新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会&第4回ARGカフェ&ARGフェスト
2009/06/29
図書館退屈男。仙台までの移動は常磐線(上野から新幹線を使うよりリーズナブルなのです)。道中、メヒコの「いわきカニ・ウニ欲張りピラフ弁当」(1,200円)を食しつつ、やってきました仙台。
会場は仙台メディアテーク。ギャラリー+ライブラリー+スタジオの複合施設。ガラス張り。きれいな建物。にぎわう人々。街中にある、という立地もありますが、ちょうど講演会が開かれていたりと活気のある建物でした。
詳しい紹介は「新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会」で伺ってきました。
ギャラリーなど表現の場、またスタジオ・ワークショップでの活動の場、そして図書館のような情報収集と蓄積・編集・発信の場として機能しており、常に市民の「こんなことがしたい」というニーズに応える。インフラを用意して後は自由に活用してもらう、という姿勢は世田谷の羽根木公園のプレーパーク(知らないうちにNPO法人に)のモットー、「自分の責任で自由に遊ぶ」を彷彿とさせました。(ボランティアが常駐しているけど基本は子供が自由に遊べる。ルール・規則はなし。ボランティアは子供のお手伝いをするだけ。)
同じ会場で第4回ARGカフェ。実況は今流行のtwitterでお送りいたしました。「tsudaる」というあれですね。なので詳細はそちらをご覧ください。
パワーがあるからライトニングトークに参戦するのか、東北勢には何かパワーがあるのか判断できませんが、東北大&山形大が半数を占める参加者の中で60分のライトニングトークはスケブトーク(スケッチブックを活用したプレゼン。今命名。zipでほしい。)に始まり怒涛のように終わりました。パワーポイントを活用する人も多かったです。
自分ですか?何も持たないトークでしたが何か。でも配布資料は何かしらあったほうがよさそうですね。あと、いつもの付箋紙を忘れて「あれ期待してたのに…」とのリクエストをいただきました。図書館総合展では配りますのでいましばらくのご辛抱を。
さて、長峰さんの「図書館には嫉妬している。誰でも知っている。科学館を知っている人は少ない。」「所詮図書館。学会などアウェイの場所に出て来い!特に、実験科学者の土俵で発信することがサイエンスコミュニケーションの始まりだ。」に代表されるように、「アウェイ」が今回のキーワードでしたでしょうか。
学外での発表もアウェイ。図書館界以外での活動もアウェイ。ましてARGカフェのような誰が来るか判らない、詩人や近くのコーヒー店のマスターが来るような場もまたアウェイ。情報系学会なんてもっとアウェイ。そういう場所でも理解されるように話すことこそが外部へのコミュニケーションの第一歩だと再認識しました。
当館はどこへいっても基本アウェイです。専門図書館というカテゴリでもgo.jpは少数派。某国立図書館の分館ですがそんなことは誰も知らない。「あったんですね…図書館」と言われること多し。研究所付設ならともかく、そうでもない。そしてむやみに長い組織名。一度で覚えてはもらえない。
自分のトーク「日本国内図書館OPACリストの15年」でも触れましたが、振り返れば最初の10年ぐらいはOPACリストと共に当館がそこそこメジャーになる過程であったのかなと。おかげさまで、どこへ行っても「OPACリストの人」ということでアウェイ感の低減に繋がりました。さすがにそれで10年は持ちませんでしたが。
OPACリストの成功要因を3つにまとめる(この手法は先日岡本さんの勉強会でご教示いただきました)とこんな感じでしょうか。
- 継続して更新していた
メンテのないコンテンツは誰も使ってくれません。「更新されている」ことを評価していただいたこともあります。URLもほぼ15年変わっていません。今でも内部ルール的とはずれていますが移行措置的にサーバ名もURLもあえて変えていません。ちなみに、現在のメンテ担当は4代目です。 - どこへ行ってもアウェイな図書館だからこそできた
大学図書館なら大学の、公共図書館なら公共図書館のリンクリストになりそうですし、自然そうなりがちですが、当館は他に繋がりもしがらみも権威性も上下関係もありません。そのおかげで、OPACリストは館種を超えたリストになることができました。「意外性」もあったのかもしれません。図書館という狭い世界ですが、中立性が高いからこそ何に縛られることもなく今に至るまでさまざまな試みができたのかもしれません。 - 真っ先に手をつけた
これも大きかったと思います。1993年にデータ収集開始、翌年公開、今では盗んだバイクで走り出す15のOPACリスト。「なぜうちの館で出来なかったのだ!」とか「JLAがらみですか?」とか外部ではいわれたこともあったようです。新しいネタは速やかに公開する、ブルーオーシャンで先駆者になってデファクトスタンダードを作ってしまう、というと大げさですが、「先見の明」も大事なファクターなのでしょう。その代わり、「ずっと面倒を見る」という責任も引き受けることになりますが。
一方で反省もあります。
- コミュニティにはならなかった
当時は「かりん」というメーリングリストであの界隈は盛り上がっていたのでコミュニティ云々は特段考えていませんでしたが、振り返ってみれば200館以上の図書館が館種を越えて集まることができる機会を逃したのでは、と今になって思います。特にWebインターフェースでのOPACの黎明期、あそこでもっと議論が出来ていれば今のような次世代OPAC云々の話ももうちょっとなんとかできていたのでは…とは今だから思う話。 - 図書館退屈男だけのもの?
