セミナー、研究会

第10回図書館総合展(3日目)

 図書館総合展も3日目。相変わらず午前中は人影薄く。
他社ブースを見て回るも、「出展者」の名札には声もかからず。

お昼はブース裏の売店でお弁当を購入。3日間連続。良心的価格がありがたいものの、ちょっとさみしい。

3日目はフォーラム等参加がメインで、まずはProject Next-Lのセッション、「日本初のオープンソース図書館システムでワンパーソン図書館を動かす-田辺がいなくても、システムは動くのか?-」。
本人が知らないところで開発者名入りのサブタイトルが付いているあたりがアナーキーかつバザール型開発の醍醐味(すごく違う)。

…受付に行列ができている!すごい人気だ!
お手伝いもあるのでささっと場内へ。で、某先生から「PCある?」と聞かれる。「CD-Rを焼くのが間に合わなくて」「印刷したメディアはあるけど焼けてない」ThinkPadはあるけれど、CD-Rドライブなんて今日は持ってない。「そうだよねえ」いや、普通そうですよ、先生。

発表(という名の原田先生のマイク不要ハイテンションアジテーション)と(田辺さんのcoolな)デモ。動と静。ThinkPadとMacBook。何か対照的。

INFOPRO2005で原田先生と出会い「何か」に巻き込まれ、2006年11月にProject Next-Lが立ち上がり2年。ようやくプロトタイプが配布できるところまで来るとは。感慨深く発表を拝聴する。願うだけでは叶わない。奇跡は待っても起こらない。「物」があれば試して議論もできるというもの。CD-Rを受け取った方はぜひご意見を。公式サイトですぐに焼ける.iso形式ファイルも配布中です。次は3月に都内で発表予定です。

セッション終了後、「ず・ぼん」でおなじみポット出版の編集長氏からお声をかけていただく。名刺交換。2日目のフォーラムもご聴講いただいたとのことで「一番面白かった」とお褒めの言葉を頂く。フィードバックをいただけるのはありがたい。聞けば、版元ドットコムでも書誌情報の無償提供を行っているのこと。志は同じ。連携してゆきたいところ。

続いては第2回ARGカフェ&ARGフェスト。配布/PR用に弊社ノベルディ(初回限定生産再販なし)を両手に抱え、待ち受けるはライトニングトーク。持ち時間わずかに5分。詳細はid:min2-flyさんのblogをどうぞ

発表の中では、「日本の大学院からのILL申し込みで困ること」(グッド和代さん/ピッツバーグ大学附属図書館)で触れられたRAPIDILLがスゴイ。元は台風で壊滅的被害(写真あり)を受けたコロラド州立大図書館が、蔵書を復活させるよりILLでフォローするために、Webでの受付とPDFでの返送システムを整備、これを相互利用してもらうことで自館も他の図書館も迅速なILLが実現、という仕組み。思わずお話を伺いながらEM-OMEで http://rapidill.org/ にアクセス。"Average Turn Around Time (Days): 0.62"ってどういうことよ。半日ちょっとで文献が取れるってこと?!。シビレル。日本でもこういうシステムがほしい。ていうか電子化した論文を持っているところは入るべきなのか?食指がああああ。

ところでみなさんちゃんと5分で話がまとまっている。自分…原稿すらない。全くのアドリブ。緊張。

今日のネタは「大学院に入ってみました」。4分30秒分を一行でまとめると以下の通り。

査読つき論文をとっとと書かないといけないのに、忙しいです。挫けそうです。力をください!

視界には岡本さんの持つストップウォッチ。04:30の数字が見えた。今だ!キメ台詞を!

みんな、持ってって! 銀河の果てまで! (ノベルディ的に)

(と言おうと思いましたが連れ合いからダメ出しがあり自重。でもつくば系はてなー各位には大ウケ。それみろ。)
と普通に初回限定生産ノベルディを「持っていって!ぜひぜひ!お一人何個でも!」とアピール。でちょうど5分。ありがとうございました~。

ライトニングトーク終了後は自社ブースへ取って返し、最後のご案内と後片付け。結局、配布できた資料は昨年比△50%。人の流れが悪かったのが敗因か。

18時。閉場。蛍の光。拍手。そして自社ブースのブレーカを落とす。今年もありがとう。

感傷に浸る暇もなく、次はARGフェスト会場へ移動。1次会はイングリッシュパブ。ギネスおいしいよギネス。
直面する課題を赤裸々に語ったライトニングトークはインパクトがあったようで、「実は私も大学院で」という体験をたくさん伺うことができ、励みになりました。ありがとうございました。

第2回ARGカフェ&ARGフェストの詳細はARGサイトとまとめリンクでお楽しみください。


では、3日間を総括的に。

前年比でフォーラムは倍、展示スペースも倍、会場は分散、でも来場者は数%増ではフォーラムに人がとられてしまい、展示に人が来ないのもむべなるかな。なんとかならかなったのでしょうか。動員が悪いと翌年の出展を見直し、と言われても仕方がありません。

年々知り合いが増え、受身の情報収集だけではなく図書館と関係の人々が集まったり情報交換ができる場所に図書館総合展は変化しているように思います。3日間で2万3千人と動員数だけ見れば、すでに図書館大会(2日間、約1900人)を凌駕しているわけですし。

また、大学など図書館関係の出展や、今年から始まったポスターセッション(来年もありますよ)もこの流れを加速するものでしょう。

一方で、弊社ブースに図書館退屈男目当てに来ていただける方も多く、不在などで失礼がございましたら平にお許しください。本当は、来ていただいた方と今度は弊社スタッフとを繋げて行かないと、と思うのです。もっと広がりを持って、情報と人脈は共有しないと。弊社は自分だけ出回っているわけではないのです。


第10回図書館総合展(2日目)

特別じゃない、どこにでもいる普通の図書館員。それが図書館退屈男。

さて、図書館総合展2日目は午前のフォーラム、知的資源イニシアティブ主催の「もうOPACなんていらない!? -Google時代の文献検索と目録サービス」で発表のほか、午後はブース。

