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2007年12 月

インターネットの中にあるたいせつなもの

 ついにカレントアウェアネス-Rにも取り上げられた、「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」のエントリ、「[図書館][エレクトリック]図書館系ブロガーの皆さん、御協力お願いしますm(_ _)m」。

 つくばの無名(いやもう十分に有名か)の若者に、理由は定かでないけれどドイツから「日本の図書館ブログについて紹介文を書いてくれ」との依頼が舞い込む。そこで彼はblog上で「お手伝い」を募集。これに呼応する多くの人々が連ねるコメントとトラックバック。図書館退屈男も微力ながらコメントで協力しています。

 このblog自体は、NDLで10年勤続の感謝状を頂いたのを契機に書き始め、初めは方向性が定まらなかったのですが、INFOPRO2005でのRSSについての取り組みについての発表以来、図書館とその周辺のシステムにトライし挫折する苦悩、そしてWeb2.0とかOPAC2.0とかLibrary2.0とか納本ジャーとか中の人はインターフェース疑惑などについてとても遅いペースで描く激しくマイナーなblogとして今に至っています。

 いや、今回はそんなことはどうでもいいのです。
 今回のやり取りを見ていて、昔を思い出しました。

 冬のある日、つくばの無名の若者に、「インターネット上での図書館サービスの事例を集めろ」との上司からの依頼が舞い込む。まだ何のツテも人脈もない彼はnetnews上で情報を募集。これに呼応してくれた多くの人々が送るリプライと電子メール。見知らぬ人からの親切と情報。そして彼は国内のOPACのリストを取りまとめる。その過程の中で得られたものはpriceless。数年後、彼に異動の内示があるも、課長から「自分の息子のようなものだろうから、しっかり引継ぎをしてゆきなさい。」と指示があり、今はWeb担当係がその業務として更新が行なわれています。

 有名とか無名とか、若いとかベテランだとか、blogだからとか図書館員だからとかそういう問題を抜きにして、ただ「情報をくれ」という呼びかけにだれかが情報を持ち寄って呼応する。そんなやりとりができることが、素直にいいなと思います。

 そして時代は廻り、今度は自分が手助けできる番になりました。お手伝いになっていればいいのですが。そして、いつか彼がpricelessな何かをつかめますように。


 「最近システムなネタが少ない」とお嘆きの読者の方へ。(いない?)

 例によっていろいろ仕込みや調査はしているのですが、書けないこともあるのです。ホゲとホニャホニャを組み合わせたスペシャルカスタマイズ版OPAC(キーワードサジェスト有り)を見せていただき「やればできるじゃん」と不遜にも思ってみたり、「RSSリーダ同士でP2Pなんだ」な論文を読んだりしているとか。


サービスを終了させる、ということ。

 Webサーバのコアとなるシステムの3回目のリプレースが行われた。このシステムは1995年に稼動を開始し、当時はWeb、gopherからanonymous FTP、netnews、proxyサーバとして、またWeb/Telnetによる文献検索サービスなど多くのサービスを運用し、後のサービス拡大のためのテスト環境ともなっていた。1999年のリプレースからWebに特化したシステムとなり、2003年からはこれにRSSによる新着情報配信サービスなどを加え、現在に至っている。今回のリプレースでは、外部から利用可能なAPIとしてOpenSearch、OAI-PMHの実装とデータ提供環境が加わった。こちらは調整が予定より遅れており、来年には公開できるだろう。
 
 その一方で、前システムの運用終了を持って停止したサービスもある。「検索システム農林一号(旧名:サーチエンジン農林一号(仮称))」と「農林水産研究関係インターネット資源への道」の2つである。詳細はこれらのページに発表資料へのリンクがあるので、そちらを参照されたい。
 前者は農林水産研究関連のWebサイトに特化した検索エンジン、また後者はディレクトリサービスで、弊社が提供する農学分野におけるサブジェクトゲートウェイサービスの一翼を成すものであった。今回のリプレースでの継続運用も検討されたが、Googleなど他の検索エンジンとの競合、これらの運用やディレクトリ作成に必要な人的リソースの不足などから、やむなくサービスの停止に至った。