そんなことはありません。情報をご提供いただいた皆様のおかげでOPACリストは15歳になることが出来ました。本当に感謝しています。
とはいえ、1.でも述べたように、公開館同士でフィードバックできるような何かがあればよかったのかな、とも感じます。当館も15年前よりはメジャーになりました。OPACリストに掲載されればその館のアクセスが急増した、とも聞いています。隣の研究所図書室でも「OPACリストを作った人の近くですか?」と聞かれる等、社全体の可視性の向上にもなりました。 - 個人の作品か組織の業務か
2001年3月版までは図書館退屈男の実名入りの配布でしたので、それは名前も売れるわけだよなあ。その4月からは著作者は職場名に変えました。もう、公式のWebサイトで個人名をコンテンツに出しての情報発信が許される時代ではなくなっていました。
最初はどうしても「個人」が背負っていた業務ですが、いつかは「組織」が担う業務にしないといけない。個人の情熱だけは継続も難しいのでは。移動に伴い、その業務の重要性を職場に理解してもらい、組織の業務できたことは幸いでしたが、異動がなかったらと考えると…ちょっと怖いですね。
今はいろいろ機会もありますし、どんどん前に出てアウェイを攻めていけば自身の勉強にもなるし、よいのではないかと思います。
そんなこんなで仙台メディアテーク→ちゃんこ屋(魚類うまし)→大通り沿い10F(確か)の雰囲気のよいバー(カクテルうまし)→こじゃれたバー(「紅茶は別メニュー」とあるので期待したけどロイヤルミルクティーは作れないという謎)→ホテル(この時点で03:00近く)という長丁場を乗り切ってきましたが、いろいろな方とお話できる機会というのは楽しいですし、勉強になります。皆様ありがとうございました。
以下、見聞きしたお話を箇条書きにしてレポートに代えます。酒の席の話題なので真実は知りません。
- スケブ右上に[アナログ]と書かれていたのに発表の後に教えてもらって気づく有様。スペースNo.がわかれば妻を買出しに派遣します。ブログも拝見しました!面白いです!速攻でRSSリーダに入れて毎日見ています。
- 「幼少のころ、冬はハタハタばかり食わされた」という某課長の箸捌き。特に魚を前にしては芸術の域。
- そんな某課長にクラシック談義では苦杯するものの、「親が相撲中継ばかり見ていて」相撲に造詣の深い某氏。
- 「このスカートは色違いもあって両方手製なんですよ~」カエル折り紙とかだけでなく衣類まで。なんて器用なのでしょう。すみません、お手製の素敵なスカートを粗相で汚してしまって…。
- 図書館系センセイ方向け接待旅行なんてはじめて知りました。でも鉄オタなら新津は聖地。うらやましい。
- 山口→山形へ異動。「次は山梨を狙う」と公言するも「山東省では?」と切り返される笑劇。7月にお待ちしております。
- 東北大工学部と官舎は山の上。積雪時のタクシーは乗車拒否。
- ドイツでネオネチに囲まれても日本人と名乗ってドラゴンボールを見せれば切り抜けられるらしい。マンガは命を救うアイテム。
- そういえば仙台にはガンダムバーがあったことを午前2時ごろ指摘され激しく後悔。
- 「ドリフトしたかったら最初からしやすい車を買って練習するべき」「やりにくい車を買って苦労して練習するよりはずっと早く上達する」名言を拝聴。用途に合わせたシステムを用意しろ、という話題だったはず。
- ライブラリーホテル。蔵書は某氏に「持ち寄り文庫のよう」と言われて実際に見てみたらそうだった。箔付け用の古い資料ならいくらでもありまっせ。
- 宮城県図書館。書架に「地震が起きたら棚から離れてください」のラベル。書庫に用意されたヘルメット。閉まらなくなった金属製マイクロフィルムケース。かなり真剣。
はい、当面の予定などです。
- 「書庫はいつでも雨漏りです」のエントリ、「『図書館雑誌』6月号 その1」にて、「図書館雑誌」6月号(103(6), 2009.6)掲載の「OPACの使われ方を変革する」のレビューを頂戴しました。ありがとうございました。
- 「情報管理」7月号(52(4), 2009.7)の「この本!おすすめします」。もうすぐ出ます。
- 某雑誌の座談会に行ってきます。発売は秋らしいですので、詳報は追って。