午前のフォーラムでは、主に「OPACはどうなるのか?どうすべきか?」についてそれぞれの立場から自由に論じる、ということで、大雑把に発表内容をまとめてみた。

○高野先生(国立情報学研究所)「『連想する場』としての図書館 -情報を発想力に変える空間-」

  • ネット上の大きな情報とどう対峙するかというテーマは、膨大な資料を有する図書館においても同じ。そのためのツールがOPACである。
  • 「専門知識を要求しない情報サービス」のために、連想検索という手法を用いている。検索結果の中の正解や結果を要約した関連語から再検索するなど、利用者からのフィードバックを得つつ精度を上げてゆく。
  • 「連想の場」としての図書館レファレンスを実現したい。例えば「想(IMAGINE)」では、本の情報と本以外の情報とを関連付けるほか、本以外で得た情報を本の情報に関連付けている。分散管理されている多数の情報源を動的に融合し、主体的な情報収集と発見を支援する。
  • OPACはディレクトリサービスのひとつであるが、時代に合わせて変化してゆくべき。新書マップなどの試みはその変化を指向している。

○[図書館退屈男] 「OPACの使われ方を変革する2つの方法」

  • 目録にない情報は検索できない。現在のOPACは「在庫管理システム」。
  • OPACを変革する2つの方法
    • インターネット上のデータ群と連携、これを利用する。
      • 例えば、国立国会図書館のPORTAはシステム間の連携用インターフェース(API)を提供している。NIIもCiNiiで実装しようとしている。amazonはこの機能があるのでオンライン書店でありながら「書誌データプロバイダ」ともなっている。
    • 他のシステム、インターフェースから利用しやすくする
      • 「利用者は必ず図書館のホームページから来る」という発想は捨てよう。
      • igoogleやFirefox、IE7のプラグインからでもOPACは検索できる。
  • 書誌データにはPermalink(固定リンク)を割り当てよう。URLが固定されるので、リンクが容易になるほかGoogleなどの収集ロボットに拾われ、検索される可能性が高まる。
  • 異なるインターフェースから検索しても、最終的には自館のOPACの情報に行き着く。これが目指すところ。

○千野信浩さん(週刊ダイヤモンド編集部記者) 「棚の力」

  • 棚の「か」じゃありませんよ、「ちから」です。(笑)
  • 図書館で調べることは「何を調べるべきか」「調べるべき何かはどこだ」の2つ。
  • 出口、テーマが「まったくわからない」場合は図書館に行って棚、背表紙をみてさまざまな資料を発見しそこから発想をする。
  • OPACでの検索では書誌情報が得られるだけではない。タイトルから関連するキーワードを発見し、そこから連想的に違う検索後が見えてくることもある。
  • ある程度テーマが見えていればWebCatPlusの連想検索でで深く掘り下げる検索をする。
  • 一定程度の規模の図書館の方が情報が絞られている分かえって探しやすい。
  • amazonと宅急便の発展でオンラインからOutreachサービスが可能になった。図書館も変革を迫られている。ここにに重心を置くべき。
  • 棚作りは重要。たとえば闘病記を一箇所に集めるなど、内容で資料を集約できる。OPACはそこを支援するものだと考える。

図書館的なキーワードを使えば、高野先生や千野さんのアプローチは「ブラウジング」と言い換えることもできる。例えば背表紙が表示できる新書マップからは多くのヒントが得られるだろう。フロアからも同様に「背表紙から得られる情報は大きいが、現在のOPACではそれができない。」という指摘もなされた。
この点については、leva, "ウェブ上でよく出くわすあの光景って本当に「あるべき姿」なの?", Liner Notes. 2008-11-20. にて、「本の大きさ、厚さ、書誌形態などの情報は本を選ぶ上で結構重要な情報で、そういう情報を半ば無意識的に本棚から得ている」としてこれら形態に関する情報をビジュアルに表示することで仮想的に書籍の実体を表現する方法が提案されている。

出版社の方からは「自然科学系の参考図書では参考文献リストが重要。これらがリンクされればより価値の高いサービスになるのでは。」との意見もあり、高野先生からも「参考文献は資料のレコメンデーションにおいても重要な情報。」とのコメントがあった。個人的には、参考図書とあわせて10%割り増しでもよいので目次や引用文献リストのテキストデータを売ってもらえればOPACに放り込めるので大変便利なのですが。今度提案してみよう。

お二人の発言が「OPAC内の情報をどうやって利用者のほしい情報に近づけるか」についてのヒントになっているのに比較し、図書館退屈男からは「OPAC内の情報をどうやってよりリッチにし、かつ多くの利用者に提供できるのか」という提案になっているなど、微妙にベクトルが違う発表になってしまった感が。「空気読め」とまではいかないものの、もうちょっと利用者側のイメージが見えるような内容にすればよかったのかなと反省してみたり。(資料の公開については事務局と調整中です。)それでも、何かのお役に立っていればうれしいです。ぜひご感想などをお寄せください。

午後の自社ブース。雨のせいかそれほど来場者は多くないものの、さすがにフォーラムの間には接客に追われる。
その中でも、自分の母校の学生さんに出会えたことがちょっと衝撃。というか感動。司書課程を取っているとはいえ、この雨の中図書館総合展に来て情報収集しようという姿勢、応援したくなりました。

その他、午前のフォーラムの発表のせいか、ご指名をいただくことも何件があり、訪ねていただけることをいつもありがたく思っております。

早いもので図書館総合展も残りはもうあと1日。Next-LとARGカフェに参加することがメインになりそうですが、午前中は展示ブースも見て回りたいなあ。


INFOPRO2008で発表してきました

11/13-14に日本科学未来館で開催された第5回情報プロフェッショナルシンポジウム(INFOPRO2008)で発表してきました。今回のお題は「リンクリゾルバの多面的活用」です。

INFOPROへでの発表は2005年以来。今思えば、あの時の発表と「情報管理」への記事掲載その後の数年を方向付けたといっても過言ではありません。

予稿とスライドは追ってJ-STAGEで公開される予定ですが、発表内容は主に「Webブラウザからのリンクリゾルバの利用」ということで、FirefoxプラグインLibXからの利用、またRSSリーダにDOIなど書誌情報入りのfeedを解釈させてOpenURLを生成、リンクリゾルバにリンクさせる取り組みについて取り上げたほか、自機関DBからの他機関のリンクリゾルバへのリンク対応などについてご紹介しました。

