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2006年11 月

第8回図書館総合展 (3rd Day)

 図書館総合展も最終日。資料を配る手にもより一層の心をこめて。

 今日は出席予定のフォーラムもプレゼンテーションもなく、ちょこちょこと他社のブースをのぞきに行くほかは一日ブースで説明と資料配布。むしろ今日は珍しいお客さんが会ったぐらいだろう。一人は4月に東京の研究所へ異動となった後輩。最近便りが無いので心配していたが、今は刊行物の担当で締め切り間際の研究者を追い立てるのが仕事らしい。1時を回り人手も余ったようなので、2人で昼食。HardRock Cafeをセレクト。無意味にアメリカン。そしてRock'n Roll。情勢厳しいと伝えられるアンナミラーズも捨てがたいが、TowerRecordでまんまと「デトロイト・メタル・シティ」1・2巻を購入した自分にはHardRock Cafeが意味なく似合う。ゴートゥDMC。昼食、いつもの戯言、そして別れ。今日は急に横浜への出張が決まり、大体は見たのでもう帰るという。東京ライフ。

 もう一人は、9月まで非常勤として勤務していた方と再会。他の研究所に派遣が決まり、今日は「勉強して来い」ということで出張だそうだ。別に、上司の方ともお話しさせて頂いたが、派遣職員の身であっても出張させ最新の動向を把握させる姿勢に感服。何かと厳しい弊社ではそうも行かないだろう。

 隙間を見て他のブースも偵察。普段ブログを読ませていただいている方の発表後、意見交換をさせていただいた。一昨日のフォーラムでも話題になったところだが、館内用のOPACでは検索結果で単に「検索結果は0件でした」と出すのではなく、所蔵は無いがMARCのデータを見せ、「こんな本もある」と案内しているという。「検索結果は0件でした」終了。では芸が無い、とは最近よく聞く話。NDL-OPACやWebCATにリンクして他館所蔵を探させる例もあるが、amazonやbk1へリンクし「この本を購入する」という選択肢があってもよいのではないか。アフィリエイトがあれば歳入増になるかもしれない。「地元の本屋を守れ」というのなら、そのまま書名、ISBNなど必要な情報をプリントアウトさせて本屋さんに持ってゆき注文すればよい話。あとは本の到着まで自分がどのくらいの時間を待てるが、だろう。早いほうがよければamazon、遅くてもよいなら図書館で順番待ちもあり。そんなサービスもよいのでは。などと思う。

 14:30-15:00はフォーラムの狭間。ホール内の人も増える。資料も捌ける。今年用意したのは800部。昨年と同じ数量だが、200部ほど余した。今年もそんなくらいだろうとの事前予測。

 17時。フォーラム終了。各社とも最後の接客に懸命な様子。弊社もだ。ふと気づく。資料があと(A4コピー用紙500枚入り箱)一箱を切っている。誰かが、「どうせ後から『すみません、まだありました…』と言うだろう」と呟きつつバックヤードの段ボール箱を片端からつぶして歩く。

 そうこうしているうちに、こちらは一昨日のフォーラムを聴講した方から「アレは御社が1位になるべき。」「今はビジネス支援が重要かもしれないが、その先を考えたら御社の取り組みは重要。そこを分かっていない。」「フロアから発言の機会があったら一言苦言を呈したかった。」と熱いご支援のメッセージを頂く。相変わらず、「一昨日のフォーラムを聞いて」いらっしゃる方も多く、第3者に取り上げていただく効果を実感する。

 終了時間が近づく。誰かが言った。「資料ありません。すべて配布しました。」800部がすべて捌けた。バックヤードからも、資料が消えていた。それでも来場者は尽きない。データベースに特化したリーフレットや個人手持ちの資料まで配る。
 そして配るものはなくなった。なんとなく高まる達成感。でもすぐに撤収準備。デモ用のPCを順次梱包、箱詰め。宅配便の宛名書き。これから中国四国方面で開催されるセミナーのために送られるPCもあるので、注意深く梱包。
 18時。終了のアナウンス。確か去年は拍手があったような…と感慨にふける間もなく梱包梱包搬出搬出。すべての荷物が搬出された頃、ブースの木工は設営業者の手により手際よく解体されてゆく。3日間ありがとう。そして自ら分電盤のブレーカを落とす。さあ、帰ろう。