 「サーチエンジン農林一号(仮称)」は、自分がWebの主担当係であった時にテスト環境の構築から運用までを手がけたサービスでもあり、またおそらく弊社のコンテンツの中で唯一Yahoo! Japanでcoolマークを付与されたもので、個人的な思い入れもあったが、状況を考えると停止もやむなしと思う。
 他のサービスとの差別化に失敗した、という面もある。Vivisimoで実装されている検索結果の自動クラスタリングや、流行のファセット検索なども持たない旧態依然の検索エンジンでは、「農林水産研究に特化した検索エンジン」というコンテンツだけでの差別化には限界があったのかもしれない。また、ロードマップ上には「検索結果として表示したWebページをクリックすると、次回はそのページを取得してデータベースに加える」自動成長型検索エンジンを「サーチエンジン農林二号(仮称)」としてロールアウトさせるプランも存在したが、諸般の事情でこれは実験のみで終わってしまった。そして、自分自身、今回リプレースとなったシステムの主担当ではなく、新規機能の提案をしたのみで設計と構築にはほとんど携わっていない。

 実験ではなく、公式に提供しているサービスを停止する、ということは現在の担当者にとって軽い選択ではなく、おそらく限られた開発期間や資源をどう配分するか、という中での苦渋の決断ではなかったかと思う。
 弊社のサービスはどんどん枝葉を生やし、拡大していった。図書館総合展などではスタッフの人数を問われ「よくこの人数でこれだけのサービスが」と言われることもある。正直その通りで、もう余裕はなくなりつつある。新しい手法をテストすることはできても、運用フェーズに持ち込むためには定常的なリソースを確保することが必要になる。それは周囲の協力や合意であったり、予算であったり、人であったりさまさまであるが、個人の力に頼らず、組織として、業務として運用しなくてはならない。特に人的リソースは減少している。時には枝葉を剪定して、全体のバランスを取ってゆくことも必要なのかもしれない。理想論かもしれないが。

 いくつかの個別のサービスを終わらせても、全体としてより有益なサービスを提供する。難しいが、正しい評価に基づき、続けるべきこと、止めるべきこと、そして新たに始めることを考える時期に来てしまった。個人的にも、トライしたいことは山のようにある。だが、どれだけのアイディアや試験したサービスを運用まで持ち込めるだろう。全部は不可能でも、何かに書き残しておけば、誰かがどこかで実現してくれるかもしれないとも思う。
 幸いにも、今回終了したサービスは発表の機会に恵まれた。得られた知見などを書き残せた、それだけでも有益だった、と取り合えずは考えることにしよう。前向きに。


 発表をさせていただきました11月17日(土)開催の整理技術研究グループ2007年11月月例研究会の記録資料(PDF, 3.4Mb)が公開されました。機会を与えていただきました関係各位に、この場をお借りしてお礼申し上げます。


図書館退屈男の謎(後編)

 (承前)

 茨城県の研究学園都市。最近、鉄道が開通して便利になったようだが、彼の職場は1時間に2本しか電車の止まらない駅からバスで15分。十分不便だ。

 雑木林に囲まれた研究所群の中に、彼の勤務する図書館はあった。一見、森の中にあるようにも見える。人目を隠すにはよさそう、とも思う。何もはばかることはなさそうだが。
 紹介されたとおり、図書館のカウンターに出向く。人影の少ない図書館。カウンターにいた女性に挨拶すると、すぐに彼が現れた。実在したのだ、と実感する。何故だろう。何か違和感を感じた。