とはいえ、リンクリゾルバを利用している機関はまだまだ少ないようで、同じ日のご発表、黒沢俊典, 松田真美, "医中誌WebからOPAC, リンクリゾルバへのリンクの現況"によれば、医中誌Webからの外部リンク設定345件のうちリンクリゾルバは64件(16%)と、OPACからのリンク(217件, 63%)と比較するとまだまだ小数に留まっています。正確な数値は持ち合わせていませんが、おそらく国内全体でも同じくらいの割合なのかもしれません。

となると、発表も絵に描いた餅なのかも、と不安に思っていましたが、当日夜に別のblog(高久雅夫, "文献情報ページにCOinSを埋め込んだ ", まさおのChangeLogメモ. 2008-11-15)で、「発表にインスパイアされて」として、COinS(<p><p>OpenURL ContextObject in SPAN (COinS)</p></p>ContextObjects in Spans: SPANタグにOpenURLを記述してHTMLに埋め込む手法)のメタデータ情報を付与したサンプルを発見しました。COinSについては見過ごしていたのですが、こういう利用法もあるのかと勉強させていただきました。LibXはCOinSにも対応しているので、さらに応用範囲が広がりそうです。

ともあれ、自分の発表が誰かの発想の種になったことは嬉しいものです。


今年も図書館総合展にGo

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溢れる想いは流線型、図書館退屈男です。

今年も図書館総合展の季節がやってまいりました。そして例年通り前日準備を含め4日間通して横浜にいます。弊社の出展も4年目になりました。会場出口付近、NIIさんのおとなりで営業しますのでぜひお立ち寄りください。

今年は自社ブースでのご案内もさることながら、フォーラムも盛りだくさんなので会議センターと行ったり来たりになりそうです。

とりあえず予定です。

…書き出してみたら例年にも増してヘビーなスケジューリングであることに気づきました。

なお、「もそもそと苦言を呈したい」など図書館退屈男の中の人目当てで弊社ブースへ来場ご希望の方はコメント欄等にてお知らせください。できるだけそのお時間を空けてお待ちしております。


第25回医学情報サービス研究大会でPromotional materialの謎が解けた

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 これ、なんでしょう。なんていう名前のものでしょう。

1月にOvidから広報セット一式と一緒に頂いた"A fun Desktop Surprise!"なこれ。医学情報サービス研究大会で企業展示をされていたOvidの方に聞いてみました。

図:「今日もブースにありましたけど、これ↑は結局なんだったんですか?」
Ovid:「『図書館退屈男』ですか?」
図:「え、ええ、あそこで紹介されていましたよね。(うわ、見られてたよう。)」
Ovid:「本社いわく、「自分で考えろ」ということでした。」
Ovid:「例えば、上司からいじめられた時に、これを「ぐにっ」としてみるとか…。」
図:「はあ。」
Ovid:「キャッチフレーズとかも和訳してみましたが、かえって解りにくいことがあって。」
図:「そうですよねー。」

ということで、自由な発想でお好きに粋に使うのがよさそうだ、ということがわかりました。

OvidSP、7月31日にバージョンアップ予定だそうです。(とまさに今プロダクトレビューで紹介がありました。)


第25回医学情報サービス研究大会(前日)

第25回医学情報サービス研究大会です。一年近くの準備期間を経てとうとう前日になりました。準備です。会場の設営やら机を運んだり「アヤムラサキ」(飲みたい方はシールラリーへGo)4ケースを運び込んだり。あれよあれよという間に、しゃれた案内板が立ち上がりグッズ販売所が設営され、「これおいも?!」の箱はアンケート回収箱に早代わり。

アントシアニン配合飲料が多いのは図書館退屈男が手を回し、研究所の産品をこんなところでも密かにPRしているからです。詳しく知りたい方は、会場へいらっしゃるか、"紫の誘惑 アントシアニンの機能性と紫品種". 食と農の扉. No.1, (2006). p4-10. をご参照ください。

さて、継続教育講演講師だった昨年と違い、今回の図書館退屈男の主なミッションは参加者対応ということで、休憩室でサーブするお茶菓子をまとめ買いしたり集合写真の交渉やとりまとめ(買ってください)などで済むかな、と思っていたら、

司会という大役が回ってきました。(思わず太字)

あまつさえ、「0.5倍速でちょうどいい」トークしかできず、喋りだしたら余計なネタで確実に10分は時間を超過しプログラムを狂わせタイムキーパーを恐怖のどん底に陥れる魔性の図書館退屈男が開会/閉会式の司会ですよ。いや本当に。(わかっているなら何とかしろ>自分。)

…これは「司会をちゃんと務めて時間配分を学べ」という諸先輩方の配慮ということでしょう。ありがたく承ります。アドリブはなしの方向で。そんな図書館退屈男を見学したいという方は、お近くの筑波大学春日キャンパス講堂までお越しください。iPhoneを買うよりぜんぜん安い参加費を受付で払うと、もれなくトートバックと予稿集が手に入る上、2日間のすべての講演(抄録あり)が聴講できます。ここでしか買えない各種グッズもあなたを魅了することでしょう。

では、会場で見かけましたら、お気軽にお声をかけてください。


国立情報学研究所の「本気度」を推し量る - 「CiNiiのいま、これから」

6月6日(金)にNIIで開催されましたワークショップ「CiNiiのいま、これから」に行ってきました。

「学術コミュニティに不可欠の共有財(コモンズ)」を標榜する国立情報学研究所(NII)の情報サービス、論文情報ナビゲータ「CiNii」。その決意が本気であること、2009年4月に現れる次期CiNiiは、付け焼刃のシステムとインターフェースの改善ではなく、各方面の専門家を動員し綿密な評価と最新のWeb技術を意識して設計されるものであること、それが読み取れるワークショップでした。

タイトルからは、「現状の報告と今後の展開」的なものを予想していましたが、現状はともかく、「これから」について具体的な内容は、資料でもプレゼンでもほとんど語られません。仕様書案の確定が近いと思われるので詳細を語れなかったのでは、と邪推しますが、ワークショップ全体を見渡すと「これから」の姿がおぼろげに見えてきます。

以下、例によって図書館退屈男がワークショップの資料とパネルディスカッションの聴講による予断だけで深読みして語ります。裏も言質も取っていないので、2009年4月の公開時に全く違っていたら一笑に付して頂きたく。
当日の具体的な質疑などは min2-fly,"CiNiiのいま、これから", かたつむりは電子図書館の夢をみるか. (http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20080606/1212774613) 2008-06-06. [last access:2008-06-07] を適宜ご参照ください。

