XooNIps library module v.1.0成果報告会
「狂犬病発症」の報に接し

その名はNext-L

 夕方から都内某所で会合。議題は「オープンソースによる図書館システムの開発と普及」とでもなろうか。

 カレントアウェアネス No.281(2004年9月20日,一橋大学総合情報処理センター 兼宗進) CA1529 「図書館システムとオープンソースの利用」でも指摘されている通り、

商用の図書館システムは,機能が多く複雑になり,全体を理解することが難しくなったという指摘がある。導入費用は高価であり,導入前に複数のシステムを使いながら比較することは難しい。改良の速度は遅く,ユーザーに機能の決定権はない。運用後のサポートは,システムの提供ベンダーに依頼することになり選択肢がない。

図書館に関わるオープンソース・システムは確実な広がりを見せている。今後はオープン性を活かしてこのようなシステムと連携することにより,発展が停滞している商用システムに代り,一気に利用が加速する可能性がある。

 のように、商用システムに依存している日本の現状を憂う声が以前より挙がっている。

 また、海外のオープンソースによる図書館システムの試行と日本語化を行っていた原田からは、カレントアウェアネス No.289(2006年9月20日,慶應義塾大学 原田隆史) CA1605 「オープンソースと図書館システム」において、オープンソースによるシステムの利用の意義として、

 このように考えた場合,OSSの本質は,価格やセキュリティ面ではなく,システム決定時における選択肢の広がり,システム運用に関する自由度の高まり,さらに将来的な機能向上の方向性をOSSの利用者(たとえばOSSを導入した図書館などがこれにあたる)主導で決定することができるという点にあると考えることができるだろう。

 のように、

  • 設定やメンテナンスの選択肢が広がる
  • 利用者の要望に応じた機能の追加が容易など、ソフトウェア運用に関する自由度が上がる
  • 特定のメーカーによって開発されたシステムを導入した場合と比較し、自社のシステム計画とは無関係なバージョンアップ,ライセンスや保守料の値上げ,サポートが打ち切られてしまうなどのリスクを回避できる

 などの利点を挙げている。

 しかし、前述の兼宗の指摘から2年が経過した現在でも、「公共図書館におけるビジネス支援や大学図書館における機関リポジトリ管理などの新しい役割を効果的に対応するための仕組みが新たに必要とされている」(前掲)にもかかわらず、国内の図書館システムの現状に目立った動きは無いといえる。

 このような状況下において、ついに複数の有志によるコミュニティを中心として、国内でオープンソースによる図書館システムの設計、開発を行い、全国に普及を図るプロジェクトが動き出した。その名は Next-L。正式な名称は長いのでとりあえず略しておく。

 今日の会合(幹部会とでも言うべきだろうか)においては、プロジェクトの趣旨説明と解決すべき課題の確認が行われた。まずは小規模な公共図書館や学校図書館などの業務等に適した規模での設計と開発が念頭に置かれているが、OPAC2.0のような新たな概念に基くサービスについても順次組み込んでゆく、という方向性が確認された。
 プロジェクトの体制、支援団体の状況、また現時点での参画を想定しているメンバーを集めてのキックオフミーティングに向けて準備すべき事項についても検討が行われた。

 来週に控えた図書館総合展においても、このプロジェクトについてなんらかの動きがあるだろう。Webサイトも近々に公開されるので、趣旨に賛同する各位におかれては動向を注視されたい。

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