 早速、こちらのセミナーの企画について打ち合わせる。テーマは「OPACとXMLを連携させた新サービス」になった。彼の得意なテーマのようだ。いい加減、「Web2.0」などというのは陳腐だと思う。うまくまとまりそうだ。
 その後は雑談になった。お茶をいただいた。何でも、九州の研究所で開発した新品種で、紅茶用の品種を緑茶にして花粉症を緩和する成分を濃く抽出したそうだ。延々と能書きを聞かされた割には、味はいまひとつだ。それに自分は花粉症じゃない。
 彼の試している様々なサービスなどを拝見した。なるほど、確かに興味深い。あちこちから講演依頼もあるわけだ。「利用者の一番近いところでサービスを展開する。」それでブラウザにOPACの検索用プラグインやLibXのようなツールを仕込む。これは新しい。

 さて、そろそろ核心に迫るとしよう。普段の仕事について尋ねた。このカウンターで、レファレンスを担当しているという。Web2.0を標榜するような彼がレファレンス? 利用者相手にあれやこれや支援したり、電話やメールで各地、時には海外から舞い込んで来るレファレンスに対応し、時には国立国会図書館のレファレンス協同データベースに登録もしているという。にわかには信じられないが、こちらが「本業」のようだ。図書館員らしい仕事だ。
 館内を見せていただく。まあ、普通の図書館だ。蔵書の種類は研究報告など灰色文献に偏ってはいるが、専門図書館ならこんなものだろう。

 続いて、計算センターも見せてくれるという。機械にはあまり興味はなかったが、「折角ですから」と愛想を浮かべ、後に続く。小柄な計算センターのスタッフが現れた。システム専門官だと紹介された。「彼」は用事でもあるのか、すぐ戻るといって去っていった。失礼な奴だ。
 「ディスクの総量は500TB以上、スパコンの稼働率は…」空調がよく効いた、寒いマシンルームで機器類とスペックを自慢げに紹介する。呪文のようだ。眠い。正直、機械やらネットワークことはよく分からない。凄いという事だけは分かった。こんなに資源があるのなら、図書館退屈男とやらもテストやらなにやら動きやすいし、理解もあるのだろう。思いついた。そうだ、こいつに聞いてみよう。

 「図書館退屈男って、ご存知ですか? あのblog。」軽い冗談のつもりだった。「ええ」との返事。意外だった。職場にばれているのか。しかし、計算センターの男の顔は一瞬ピクリと強張った。「もうちょっと奥もご案内しますよ。」そう言うと、男はカードキーと暗証番号でロックされた扉を開け、暗い部屋へと私を案内した。
 ガチャリと大きな音を立て、扉が再びロックされた。電気がつけられた。やはり空調の効いた広い部屋。19インチのラックに詰まった機器類。赤緑白のLEDが激しく明滅を繰り返す。その中央に、まるで墓標のような黒い立方体が息をするかのように静かな音を立てていた。

 「これが図書館退屈男です。」計算センターの男はそう言った。その立方体に張られた、「t…@a….jp」とメールアドレスが殴り書きされた紙が空調で揺らめいていた。こいつは何を言っているんだ。目の前には黒い金属の箱しか見えないぞ。「5年前、彼は交通事故に遭い、」男は続けた。「体を失いました。」そいつは気の毒だな。死んだのか? 「ちょうど昆虫の脳神経系をスパコン内で仮想的に再現する研究プロジェクトがあって」ああ、昔そんな記事を何かで読んだな。「ニュートン」かな。いや、「make」だろうな。こんなネタ。「その成果を人間に応用したのが、このシステム…彼です。彼の脳と神経系をこの中でほぼ完全にエミュレーションしています。」

 気が付くと、その彼…図書館退屈男が後ろに立っていた。よくラックを見ると、中に彼と同じ…まったく同じ風体の人形が中に居た。しかも数体。こいつら、気でも狂っているのか。「今、彼の記憶を各個体と本体間でシンクロさせています。20時間ぐらいかかりますね。一日の行動でも、かなりの情報量になりますから。」何を言っているんだ。訳が分からない。「2005年にXML-RPCを実装して、blogが直接書けるようになったんですよ。すごいでしょ。それがあのblog。」XML-RPCって、blogを自動投稿する、アレか?「メールなどは直接SMTPで送受信しています。」それで返事が異常に早いのか。