  1. ユーザインターフェース、API
    • 客観的な評価に基づき、学術研究機関での一般的なユーザを意識したものとなる。
    • 現行のフィールド指定形のインターフェースは残る。あるいは複数用意される。
    • なんらかのWebAPIは用意される。

    篠原さん(ソシオメディア株式会社)のご発表の通り、ユーザインターフェースの設計とユーザビリティ評価を専門とする同社により、現行のCiNiiについてユーザビリティ評価が行われたことが明らかになりました。既知の経験則と比較しての分析(ヒューリスティック評価)と、被験者を使って実際にCiNiiを操作し発生した問題を抽出するユーザビリティテストが行われています。
    その結果、「『詳細検索』を使う傾向が多い」「本文にたどり着くための導線が混乱している」との問題点が明らかになり、

      「一般的なウェブシステムとしてのユーザビリティと、文献検索に特化されたアプリケーションツールとしての有用性の双方を確保することが必須」

    という改善策が提示されています。
    現在の情報サービス提供にあたって、民間企業なら当然実施する評価ですが(岡本さん(ARG)も、「(CiNiiは)民間情報事業者の目で見たら突っ込みどころは多い」と言及しています。)、図書館サービスの世界ではここまでの取り組みは稀ではないでしょうか。このような評価手法は実際のところ結構費用がかかるものなので、なおさらそう思います。

    そして「想定されるユーザ=被験者」は誰なのか。当然、システムを利用されることが想定される利用者層から被験者を抽出し、報告の段階では具体的な主体はぼかされることが多いですが、思わぬところで明らかになりました。パネルディスカッション前段のパネラー同士の質疑で、発表者の一人である清水さん(千葉大学法経学部)が被験者であったことを明らかにしました。これは想定外だったのでは。経済学を専門とする清水さんからは、自らの立場と周囲について「CiNiiについては素人、無知」「周囲も『しぃあぃえぬあぃあぃってなに?』(笑)ぐらいの知名度」などとご発表されています。同時に、「ヒット件数が多すぎる」「これ以上ヒット件数を増やす全文検索は不要。タイトルと抄録だけで内容がわからない論文はそもそも役に立たない。」と言及していることから、それなりに使い込んでいるヘビーユーザであることも想定されますが、「CiNiiをよく使う利用者層」の一人としてNIIが認知し、その利用方法を教師データとしてインターフェース設計を行っていることは想像に難しくありません。

    また、質疑応答で、「現行のフィールド指定形のインターフェースが学生への教育には有効。残してほしい。」と質問があり、これに対してはシステム設計を担当した大向さんから「残す。いろいろなパターンのインターフェースが考えられる。」と回答があったほか、大向さんのご発表やその他の質疑でも

    • 「ウェブAPIによるエコシステム作り」
    • 「APIは開発者向けに強化」
    • 「システム側では多様なインターフェースを作れるよう準備する。デフォルトから外れたユーザに対してはこれで対応する。」

    との発言がありました。また、岡本さんのご発表でも、RSS配信やAPIの実装についての提言もあり、開発者の存在を念頭に置いたWebAPIの実装は確定したと考えます。あとはどのようなメタデータ要素が返ってくるかだけが心配です。(独自拡張なDCとかだと受け取る側は泣けるので。)

  2. 他システムとの連携
  3. CiNiiはOpenURLに対応し、これによるデータの送受信が可能です。また、自館のOPACへのリンクも形成可能です。機関定額制契約機関では、この機能により検索結果に本文へのリンクがなくても自館で利用しているリンクリゾルバやOPACへのリンクを自動生成し、ここから全文を入手することができます。筑木さん(京大付属図書館)さんのご発表では、この機能を利用した京大のArchcleLinkerとのリンク、またCiNiiとGoogleの連携によりCiNiiの利用回数が増加しているとの報告がありました。また、質疑応答でも、「OPACとの連携機能を活用しているので、できるだけ仕様は変えないようお願いしたい。」との要望も出されています。弊社でも、CiNii同様にデータベースの検索結果から自機関のリンクリゾルバへのリンク機能を実装しベータテスト中ですが、ありがたいことにご好評をいただいています。これらのことから、OpenURLによるリンクリゾルバやOPACへの連携機能は継続されるでしょう。

    これも筑木さんのご発表からですが、5月にNIIからα版がリリースされた「研究者リゾルバー」と連携し、著者名の漢字表記とローマ字表記をリンクし和欧両方の論文をまとめて検査できるのでは、との提案がありました。また、大向さんのご発表に「情報源としての人」を重視し、「人→論文」「論文→人」の検索について言及があったことから見ると、研究者リゾルバーの存在は無視できません。研究者リゾルバー側のロードマップが見えないのでなんともいえませんが、何らかの形での「著者名での論文間のリンク機能」が考えられているのかもしれません。

  4. システム全般
    • システムアーキテクチャの刷新。
    • 更なるアクセス増に耐えうるシステム作り。

    最近、CiNiiが重いと思っていたのは自分だけではなく、実際に平日の負荷は高く、特に午後2時ごろはNII内でも「魔の時間帯」と呼ばれるほどの高負荷となっているそうです。対して土日休日と8月(夏休み)は利用が少ないとのことで、大学等が利用の主体であることが再確認できました。
    大向さんのご発表でも触れられていましたが、経年の負荷増の見極めは難しく、現システムについていえば、Googleとの連携以降の利用増もあり「利用がここまで増えるとは想定されていなかった」とのこと。かといって、最初から利用増を見越してシステムのスペックを上げておいても、使われなければ「無駄無駄」との文句も出るだろうしで苦労されていると思います。
    具体的な実装については言及はありませんでしたが、「アクセスが増えるならそれに耐えられるシステムを作る」という前向きな姿勢は感じられました。

さて、大きく3点に分けて妄想予想してみましたが、冒頭の「CiNiiは『学術コミュニティに不可欠の共有財(コモンズ)』になりつつあり、変えてゆかなければならない」との尾城学術コンテンツ課長の挨拶に始まり、