 残っていたスタッフで中華街へ。小さな食堂で上海蟹! 初めてだったが、こんなにおいしいものだったとは。ただ、小さいから食べにくいけど。


 ということで今年も無事閉会。無事でなかったのは自分の体。…一日置いて腰痛が。なのでblogの更新も遅れること5日。
 次は名古屋で会いましょう。


第8回図書館総合展 (2nd Day)

 図書館総合展2日目。今日は遅めに11時に会場入り、そのままブースで説明対応。なぜか不在の時に限って尋ねてこられる方が多く、申し訳なく思う。失礼しましたが、いつでもご連絡ください。
 昨日に引き続き、「RSSを」と言われると呼ばれてその都度弊社の取り組みについて説明。その他、通りすがった方をキャッチ、「…研究はちょっと…よくわからないし…」という方には、半ば強引に弊社(の関連研究所)の研究成果のうち、一般消費者にもなじみのある

などの研究成果を紹介、これらをタイムリーにキャッチできるツールとしてのMAFFIN News Feeds CenterとRSSに結び付けて紹介するなどの地味な広報活動を展開する。また、夕方のプレゼンテーションも「まだ席はあるか」などと聞かれるなど関心は高い。ぜひ聴講をお願いしますと回答。昨年よりは、RSSそのものの知名度も上がっているようだ。
 もちろん、農業高校など弊社のターゲットとなる顧客の皆様には文献データベース、研究報告などの全文情報閲覧などをアピール。必ず聞かれるのは「あの、費用は」というMoneyな話だが弊社のサービスはすべて無料。これは大きなアドバンテージとなり、「なら触ってみたい」ということでその場で利用登録をされる方もあり。
 一方で、農業系学部がある大学図書館ご担当の方からは「去年と同じなの?」という厳しいご指摘も。収録データを増やしたり細かい改良は繰り返しているが、大筋では同じ。「本年度中にはDBシステムを更新予定」など今後の計画をご説明し凌ぐ。
 
 そして午後。夕刻になり弊社の所長も来場。プレゼンテーションの時は近づく。
 ぽつぽつと人が集まりだす。開始は17時で、それまでフォーラムに出席している方は終わってから駆け込みで来るだろうと見込み、定刻より開始。
 与えられた時間は40分。うち30分でスライド説明、5分弱でデモ、後は質疑応答に当てる。資料は追って公式サイトで公開予定。
 スライドの説明の中では、

  • RSSによる新着情報配信の開始と、これを通じての新しいサービスの可能性を検討
  • 誰でも自由に書誌データをXMLで引き出せる次世代のOPACを開発
  • 「書誌データを公共財にする」

点を強調し説明。デモした事例は3点。

  1. タグクラウド
  2. blogへの自動投稿
  3. 取得したXMLデータを全文検索システムHyper Estraierで他のデータベースと共に再構築、横断検索(これは今回がお披露目)

 いずれも「OPACの機能拡張ではなく、XML出力機能を利用して第三者が同様のサービスを構築可能」であるOPAC2.0の特徴の一つを強調して説明。ちなみに、タグクラウドは直接RSSを取得しタイトルに形態素解析をかけて生成しているが、残りの2つは主にPlaggerの機能による。blogへの投稿は、Plaggerで前処理したフィードをMovavleType投稿用のPerlモジュール(Net::MovableType)に通して自動投稿している。

 質疑。TRCMARCなど市販MARCの利用と再配信について問われる。いつかは考えなければならない問題ではあるが、現時点では弊社OPACのデータは省内、研究所発行物などいわゆる灰色文献の書誌が中心のため特段の問題は生じておらず、また各種MARC作成者とはコンタクトしていない、と回答。内心、市販MARCについても、一旦各館でデータを購入したら、あとは自由に公開させてもらえればよいのに、という思いはある。いずれ、このような情報公開の形態が普及すれば何らかの形で解決したいとは思う。

 プレゼンテーション終了後は何人かの方と名刺交換をさせていただく。旧知の方もいらっしゃり、「(情報管理4月号の)論文を読んだだけでは分かりにくかったが、講義を聴いてやっとコンセプトが理解できた」等のコメントを頂く。聴講していただけたことをありがたく思う。

