなく、すでに多くのユーザを獲得している外部のサービス上で自館の橋頭堡を確保、そこから自館サービスへの導線を築く。積極的に「前へ出てゆく」サービス展開が求められているのでしょうか。(でもSecond Lifeに行ってまで仕事はしたくない図書館退屈男。)


図書館は視えなくなるか? ―データベースからアーキテクチャへ

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今日はイベントの告知をお送りします。

「d-labo」はまだ訪れたことがないのですが、「銀行とは思えない」空間らしいですね。
シリーズ対談ということで、今後も期待できそうです。
(写真は12月に
ミッドタウンで撮影したものです

図書館は視えなくなるか? ―データベースからアーキテクチャへ
国立国会図書館長=情報工学者・長尾真のシリーズ対談


現・国立国会図書館長である情報工学者の長尾真氏がホスト役を務め、毎回異なるゲストを招いてのシリーズ対談を行ないます。隔月・全4回の開催を予定しています。なお、会場であるスルガ銀行ミッドタウン支店内のコミュニケーションスペース「d-labo」の空間デザインとコンテンツディレクションを担当した李明喜氏がファシリテーターを務めます。

これまで本という形を与えられていた情報は、インターネットをはじめとする様々な媒体の間を相互に行き来するようになりました。それによって人々と情報との付き合い方は、社会の中に特定の形の情報を揃えたデータベースがあり、そこへ人々がアクセスするという形から、言わば様々な形の情報が人々を環境―アーキテクチャとして取り囲むように変化してきています。情報との付き合い方の変化は人々が情報を利用してできることの変化でもあります。これまでデータベースとして機能してきた図書館も勿論、この変化の中にいます。これからの図書館はどんな形で、どんな新しい「できること」を提供できるのでしょうか。本シリーズでは、現・国立国会図書館長である情報工学者の長尾真氏が、毎回ゲストと対談する中で、その変化の特徴や可能性を探ります。

シリーズ第1回: 長尾真 × 池上高志(複雑系研究者/東京大学総合文化研究科教授)

国立国会図書館長を務める情報工学者の長尾真と複雑系研究者の池上高志による予測不能なトークセッション!
「生命にとって知るとは/わかるとは」「AI(人工知能)とAL(人工生命)と」「自律進化するデータベースはつくれるか」など、生命を捉えることから、これからの知のアーカイブについて迫ります。

日時: 2009/2/12(木) 19:00-
会場・主催: d-labo/dream laboratory by SURUGA bank
東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー7F
TEL: 03-5411-2363
ホームページ: http://www.d-labo-midtown.com

会場の都合上、予約いただいた方のご参加を優先させていただく場合がございますので、お早めのご予約をお願いいたします。
また、席数に限りがございます。場合によっては立ち見とさせていただく可能性がございますが、ご了承ください。

予約メール: [email protected]
イベント情報掲載ページ(予約フォームへのリンクあり): http://www.d-labo-midtown.com/d-log.php
予約受付開始日: 2009/1/24(土)

池上高志プロフィール:

専門は複雑系の数理/人工生命。複雑系は、要素還元的では理解できない問題に対し構成論的なアプローチで迫ろうというものであり、その対象はおもに生物学、意識の問題である。最近は油滴を水溶液中にたらした時に観察される自発的な油滴の運動と、目的論的な運動の発生を実験と理論の両方から研究している。

また、知覚における主観的な時間の構造について、おもにコンピュータシミュレーションをもとに考察している。この研究の問題意識は、原生命的な現象と、人のみが持つと思われがちな心や意識をつなげて考えよう、というものである。この考えを追求した最初の著作に、『動きが生命をつくる』(青土社2007)がある。

このほかにも、アーティストの渋谷慶一郎氏と共同で、第三項音楽という活動を展開。フーリエ的な思想に基づかない新しいサウンドアートを追求している。その代表作に2006年夏に発表した立体音響仮想サウンドアートシステム、filmachine(フィルマシーン)がある。
著書としては『動きが生命をつくる』のほかに『複雑系の進化的シナリオ』(金子邦彦との共著、朝倉書店 1998)など。
URL: http://sacral.c.u-tokyo.ac.jp/~ikeg