  • 利用者
  • 図書館員
  • 情報リソース専門家
  • 情報デザイン専門家
  • 新CiNii開発者

の発表は、一見それぞれの立場からの個別の意見要望に見えましたが、大きく見ると個々の発言はすべてが相互に関連し、「フムン、次のCiNiiはこう打って出るのだな」と想像するに十分な情報量でした。同時に、そう思わせてしまうコーディネートの巧みさに感心してしまいました。(単に釣られただけとも言う。実際は違っていたらどうしよう。)


質疑応答の最後には、「国家政策として、NDL、JST、NIIの3者がばらばらに動いている現状をどう見るのか。それぞれの特色を出したいのはわかるが、一般から見ればどれも同じに見える。仲が悪いのはわかる(会場:笑)が、日本語の論文を世界に発信するという観点から協働について考えてほしい。」との趣旨の発言がありました。
司会の阿蘓品さん(NII)からは「仰る事はよく解るが、正直ぐさっと…」と苦しそうでしたが、図書館退屈男はとりあえずは現状でもよいのでは、と考えます。

NDLはPORTAで異種デジタルアーカイブの統合検索とAPI実装を実現し、NIIもCiNiiのOpenURLによるリンクの実装とNACSIS-CATの構築、JSTではJOIの開発による論文識別のためのフレームワークの実現と「科学技術用語シソーラス」の維持管理とそれぞれ特色ある事業に取り組んでいます。NIIとJSTはターゲットが学術分野だけに重複の感は否めず。

これに対する回答は、篠原さんのご発表の中での

  • 「偏在から遍在へ」
  • 「情報をコントロールするのでは、情報をナビゲートするのが専門家の役割」
  • 「情報は囲い込めないし、囲い込むべきではない」

といった方向性ではないかと考えます。
それぞれの主体がAPI等の公開により、特定のポータルではなく「どこからでもどのデータベースを検索できる」環境になれば、それぞれの特色を生かしたサービス展開もより有効なものになるのでは、と夢想します。(JSTさんがシソーラスを公開してくれれば、とか。)

「経由はどこのポータルサイトでもリンクリゾルバでもgoogleでもかまわないので、最後は自館しかないコンテンツにアクセスしてもらう」が落とし所ではないかと。

情報サービスについて他者との連携が容易な環境は整いつつあります。あとは手を繋ぐだけでは? 
でも、それが難しいから問題点としてあちこちで指摘の声が上がるのですよね。それは期待の裏返しなのですが。


名刺交換のたびに、「blog見てますよ~」と言われるのに続き、最近では「見てない人なんていませんよ!」(本当?嬉しい!)と言われる割には更新が遅れ気味です。

5月は、

  • 次期図書館システム(09年3月リプレース)仕様書案作成。
  • 8月の国際会議(IAALD-AFITA-WCCA2008)のProceeding作成。口頭発表のほか、パネルディスカッション(New Developments in Information Systems for Accessing Agricultural Research(仮))にもRSSネタで登板予定。早期登録割引は6月10日締め切りです。

など山のような仕事を抱え込んで凌いでいました。なので「図書館戦争」も状況〇四以降は録画したまま見られていない挙句にこのblogも更新できず。


「猫の司書さん」に会ってきたよ!

「猫の司書さん」を創った! ~高校生が語る図書館システム~ 会場にて

京都まで「猫の司書さん」に会いに行きましたよ。帰宅したので詳細情報を追記します。大変お待たせしました。

すでに

などで既報ですが、第28回U-20プログラミング・コンテストで最優秀賞に選ばれた、岐阜県立東濃実業高校コンピュータ部が作成した図書館業務管理システム「猫の司書さん」の講演を聴いてきました。主催は大学図書館問題研究会京都支部。よくぞ岐阜から呼んで頂きました。(直接お電話で依頼し、快諾いただいたそうです。)

経済産業省の報道発表「平成19年度情報化月間(10月1日~31日)について」によれば受賞理由は以下の通り。(「第28回 U-20プログラミング・コンテスト入選作品の表彰 - 日本情報処理開発協会」が開けなかったのでとりあえず以下をご参照ください。)

図書館司書業務支援ソフト。メールによる督促状送付や予約図書の入庫連絡、メールマガジン発行機能など、学校司書と打合せをして司書業務に必要な機能をほぼすべて実装している。
業務分析や必要機能の事前リサーチなども綿密に行われ、ユーザインタフェースなど細かいところにも配慮が行き届いており、非の打ち所のない完成度の高い作品である。学校での実用に十分耐えうる図書館管理システムであり、今後は、管理ツール以外の新たな分野にも挑戦するなど、更なる成長を期待したい。

上記発表資料の3.の(別紙2)(PDF)より)

図書館業界でも、カレントアウェアネス-Rで紹介されたほか、

大枚はたいてFさんから買うのと、 

この子らが作るのと。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070918/282205/
いっぺんこれを導入してマジ検証してみたらいいと思う。
("大枚はたいてFさんから買うのと、". HVUday

など、興味関心深深なのは図書館退屈男だけではありません。特に、(おそらく)図書委員とかでもなく業務は素人のはずなのに、どうやって要件定義と設計、実装を行ったのか、実際の動作画面はどうなのか、実戦に耐えうるのか、そしてあのむやみにかわいい猫は誰が書いたのかなど、各地の司書はじめ全国三千万のネコ好きのみなさまも気になるところでしょう。

さて、プレゼンは顧問の久保利光先生とコンピュータ部の生徒さん。メンバーは5人で、プログラム担当4+グラフィックなど担当1という編成。この日は生徒さん3人+先生での発表となりました。

冒頭、久保先生から、「図書館員向けのプレゼンは今回が初めて。彼ら生徒はコンピュータの専門家から褒められた経験しかないので、今回は厳しい批評をお願いしたい。」とのこと。
それはこの場で質問攻めでフルボッコにしてもいい、ということですよね? 実際、質疑応答は激しかったです。