 閉場後には別のお座敷が待っている。そう、mixiの司書コミュニティのうちOPAC関連トピックのうち、興味ある方を対象にしたオフ会だ。集合と名刺交換などの後、一路中華街へ向かう。
 宴は盛り上がる。各所で行っているOPACを関連とした機能改良の取り組みや、先日から動き出したProject Next-L(サイトが公開されました)の熱い説明(とリクルート)などもあり。とにかく、現状のOPACに機能不足を感じ、様々に改良を行ったり関心のある方と意見交換できたことは大きな収穫でもある。こういう現場レベルでのコミュニティが形成できることは仲間が増えたようでうれしい。

 連れ合いはつくばへ戻らないといけないので、終宴後は失礼ながら2人ともども早々に退席。うまく日付が変わらないうちにつくばへ戻れたようだ。
 こちらは、ホテル入りしてそのまま爆睡。やはり3日分の疲れが出たようだ。

 そして迎える最終日。Don't give up. 走り続ける。


第8回図書館総合展 (1st Day)

 図書館総合展がやってきました。弊社も出展しています。そして準備もあったので昨日から桜木町に泊り込み。

 午前中は主催者フォーラム「この図書館がすごい! -IRIが選ぶLibraries of the Year-」に出席。事前の会合で選定されたアカデミーヒルズ六本木ライブラリー諫早市立たらみ図書館鳥取県立図書館、そして弊社について、IRI図書館コンサルティングタスクフォースメンバーがそれぞれの特徴的な活動についてプレゼンテーションをし、そこから発表者の投票でまず2館に絞込み。その中から会場の拍手で1位を選出すると言う趣旨。

  選定基準は、

  • 公共的な図書館(「公共図書館」ではない)。誰でも利用できることが前提。
  • 特長的な活動をしている。「これからの図書館」の要素を持っている。

 まずは4者のプレゼンテーションを拝聴。それぞれの特徴が現れる。本を通じた会員間のコミュニケーション形成の場となるアカデミーヒルズ六本木ライブラリー、住民主体で地域と密着したサービスを是とする諫早市立たらみ図書館、そして県庁や国、NPOなど各種団体を巻き込み、確たるフレームワークの下でビジネス支援を推進する鳥取県立図書館。いずれ劣らぬ特徴ある図書館だ。
 弊社はと言えば、「常に新技術・サービスの動向をキャッチし新たなサービスを模索しつつ運用し、「データ」を通じた新しいサービスの可能性を追求している」と評され、主に技術面での積極性が評価されたようだ。
 決戦は鳥取県立図書館対弊社。よく残れたものだ。結局、拍手は鳥取県立図書館のほうが多く、弊社は次点となった。とはいえ、ここまで宣伝していただける機会は珍しいので、紹介していただけただけでも感謝したい。

 各館の比較の中ではいくつか議論があったが、特に貸出についての見解が興味を引いた。公共図書館での「貸出」という固定観念を破り、購入という形で資料を提供するアカデミーヒルズ六本木ライブラリー。また従来の貸出の問題点として「地域社会にどう影響してきたかを考えてこなかったこと。そこを図書館側から語ってこなかった。」との指摘。
 公共図書館で「資料を貸し出す」という行為は利用者に何をもたらすのか。手段が目的になってはいないか。そんなことを考えさせられた。弊社の扱う資料はほとんどが研究支援のため、そして「巨人の肩の上に立つ」ためのもの。結果は自明のようにも思える。図書館で資料や各種の情報を収集し、提供することによるアウトプットは何か。どうなるのか。それを明確にイメージできることが次世代の図書館を構築するための課題なのかもしれない。

 午後は自社ブースで各種サービスの紹介などなど。午前のフォーラムのおかげで、「RSSについて聞きたい」方が多い。ありがたいこと。とはいえ、つい長々と説明をしてしまって時間が削られ困った方もいらっしゃった。ご迷惑をおかけしました。

 なぜか「男前豆腐店」のグッズ販売もあったのでタオルを購入。ライブラリアンに気合を入れてくれるのか。

 明日は17時からプレゼンテーション。いよいよ来た山場。走る緊張。無事にオフ会に出られるのか。未来は誰のためにある。


「狂犬病発症」の報に接し

 帰宅後、いつものように自宅でRSSリーダをチェック。

 するとasahi.comで「京都市の男性が狂犬病発症 国外での感染は70年以来 [暮らし] (2006-11-16 21:24)」との報が。Googleニュースで検索したところ、いくつかの新聞等でも報じられている。