 ちょっと待て。納得するなよ。自分。

 なら後ろに居るお前は、だれなんだ? 機械が講演や懇親会の司会までできるわけないだろう。「彼とそのラックの中の彼らが産総研と理研、計算センターで共同開発した図書館退屈男の対人用インターフェースで、通常は自立的に稼動しています。目の前にある本体から制御しているほか、必要に応じてつくばWAN経由で各研究所のスパコンと連動、図書館退屈男として稼動します。」はあ? 対人用インターフェース? どこかのラノベか?「こうやって記憶をシンクロさせつつ、毎日交代で稼動させています。もうちょっとバッテリが持てば数日は動けますが…」出張とかはどうするんだよ。「大容量バッテリを積ませています。体重が増えるのが難点ですが。エレベータとかは避けるように指示しています。」ノートパソコンかよ。まあ、同じようなものか。一人で重量オーバーにでもなるのか。バッテリ、どんだけの重さだ。大体、この間の長崎の講演では、彼がPCいじって講演してたぞ。「彼の中に各携帯電話キャリアのSIMを実装、最適な通信環境を自動選択して通信します。必要があれば、衛星通信用のデバイスに交換します。これで、この本体から送信される原稿データを受信してリアルタイムで読み上げます。PCもIEEE802.11aやBluetooth経由でリモートから操作できますが、不自然なので直接操作させます。」まあ、そうだよな。質疑応答は?「それくらいは各個体上の記憶を元に自立的に判断して回答します。必要があれば、本体に問い合わせます。」それで時々吃音があるのか。「そういう実装にして回答までのタイムラグをごまかしています。」「雑誌原稿やblogは本体にVMwareを立ち上げ、その上でWindowsXPを動作させてWordで執筆、メールなどで投稿しています。試験用のFedoraとかUbuntuの環境も彼にはありますよ。」ややこしいな。複数のOSを自分の中で動かしているのか。「本当はあまり外には出したくないのですが、怪しまれるといけないので仕方なく…。」ネットでしか見かけない、というのはそういうことか。

 そこまでして何のメリットがあるのか。しかも血税を使って。これは何かの冗談で、本当は人間なんだろう? なあ、そう言ってくれよ。図書館退屈男は人間だって。実在するって。いや実在はしているのか。機械として。

 「おしゃべりが過ぎましたね、専門官。」図書館退屈男…いやそう名乗る人間型の物体が喋りだした。「今は総合科学技術会議直轄の研究プロジェクトに格上げですよ。予想よりはるかにいい成果が出ましたから。」いい成果? この人形が? 

 やっぱりこいつらは狂っている。対人用インターフェースつきスパコンなんてありえない。マジで。冗談はいいからここから出せ。頭がおかしくなりそうだ。いや、本当に痛くなってきた…。「あのお茶、花粉症緩和のほか、遺伝子改良で催眠誘発効果もあるんですよ。記憶に障害が出ることと、薬事法に引っかかるので研究は中止になりましたが。」さっきのお茶か。能書きはもういいから、とにかく味は何とかしたほうがいい…。

 …気がついたら秋葉原行きの電車に乗っていた。北千住まで来ていた。きっと帰りに眠り込んでしまったのだろう。夜、自宅で図書館退屈男のblogを読む。来客があり、講演の相談をしたと書かれていた。情報が早いな。

 次に図書館退屈男に会ったら、ぜひ聞きたい。「ネットでしか見ませんよね…」


図書館退屈男の謎(前編)