活動のバックグラウンドについては久保先生からご説明がありました。以下、概要です。

  • まず国家資格の取得から。これで基礎を身につけさせる。基本情報技術者試験の合格が最初の目標で、ソフトウェア開発技術者試験に合格した生徒もいる。(活動実績は学校Webサイトの「トピックス」から
  • その後、情報処理の競技会で身に着けた基礎を試す。ペーパーテストが多い。全国大会が目標。
  • これらの成果を生かし、実際のソフトウェア作成を行う。3月中旬から企画、設計に入り、4月からプログラミング、7月末に完成しU-20プログラミングコンテストに応募した。
  • 「図書館のシステムを作りたい」と企画時点で生徒から提案があった。図書館システムはコンテストではよく取り上げられ、差別化するには高い完成度、新規性が必要となる。だが最初の起案書では利用者視点のシステム。そこで学校図書館に行かせた。現行のシステムのマニュアルをお借りしたほか、具体的業務のヒアリングを行い、要件整理を行った。
  • 設計手法や開発スケジュールの作成は資格取得の時点で学んでいる。顧問は問題点の指摘と進行管理だけ。具体的な改善点やスケジュール遅れのリカバリなどは生徒に考えさせる。
  • U-20プログラミングコンテストへの応募は今回が初めて。「日本在住の20歳以下の者」が参加条件。専門学校生の応募が多く、高校生が応募できるコンテストでは最高峰。

その後は生徒4人でのプレゼン。実際の動作画面を紹介しながらの説明でしたが、画面が小さく細かい部分まで見えなかったのがちょっと残念でした。

学校内で利用できるシステムで、誰もが使うものとして図書館システムを開発対象に選び、目標は

  • 現行システムでは電子化は一部だけで、学校司書の手作業による部分が多く苦労されている。これをシステム化して労力の軽減を図る。
  • 教室からネットワークで資料検索などのシステムを利用でき、便利にする。
  • 督促状の発行と通知など、紙での配布は作成も配布も大変。携帯電話なら生徒がほとんどが持っているので、電子メールでの通知で効率化を図る。

セールストーク風にまとめれば、「電子化による業務の軽減」「ネットワーク技術の活用による情報伝達の効率化」というところですね。「苦労していたり大変な業務を楽にしたい」という彼らの思いが伝わってきました。「なぜ業務を電子化するのか」という点では、最も基本の部分を把握できています。その思いがシステム作りの動機にもなるのです。

設計。機能要件を把握すべく既存のシステムのマニュアルをお借りしたところ、「専門用語が多く、業務が分からない」。例えば「蔵書点検」なんて何のことやらさっぱりわからない彼ら。それはそうだ。図書委員でもしていなければそんなことは普通分からない。そこで学校司書に具体的な業務と作業手順について教えを請う。「実業務を把握して要件定義」というセオリーをちゃんと踏んでいます。

そして実装。
  • 利用者系機能
    • 書誌事項からの検索
    • 一覧表示時に予約、貸出のなどのステータスを併せて表示
  • 管理系機能
    • 貸出、返却処理
    • 図書管理(新規受入と予約、紛失、除籍などの状態管理)
    • 利用者管理
    • 督促状の一斉送信
    • 蔵書点検
    • ベストリーダー出力
      • 貸出本のランキングをクラス、学年別に出力、リアルタイムに更新可能

など一般的な機能はそつなく実装されています。貸出、返却や蔵書点検などは利用者番号や図書番号の入力だけで実行できるなど、簡便な操作でできる作業は簡易化する、などの工夫が見られました。

「独自性」という部分で特筆すべきは、いわば図書館と生徒を「繋ぐ」ための数々の機能です。ヒアリングの中で思いついた「督促状をメールで送信できれば業務が楽になるでは」「図書館の利用を楽しくする」という発想から、かなり力が入った実装になっています。

利用者認証後は、
  • 自分の氏名、所属など情報確認と各種通知用のメールアドレスの設定
  • メールマガジンの購読設定
    • 分野(十進分類法の第1次区分)を登録すると、当該分野のメールマガジンが受信できる
  • 利用あるいは予約している資料の状態確認
  • 資料検索の詳細表示画面から、感想などのレビュー登録と編集、削除機能
    • レビューは詳細表示から常時閲覧可能
  • 図書館への購入希望図書、要望の送信
    • 内容は管理者のみに通知され、返信内容は個人用の画面で確認可能
などの機能が利用でき、認証については必要な箇所でlogin画面に遷移するように設計されています。
管理者系機能でもこれらに対応した以下の機能が実装されています。
  • メールマガジンの作成と発送
    • 新着図書案内と図書館からの情報をメールマガジンで発送
    • 新着図書案内は十進分類法の第1次区分を設定し、当該区分を登録している利用者のみに送信
  • 推薦図書の表示
    • 10件まで登録可能で、Webで参照
  • イベント情報登録
    • 学校や図書館のイベントをタイトルや内容、写真などで登録、webから参照可能

大学図書館向けシステムで提供が始まっているMyLibrary相当の機能が、利用者の「これは必要」という視点から実装され稼動している、ということに驚嘆を覚えました。

学校図書館という環境下でのプロトタイプの実装例、といってしまえばそれまでですが、

「利用者の秘密を守る」ためにMyLibraryを否定する言動が業界であったり、レコメンドやレビューの是非を大人が議論している間に、高校生は必要だから自分たちで実装しているんだぞ!凄いじゃん!俺は否定しないぞ!って言うか応援。百の論説より一の実装。

と昨今の図書館系blogでの議論を踏まえると言いたくもなります。(別に「図書館の自由に関する宣言」など関連綱領類を全否定する意図はありません。レコメンド系の話はそのうち別途書きますので今回は突っ込まないでください。)

今後の課題としては、質疑応答でも出ていましたが

  • バーコードの利用については、今回は実装が間に合わず断念した。できれば実装したかった。
  • 図書データの入力について、より効率化を図るために各種MARCに対応したい。

とのことでした。ちゃんと考えているなあ。

その他、画面の色やインターフェースについては「毎日の業務でも疲れないよう」配色や配置に気をつかったそうです。このあたりは猫の絵を書いた方が担当。

休憩の後、質疑応答に突入しました。サンドバック状態になるのか。

「よくできたシステムだと思うが、実業務にはまったく使えない印象を受けた。発注機能もない、MARC非対応では論外。」という手厳しい意見もあり。これには、昔SEとして図書館システムの開発に携わったこともある久保先生から、「身にしみて分かるご意見だが、現実には予算がなくて買えない。」という涙なご回答がありました。確かに、MARCの現物もないのに対応しろ、というのは無理な話で、懇親会では「年間の購入冊数で商用MARC導入の有無は決まるのでは」という意見もありました。でも対応すれば便利なのは確か。