 …出番だ。弊社の国内農学文献を収載したデータベースを検索。キーワード「狂犬病」で21件ヒット。タイトルでは64件のヒット。なぜこんなに違うのか。どうも、上位概念である「ウイルス」でインデックスを付与されているレコードもあるようだ。

 とりあえず多い方を採用することとする。早速、ダウンロードした検索結果動物衛生研究所動物検疫所のWebサイトにある関連情報を弊社webサイト図書館総合展案内Blogに掲載。弊社の来館者数は多くはないので、「関連する資料を別置して展示」では効果は薄い。まずはデータベースの検索結果とそこからの論文へのリンク(一部論文はPDFでDBに搭載)を公表することで何かの役に立てるかもしれない。1918~1935年の獣疫調査所研究報告など古い論文(PDFあります)も散見される。本当は検索結果から大学等のリポジトリへOpenURL等を使いリンクリゾルバ経由で飛ばせればよいのだが、少々古めのシステムのためそれも望めず。いずれ改善しよう。

 果たして、こうした情報をいち早く公開することに効果があるのか。こういう場合こそ、Blog+RSSでの情報公開はタイムリーに情報を届けるツールとしての効果が出そうだ。今回はその当りも見極めたいと思う。


 当然ながら、今回は独断で動いたため上司の許可は取っていない。明日の朝一で説明しなければ。


その名はNext-L

 夕方から都内某所で会合。議題は「オープンソースによる図書館システムの開発と普及」とでもなろうか。

 カレントアウェアネス No.281(2004年9月20日,一橋大学総合情報処理センター 兼宗進) CA1529 「図書館システムとオープンソースの利用」でも指摘されている通り、

商用の図書館システムは,機能が多く複雑になり,全体を理解することが難しくなったという指摘がある。導入費用は高価であり,導入前に複数のシステムを使いながら比較することは難しい。改良の速度は遅く,ユーザーに機能の決定権はない。運用後のサポートは,システムの提供ベンダーに依頼することになり選択肢がない。

図書館に関わるオープンソース・システムは確実な広がりを見せている。今後はオープン性を活かしてこのようなシステムと連携することにより,発展が停滞している商用システムに代り,一気に利用が加速する可能性がある。

 のように、商用システムに依存している日本の現状を憂う声が以前より挙がっている。

 また、海外のオープンソースによる図書館システムの試行と日本語化を行っていた原田からは、カレントアウェアネス No.289(2006年9月20日,慶應義塾大学 原田隆史) CA1605 「オープンソースと図書館システム」において、オープンソースによるシステムの利用の意義として、

 このように考えた場合,OSSの本質は,価格やセキュリティ面ではなく,システム決定時における選択肢の広がり,システム運用に関する自由度の高まり,さらに将来的な機能向上の方向性をOSSの利用者(たとえばOSSを導入した図書館などがこれにあたる)主導で決定することができるという点にあると考えることができるだろう。

 のように、

  • 設定やメンテナンスの選択肢が広がる
  • 利用者の要望に応じた機能の追加が容易など、ソフトウェア運用に関する自由度が上がる
  • 特定のメーカーによって開発されたシステムを導入した場合と比較し、自社のシステム計画とは無関係なバージョンアップ,ライセンスや保守料の値上げ,サポートが打ち切られてしまうなどのリスクを回避できる

 などの利点を挙げている。

 しかし、前述の兼宗の指摘から2年が経過した現在でも、「公共図書館におけるビジネス支援や大学図書館における機関リポジトリ管理などの新しい役割を効果的に対応するための仕組みが新たに必要とされている」(前掲)にもかかわらず、国内の図書館システムの現状に目立った動きは無いといえる。

 このような状況下において、ついに複数の有志によるコミュニティを中心として、国内でオープンソースによる図書館システムの設計、開発を行い、全国に普及を図るプロジェクトが動き出した。その名は Next-L。正式な名称は長いのでとりあえず略しておく。

 今日の会合(幹部会とでも言うべきだろうか)においては、プロジェクトの趣旨説明と解決すべき課題の確認が行われた。まずは小規模な公共図書館や学校図書館などの業務等に適した規模での設計と開発が念頭に置かれているが、OPAC2.0のような新たな概念に基くサービスについても順次組み込んでゆく、という方向性が確認された。
 プロジェクトの体制、支援団体の状況、また現時点での参画を想定しているメンバーを集めてのキックオフミーティングに向けて準備すべき事項についても検討が行われた。