 私が彼と初めて会話を交わしたのは、とあるセミナーの懇親会だった。ネットではよく見るが。

 講師をしていたある女子大図書館のチームリーダーと名刺交換をしている姿が、そこに見えた。
「…さんって、本当にいたんですね! ネットでしかお見かけしないから、本当にいらっしゃるとは思いませんでしたわ。そう言われません?」彼は軽妙にその問いをかわし、「ええ、よく言われますよ。」とにこやかに答えていた。別の大学の女性は、「このセミナーに出たい、とSNSに書き込んだら、すぐに彼から「まだ大丈夫ですよ。」と書き込みがあって。もう締め切りは過ぎていたのですが、事務局に電話したら大丈夫だといわれて。おかげで助かりました。」と話しかけていた。

 確かに、彼の名前はネットでしか見ないような気がする。続いて名刺交換をさせていただいた。当然だが、そこには実名と勤務先等が記されていた。ああ、実在したんだ。そうだよな。そのときは気にも留めなかったが。
 別の講師で、国内外の図書館に関する記事をblogやメールマガジンで紹介するサービスを行っている図書館の編集担当者とお話しすることができた。「オープンソース系のネタを紹介すると、彼…言っていいのかな…図書館退屈男さんのblogに「試してみました」とそのソフトをレビューした記事が載るんですよ。割とすぐに。」「おかげで、読んでもらえている実感もあるし、実績にもなって上も喜んでいます。」すぐに、か。きっと暇なのだろうな。退屈男と名乗るだけのことはある。

 2時間ほどで懇親会はお開きとなった。自宅に戻り、彼…図書館退屈男のblogを読み返した。確かに、IBM OmniFindだのLibxだのといったソフトウェアのレビューについてはレスポンスが早い。だが、早過ぎやしないか? どう読んでも、記事を読んでからすぐテストしているように見える。Googleツールバー用検索ボタンに至っては、それを京都駅のマクドナルドで知ってその場で開発したとある。どこにコーラS(100円)だけでそんな作業を、しかも氷が完全に溶けて水になり、それまで飲み干したまま作業する人間がいるのか。非常識だ。100円のコーラぐらいおかわりしろ。PORTAのべた褒め振りもありえない。あの記事だって、公開直後だ。そういえば、別の女性も「すぐに返事が」と言っていた。どうも変だ。ちゃんと仕事しているのか。気になってきた。

 翌日。上司からセミナーの企画をするよう命じられた。テーマは何でもいいそうだ。ちょうどよい。「彼」に頼んでみよう。実績もあるようだし、何か面白い話でも聞けるだろう。
 早速、名刺に会った連絡先に電話をかけた。ところが、女性の声で「ただいま会議中で…午後も予定が…」とのこと。意外と忙しいのだな。後でメールをする、と言付けて電話を切った。結局、その日はこちらも業務に忙殺され、メールはできなかった。

 翌週。メールでは細かい調整は不便だ。先に電話をして、詳細はメールで送ることにしよう。そう考えていると、受話器からは先日の女性の声で「今日は東京に出張しておりまして…」。仕方がない、また後でメールをする、と言付けて電話を切った。こちらも時間がない。今度はすぐにメールをしたため、送信した。驚いたことに、3分後に返信があった。詳細は上司に確認しないと分からないが、日程と内容はOKとのことだった。どこにいるんだ。まあ、最近は携帯電話からでもメールは読み書きできる。まめな人なのだろうな、ぐらいにしか思わなかった。
 ところが、その考えはすぐに打ち破られた。1時間もしないうちに、「上司の了解が取れた。追って様式を送るので、文書で派遣依頼をいただきたい。」との返信がメールであった。どこに出張しているのか。いつ上司と調整したのか。おかしい。カラ出張か? そうだ、実際に会ってやれ。ぜひお会いして打ち合わせしたい、と返信した。これにもすぐ返信があり、OKとのことだった。このレスポンスの速さは異常。やはり何かある。

 こうして、私は彼の職場へ見学も兼ねて出向くことになった。そこに何があるのかも知らずに。

 (続く)