その他、主な質疑は以下の通り。

  • レファレンス業務には対応していない?
    • 要望送信機能で対応したい
  • システムについて、途中で学校司書や外部の人間のレビューは受けたか?
    • 行っていない。そのような時間もなかった。
  • システム構成は?
    • PHP+MySQL。基本的にオープンソフトウェアで構成。テストデータは2万件。適用できる蔵書規模はサーバスペックに依存すると考える。
  • 雑誌には対応していない?
    • 特に考えていなかった。学校司書から要望は頂いている。
  • amazonや個人の蔵書管理ツールとの連携は?
    • 他のアプリケーションとの連携は考えていない。
  • レビュー機能について。(自分の所属が)女子高だからかもしれないが、友人からの推薦というのは影響力が大きい。匿名でも登録可能であれば、利用は伸びるのでは?
    • 現在は個人名が表示されてしまっている。匿名を許可するかについては検討したい。
  • 除籍後にデータの復元はできないのか?
    • 除籍簿にデータを残しているので、そこから書き戻すことはできる。
  • どうして猫?
    • 開発チーム5人が猫好き。あと、図書館業務は忙しく、「猫の手も借りたい」のでは。(拍手)

また、今後このシステムが自校で、あるいは他の学校で利用されるかについては、

  • 現時点では利用の予定はない。このままお蔵入りにはしたくないが。開発メンバーは4月からそれぞれの進路に進む。何らかの形でシステム開発に携わってくれればと思う。

とのことでした。完成度の高いシステムだけに、このあたりが非常に残念です。できればオープンソース化するなどして、開発が継続でき実利用できればと願います。

最後に、「初めて図書館員の前でプレゼンをしてどうだったか」と司会から質問があり、生徒さんから、「今まで褒められてばかりで天狗になっていた。」「目の付け所が違う。今までとはまったく違う反応だった。」「考え付かない意見も頂いたので、ぜひ実装したい。」という他に、

  • 厳しい意見を受けて、「作り直しTEEEEEEEEEEEEEE!」と思った!

という感想に激しく感動。激しく同意。そうだよ、これで終わりじゃないんだよ。久保先生も「プログラムに完成はない。ユーザの要望を取り入れバージョンアップしてゆくもの。」と仰っておりましたが、その通りだと思います。

ベースに既存のシステムのマニュアルがあったとはいえ、そこからシステムを起こしていゆく、しかも業務の軽減のほか自分たちで必要だと思う機能を実装した。図書館の専門家でもないのに。ただ、それはSEにもなれば当然に必要とされる能力でもあります。そういう能力をきちんと持ったベンダにサポートしてもらいつつ自分たちの意見を伝え、協力してよりよりシステムに仕上げてゆく、という体制がベンダと図書館の間にできればいいなあと思います。

いや、本当に勉強になりました。残念だったのは実際のシステムを「触れなかった」こと。やっぱり、実際にありえないようなデータを打ち込んでみて反応を見たり、あえて負荷をかけてみるとかシステムをギリギリ詰めてゆくって、楽しいですよね。あれ?違います?

ちなみに、U-20プログラミングコンテストでは機能はもちろんソースもチェックされ、エラーなどの例外処理がスムーズに行われているか、などプログラムの挙動もチェックされるそうです。そんなんを潜り抜けてきたとは。やっぱり凄いな。


ああ、自分でも何か作りたくなってきた。マズイ。

この会合の参加報告の執筆依頼も頂いているのに。しかも当日開会5分前に。幼なじみのあの人から? 憧れだった先輩から? それとも、見知らぬ図書館員から? Majide Kitakore 5分前! まさにMK5って感じだよね~?(違う)


突入、Google.

…za…pipi…こちらスネーク、東京ビッグサイトに潜入した。ターゲットは西館に展開。開場間もないので邪魔者なしにコンタクト可能と推測。Over…za…。

………

 東京国際ブックフェアにひっそり行って来ました。実は初めてです。2ホール端から入りましたが、いきなり児童書コーナー。後ろ髪を引かれつつ奥野かるた店。渋いアイテムの数々。

 しかし今日の目的は、Google。Google booksのパートナーとして、図書館は食い込めるのか。そして弊社の生き残りを託すことができるのか。
 ブース到着。さすがに来客ゼロ。ラッキー。「book検索に図書館として参加したいのだけれども。」というと担当の方が来てくれた。米国本社から来日したそうだ。
 質疑を要約すると以下の通り。

  • 「まず大きな図書館から話を進めたいと考えている。具体的なパートナーは未定。中小規模の図書館は今後検討。」
  • (すでに12万件デジタル化済みと話したところ)「そのまま御社で事業を続けられるのがよろしいのかも。」
  • 「著作権はどうなっているか。」(自分のところの資料ならNo problem。)
  • 「ALAのような図書館関係の団体には入っているのか。」
  • (しばらくこちらの取り組みを説明して)「詳細が決まればこちらから連絡する。」

 と数分のコンタクトの後、他の出版社の方と商談に入られていました。どうも弊社クラスの図書館ではお気に召さないようで。連絡来るといいなあ。社交辞令うまいなあ。

 徐々に込み始めた会場を移動。周囲と緊張感と雰囲気が違う洋書バーゲンコーナーを抜け、図書館屋なら誰もが一度は読んでいる勁草書房をのぞきにいったところ、黒い人の山が。

………

……こちらスネーク、ターゲットとのコンタクトに失敗、転進中。前方に私服警備員と思しき集団を確認。VIPの護衛と推測。回避しつつ転進する。Over.