 来週に控えた図書館総合展においても、このプロジェクトについてなんらかの動きがあるだろう。Webサイトも近々に公開されるので、趣旨に賛同する各位におかれては動向を注視されたい。


XooNIps library module v.1.0成果報告会

 XooNIps library module v.1.0がリリース、ということで成果報告会に出席。

 バージョンアップされた点は、

  • MODS対応スキーマを前提としてCiNiiへの対応を考慮
    JuNii、JuNii2にほぼ対応
  • EXCELファイルからのデータ一括登録に対応
  • 幅広いコンテンツに対応できるよう、アイテムタイプを変更、新設
    同時に入力項目も見直し
    アイテムタイプは以下の通り
    • Article (旧 Bulltin)
    • Book (旧 Rarebook)
    • Photo
    • Website(新設)
    • Video(新設)
    • Sound(新設)
    • Data(新設)
  • MODS形式での出力をサポート

 など。スキーマをMODSにしたのは、通常の目録入力作業の一環としてメタデータの入力も考えており、元々はMARC21で入力しているため作業者の理解が容易、またタグも英語で分かりやすい、DCより表現力がある、目録との互換性の確保、などが理由。実運用を考えたら、確かに慣れているデータの入力手法のほうがよいのかも。
 ただし、最初からMODSでデータ入力をするのではなく、アイテムタイプごとに必要な情報を入力し、出力時にMODSを使用するとのこと。

 帰ったら早速XooNIps XSAS版をインストールして試してわくわく…と思ってよく話を聞いたら、まだJuNii2対応の部分がfixされていないので、テストは待って欲しいとのこと。なので試験はちょっとお預け。

 そのほか、独自の試みとして、検索エンジンをMySQLではなくGoogle MiniやGoogle Custom Search(Google Co-op)を利用した事例が紹介された。XooNIpsでもPDFファイルの全文検索はサポートしているが、機関リポジトリのように大量のファイルとページ数が相手となると検索速度が低下するため、Google Mini等を試用しているという。管理画面も見せていただいたが、検索インターフェースはかなりカスタマイズ可能。検索結果は基本的にはXMLで出力され、これをXSLTで変換して表示しているため、Googleライクにもそうでない結果表示にもできる。カスタマイズの自由度はGoogle Miniの方が高いとのこと。

 また、今後の展開としては、SFX/Metalibとの連携の計画が上げられた。
 まずは、SFXのナレッジベースに慶應のリポジトリKoaraの掲載誌名等を一括でアップロード、Metalibの検索結果からこのSFX経由でKoaraの誘導させる(フェーズ1)、またMetalibはOAI-PMHを話せるので、Koaraからメタデータをハーベストした上で、Koara側でOpenURL対応を行い、SFX/MetalibのFull Textターゲットとして誘導させる(フェーズ2)、などが計画されている。

 弊社でもSFXを導入しているので、このあたりも興味深い。
 この界隈の動向は、「機関リポジトリをどうやって構築するか」から「どこからアクセスしてもらうか」「どうやって収載論文の可視性を上げるか」にシフトしているようだ。弊社としては、「周回遅れ」にならないよう、先端の動向を収集しつつ最適解にトライ、というところか。

 説明会の後は例によって懇親会。夏に顔見知りになった方々を含め情報交換。
 うちでも早くリポジトリのプロトタイプぐらいは作りたいのですが。


 帰宅の途上、時間があったのでヨドバシAKIBA店へ。いつもより店外に人が多い。そういえば入り口付近に「何かを待っている」風情の人が着々と増えていた。ぼーっと電光掲示板を見る人、携帯をいじる人、何かしらPDAで入力している人。一様に「俺は待ってるぜ」なオーラが見える。

 そうだ、11日はPS3の発売日だ! 某ニュースサイトの記事は、ネタではなく本当だったんだ! 外は冷えるし炊き出しとかあったらどうしようといらぬ心配をしてしまったが、とりあえずは地下駐車場に収容されて並んでいる模様。そうか、それなら冷えないね。並んでいたら買えたかも。(←無理)

 その後、ニュースで「購入希望者数千人、アキバに集結」の報道も。数千、というのはサバ読みとの情報もあったが、新宿では、午後11時に「完売」の報も。恐るべしPS3。


RSSをレクする

 レファレンスカウンター。午前10時。いつもと変わらない朝の空気。遠方より会議のため出張してきた別の研究所の課長に挨拶をしているときに、任務はやってきた。

 総務課長がカウンターに現れこう告げた。

「時間ある? 所長がRSSについて詳しく知りたいらしいから、レクお願いね。よろしく。」

 時間があるもなにも、特段の用務は今ないので所長対応なら優先順位は最上位になる。ここで言うレクはレクリエーションのレクではない。レクチャーのレクだ。(ちなみに、記者発表/説明は記者レクとも言う。)
 資料準備と課長のクリアを取るため1時間の猶予をもらう。取り急ぎ、最新版のスライド何枚かを組み合わせ、RSSの説明と当所での取り組みを中心としたセットに再構成。いつでも出せるように用意してあったアクセスログを掘り起こす。手持ちで関連の雑誌記事も準備。係個別に取り組んでいる細かい事業について、幹部に直接説明できる機会などそうはない。機会はできるだけ有効に使いたい。資料を吟味の上、課長のクリアは取れた。

 1055時出撃。隣の棟の所長室に入り、30分程度でRSS利用のメリット、当所での数々の取り組み、今後のサービス展開などについて説明。「一行で表すとこうです。」というようなフレーズやイメージしやすいポンチ絵(絵入りの説明用ペーパーはこう言い習わされている)を用意できたのが功を奏す。理解していただけたようでほっとする。
 レクした内容は、来週の本社の会議で当所の図書館総合展出展とプレゼンテーションを紹介する際の参考とするという。うまく当所での事業の広がりを宣伝してくれれば社内でのアピールにも繋がり双方にとって都合がいい。Win-Winだ。

 去り際に所長から一言。「あ、君のプレゼンテーション、聞きに行くからよろしく。申し込みとかいらないよね?」
 ええ、所内の方は申し込み不要ですが・・・ボスが聴講されると思うと・・・なんか胃が痛いような気もしてきた・・・help me。

 とはいえ、周囲の図書館と比較して当所はどのようなイメージで見られているのか、またサービスの評価はどうなのか。そもそも図書館の役目は何か。幹部にとって肌でわかりやすく感じられるのは図書館総合展ぐらいだろう。ご来訪の折には、その辺も含めてしっかりご案内することにしよう。


近づく発表、そしてオフ

 図書館総合展まで2週間を切りました。そんなさなかに今日は某協議会で秋季セミナー(名古屋)の打ち合わせ。講師のはずなのに会場の設営やセミナーの運営もするというヘビーさ。

 そして毎日のように図書館総合展でのプレゼンテーションのお申し込みを頂きます。受領の通知など返信は自分で書くことが多いです。さぞや人数の少ない職場と思っていただければ幸いです。(実際はあのアドレスを受信しているスタッフが少ない、というだけです。)まだお席に余裕はありますので、ご興味ありましたら図書館総合展公式サイトよりぜひお申し込みください。その分講師のプレッシャーも増えてまいります。

 新ネタはご用意できないかもしれませんが、Googleツールバー4の弊社のWebOPAC検索用ボタンに、新着図書RSSフィード(在筑波機関のみ)を表示させる機能を追加したり、導入用デモムービー(http://library.affrc.go.jp/opac/gtoolbar4demo.htm)を作ったりしていますので、何かしら新しくお見せできるものがあるかもしれません。(デモムービー作成には Wink2.0 for Windows(http://www.debugmode.com/wink/)を使用しています。)


 下記オフ会の参加受付については、11月14日を持って締め切りました。

 エントリされている方もそうでない方も、図書館総合展でお会いしましょう。

 何かせっかくの機会なので、11月21日(火)には主にmixi司書コミュニティのうち、「OPACを作ろう」トピック関係者によるオフ会も企画しています。

 話題としては、

  • OPACなど図書館システムとその行く末に興味のある方すごく歓迎
  • もちろん「みるだけ」の人も大歓迎
  • 宴会中にPCでモノを見せ合うなどアリ
  • 幹事お手伝いも絶賛募集中
  • 「図書館退屈男にもそもそと苦言を呈したい」 方もwelcome

 などです。お申し込みの締め切りは11月14日(火)としておりますのでご注意ください。

 mixiお使いの方は当該トピック、http://mixi.jp/view_event.pl?id=11936268&comm_id=32328 からエントリーをお願いします。
 また、このエントリのコメント欄に参加希望の旨を記入していただいても結構です。お名前(ハンドル可)とメールアドレスをお知らせください。現在、コメントは管理者の許可がないと公開できないよう設定しています。当方でお名前等を確認し返信した後は、当該コメントを削除します。