………

 で、反対側へ回ると各ブースのスタッフの皆様はスーツで直立不動。その視線の先には…秋篠宮夫妻だ! 皇室の方にお目にかかるのは初めてでなぜか緊張。紀子様が微笑んでくれたのはこちらだと信じ込んで入れ替わりに勁草書房ブースへ。あ、この間買った「知識資源のメタデータ」が20%引きになってる。こっちで買えばよかった。

 出口が近づいてきた。ふと目に留まる「ほんつな」ブース。「この連想検索のエンジンは何を…」とか質問したら「詳しい者を」といわれて代表者な方が来てくれた。椅子を勧められてなぜが商談に。

  • 本の対決」などの企画物が人気。「新作」と「古典」を競わせているが「ZOO 1」と「羅生門」では、意外と「羅生門」が20代に読まれていることが判明。早速系列書店で平積み販売するなど、得られたデータを販促に生かしている。
  • 連想検索はGETA。
  • 大阪屋の取次データを中心にしているが、「ほんつな」ではあまり商売気を出さすに立ち寄りやすいサイト作りを目指している。
  • 登録利用者は1万人を越えた。ただし、blogで書評を書いてくれる人は3,000人ぐらいかも。よく書いてくれるヘビーユーザが目立ってしまうが。
  • 図書館とのレビューや書誌情報のデータ連携は興味がある。そのうち御社にも伺いたい。

などど、結構長居をしてしまいました。「ほんつな」といえば対話型連想検索しか記憶になかったのですが、裏ではいろいろなサービス連携を考えているようで、興味深いお話が聞けました。

 この日の本務はLIMEDIOセミナーだったので、お昼前には撤収しました。そして移動。できれば一日見てゆきたかったです。

………

……こちらスネーク、東京ビッグサイトから無事離脱した。コンタクトに失敗したのが残念だ。大佐、Google Booksに関する情報はアップデートされていないのか。…そうか、慶應義塾図書館が日本での最初のパートナーか。了解。どうやら我々は陽動作戦に踊らされたようだ。帰投する。

………

 慶應大からのプレスリリースはPDF。まあ、全世界で26館しか参加していないのだから、パートナーは慎重かつ様々な利害とかを計算して選定しているのでしょうか。MARC21とAACRIIで目録とっているから米国でのノウハウがそのまま使えるとかそういう基準とかあるのだろうか。


LIMEDIO V7にOPACWebサービス実装

 今日はリコーさんの「LIMEDIO Seminar2007」に行ってきましたので簡単にレポートを。

 今回のセミナーでは、常盤大の栗山准教授による講演「オープンアクセスの動向と大学図書館」のほか、「来るべき"Library2.0"に向けて」として、リコーの図書館システムLIMEDIOの今秋リリース予定の次バージョン、V7の概要紹介とデモンストレーションがありました。要約すると、Web2.0、Library2.0の流れを受けて、

  • 利用者からのインプットを活用し、情報を精査して利用者へ公開
  • Webサービスを活用し、利用者サービスの向上を図る

ことをLibrary2.0の大学図書館における実践と位置づけ、V7では以下の新規機能が実装されるとのこと。

  • OPACにAmazonから得た表紙イメージを表示
  • Amazon Webサービスから書誌情報を流用し、発注データ作成
  • OPACのWebサービス化
  • マイライブラリのWebサービス化

 MARC流用元としてAmazonを加える、というのも楽しげな機能ですが、このblog的にコメントしておかなければならないのはOPAC等のWebサービス化ですね。おそらく日本の図書館システムベンダでは初ではないでしょうか。詳細な仕様の公開や、導入館によるサービス展開が待たれます。

 OPACについては、当面はDublinCoreを基本に所蔵データを加える形でXML出力をサポートする、とのことです。MODSなどその他の要素も検討されたようですが、まずはDublinCoreでリリースし、利用館の意見などを加えて改良予定、と聞いています。最近では、横断検索への対応のためのWebAPI実装の要望や、実際に仕様書に「APIを実装すること」などと指定されているなど、図書館からのニーズも出てきた、と判断しているようです。

 マイライブラリのWebサービスについては、学内ポータルへ必要は情報を出力可能なよう、既存のシステムで出力されている貸出状況やSDI検索結果などを提供するようです。(こちらは詳しい話を聞きそびれました。)

 その他、7月4日付け日経産業新聞で既報となっていますが、リコーとユサコの業務提携についても発表があり、図書館業界的にはこちらも注目でしょうか。以下、リコーからのプレスリリースからの抜粋です。会場でのデモも実施されていました。

 今回の業務提携は、「Ex Libris社」製品のなかでも、これらの電子コンテンツに関連するシステム群の販売・保守活動をリコーとユサコが共同で行うことで合意したものです。ユサコがASP型の商品販売からシステム導入、保守サポートまでを一貫して担当し、リコーはサーバー型商品の販売を担当、システムの導入や運用サポートに関してはユサコが実施することになります。

 リコーは、自社開発の図書館システムLIMEDIO(リメディオ)を国内の大学市場を中心に販売してきました。同製品は学術書や論文集など、紙媒体で提供される学術情報に関して、業務の効率化と利用者サービスの向上を実現するシステムとして評価が高く、現在まで約200校で導入されています。今回、ユサコと共同で、電子化された学術情報に関する各種サービスを提供することで、紙媒体から電子コンテンツまでの幅広い学術情報に関するサービスを一括して提供してまいります。

 一方ユサコは、長年、電子ジャーナルやデータベースの販売を中心に、主に自然科学系大学を中心に学術情報の提供をしてきました。1990年代よりUNIXベースのデータベースサーバの提供でシステム販売に乗り出し、2001年10月にEx Librisの代理店としての活動を開始し、2006年10月からは、「S・F・X」のASP方式でのサービス提供を行っています。今回の合意により、こうしたサービスを人文学系の大学などにも広くご提案してまいります。

 いまひとつ日本で導入が進んでいないSFX/Metalibのてこ入れのため、図書館ベンダと提携して販売を進めるようです。なお、これは大学、教育機関向けで、既存の導入ユーザと国機関等(つまり弊社も)は現状通りユサコでのサポートとなります。

 その他、業務システムのWebアプリケーション版もリリースが予定されており、まずは閲覧管理(貸出返却業務など)、目録管理サブシステムがWebアプリケーション化されるそうです。その他機能については順次開発予定とされています。インターフェースはFlashを使用、リッチなユーザ体験ができそうです。

 Ex Libris社からもプレスリリースが出ています。また、さりげなく慶応大でのVerde導入の記事がありました。国内初とのこと。このような電子情報資源管理システム(ERMS)の導入もこれから進んでゆくのでしょうか。SFXも、将来的にはVerdeの一サブシステムとして統合される、との情報もあります。SFXのキモは電子ジャーナルの購読情報ですから、それを管理してくれるVerdeに統合されてゆくのはアリなのですね。


 午前中は国際ブックフェアにて秋篠宮殿下ご来臨の様子を拝見できるなどありましたが、この辺りは別エントリにて。

[7/6 追記]

 Ex Libris社からのプレスリリースについて加筆しました。