 時間は18時以降、場所はパシフィコ横浜周辺あるいは中華街を予定しています。
よろしければ皆様お誘い合わせの上ご参加ください。


Referencerのブルース

 そんなこんなでRSSだのそれPlaだの言いつつも、日々レファレンスはやってくる。

 今日のレファレンスは、文献複写依頼のデータの精査。文献複写依頼の受理と複写、発送作業は別のスタッフが行っているが、当該資料の欠号、記載事項の不備など調査の必要があるとレファレンス係の出番となる。

 受け取ったデータは、

「農業気象」Vol.48 No.(不明) (1993)

 収載の論文。複写担当からは、当該のページはVol.48(1-4)には存在しないと言う。
発行元の日本農業気象学会のWebサイトにある「『農業気象』総目次」で確認するも当該論文なし。この雑誌は年4回刊行。従ってNo.は1~4となるはず。バックナンバーの一覧からも、Vol.48は4号まで。どうする。取り急ぎ依頼館に、現物が確認できないため送付が遅れる旨と通知。わずかばかりの時間を稼ぐ。しかしそれほど調査に時間は割けない。

 まずはデータベース検索、弊社のDB群、NDL雑誌記事索引、J-Dream、CAB Abstract、BIOSIS Previewsなど主要なデータベースを使い、著者、論文を検索してもヒットなし。Google、Google Scholarからも芳しい返事は無い。
 こうなると学会のProceeding類なども疑ってみるが、該当は無い。

 単なる記載ミスか。しかし、各種データベースからは号の記載は無いものの、引用文献として "J. of Agri. Meteorol. v.48 1993" が示されている。複数の文献で確認されたので、おそらく記載事項に不備は無いだろう。

 ここで昼休み。今週は所内レクリエーションとやらで課対抗「ペタンク」に興じる。当課は一敗地にまみれる。

 午後。他の仕事を捌きつつ調査を継続。すると、引用文献として件の論文が "J. of agri. meteorol. v.48(5) 1993" と標記されていることを確認。第48巻5号? 年4回刊のはずが? 謎は深まる。当然、当館では48(5)は所蔵していない。Webcat等でも、他館も同様の状況に見える。
 念のためNDL-OPACで所蔵巻号を確認。刊行頻度は「Q: 季刊」とあるが、[所蔵詳細]を確認すると、60(5)、60(6)という冊子があるようだ。と言うことは、年4回以上刊行されている年があるということだ。なんてこった。

 混乱。そして最後の手段。学会事務局に電話で問い合わせた。回答は、

通常は年4回刊だが、スペシャルな場合に5号以降が刊行されることがある。
これは会員向け配布のみのため、寄贈先(当館も含まれる)には通常は送付していない。

 とのことであった。幸い、48(5)に依頼あった論文が掲載されていることも確認していただき、入手の目処は立った。依頼館にもこの旨を連絡。

 課内で話題にすると、ベテランの先輩司書から「あ~、昔の学会誌には時々そういうことがあったよね~。最近は見ないけど。」との金言を頂く。これも修行か。


レファレンスライブラリアンこそ我が本務(本当)

 俺はReferencerだ。真面目なReferencerだ。

 「レファレンス係長」を拝命している以上、職種を聞かれればレファレンスライブラリアンと答えるだろう。システム周りのことは…まあ、少人数の職場なのでそれなりに関わりがある、ということにしておいて欲しい図書館退屈男である。

 レファレンスには日々の修練が必要だ。だから国立国会図書館レファレンス協同データベース事業研修会(東京本館開催)に参加することになった。
 まず事前課題。レファレンス事例か調べ方マニュアルを作成して期限までにデータベースに登録、追って講師からコメントすると告げられた。どの事例を入力すればいいのか。悩みつつ事例を選び、入力。「回答プロセス」も忘れかけていたが、メモを頼りに記憶をたどり、入力。締め切りの数日後、講師からの「こういうレファレンスツールがある」とのコメントを頂いた。ああ、ツールさえ揃っていれば、と蔵書の不備を痛感するも、あっても使いこなせなければ意味が無いと悟る。

 そして研修会当日。まずは事業の概要から。現在、レファレンス事例については2万件以上が蓄積され、そのうち1万件が一般公開されているという。また、都道府県立クラスの図書館では、過去に蓄積された事例データの遡及入力を進めており、これがコアになっていると聞く。とはいえ、通常の事例入力は参加館1館あたり月1件以下とのことで、できるだけ入力をお願いしたいとのこと。
 
 主題別の登録数についても説明があり、郷土関係、歴史上の人物に関するレファレンスが多いためか歴史、社会科学の事例が多くなっていると推定されている。弊社の主題範囲である農業を含む産業分野の入力は少ない。データベースにはNDCベースの主題ごとのメニューが用意されているが、 農業(65) - 園芸(49) - 蚕糸業(2) - 畜産業(19) - 林業(18) - 水産業(12) (カッコ内はエントリ投稿時の一般公開件数)というのは少なくはないのか。衰退しているとはいえ蚕糸業に至ってはわずか2件だ。

 データベースそのものについては、図書館員にはレファレンスの情報源のほかサービスのPRの素材として、一般利用者には調べ物の情報源として、また研究者には図書館情報学その他の研究素材としての活用が考えられる。そのためにこれらの様々な利用者を考慮し、的確なキーワードの付与や克明な回答プロセスの入力など質の高いデータ入力の必要性について講師から説明があった。参加館が増えるにつれ、質の維持は困難になってゆくと思われるが、運営側には敷居を低くし「とりあえず事業に参加し、事例を入力してほしい」と言う意思が感じられた。

 講師各位(午前の講師の方とは以前関西館にてお付き合いいただいた。実は以前からの知り合いだったりするが、世間は狭い。)と昼食の後、午後は具体的にデータの品質を維持するための手法について、事前課題をベースに解説が進められた。特に印象に残ったのは、「『さすが』と手を打つ事例データ」とは何かと言う点。他者が「読みやすい」データであることはもちろん、

  • 丁寧な書誌データ
  • URLと確認年月日
  • 難読語に対する「よみがな」付与
  • 背景、状況が確認ができる記述

などがそのポイントとして挙げられた。この考え方は他のデータベースにも通じるところがある。

 後半はグループ別討議。主に専門図書館の方と同席になり、レファレンスサービスの改善について話し合う。

  • 実質1人で図書室を運営しているが、図書館界の情勢変化を把握し、自社の出版事業に反映させるために参加している。負担にはなるが、必要なことだと考えている。
  • 1人で運営していたときは、自分だけが過去の事例を把握していればいいので記録はおろそかになる。これが、スタッフの増員がありノウハウを共有、蓄積するためにこの事業に参加した。
  • 専門図書館の事例はNDLから見てもとても参考になる。「餅は餅屋」と言う言葉がぴったり。一般から見れば専門性は高く難しいと捕らえられるかもしれないが、図書館員としては有用なデータと言える。

など、それぞれの立場でのプロの司書のスピリッツを感じる発言も聞かれた。弊社はどうだろう。正直、半ば「様子見」で参加した部分もあるが、6門「産業」のデータの少なさを見ると、この分野の一翼を担う専門図書館として、事業への積極的な関与を考えたほうがよいだろう。

 その他のグループからは、一旦入力された事例データの経年による陳腐化の懸念とメンテナンスの必要性が挙げられた。時々刻々と変化するソースもある。それがインターネット上の情報であればなおさらだ。こまめに確認をするしかないのだろうが、入力件数が増えれば増えるほど困難になるのかもしれない。メンテナンスをし続けるデータベース。運営は困難だろうが、それが必要と言うのならやるしかない。できれば精神論ではなく効率的な方法を模索したいと考える。

 終了後は茶話会(アルコール抜きね)。こういう交流の機会もまた円滑な事業のバックボーンになるので無視できない。参加した方々と弊社のレファレンス事例と研究成果について語っていると「よく覚えていますね」とお褒めに預かる。少々おしゃべりが過ぎたようだが、レファレンス事例についてはともかく、研究成果と活用事例はいわば自社の大事な商品。これをあらゆる場で広報するのは、全社に課せられた重要なミッションと考えている。
 
 そして今、事後課題の「自館のレファレンスサービスの効率化についての方策の検討」などについて考察中。ターゲットはどこか、レファレンスとして受ける可能性のある問いは何か、そんなところから考えてみることにしよう。